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2013年度J1におけるお金と勝ち点の相関性

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さて、みなさん、こんにちは。相変わらず、更新に日が空いてしまいましたが、私は元気です。W杯の組み合わせが決まったり、そっちについても何か書いとこうとか思ってたんですが、それは又にして、本日は毎年恒例の「J1におけるお金と勝ち点の相関性」についてまとめたいと思います。



2012年Jリーグにおけるお金と勝ち点の相関性


去年の奴はこっちでまとめてあります。興味のある人はこっちをどうぞ。


さて本題にうつりましょう。


2013年度J1におけるお金と勝ち点の相関性について


最近は、コレ系の奴をつくるのが偉い楽な時代になりました。いい時代になったもんです。さて、まずは表にしたんで、今年の奴をご覧くださいな。




順位チーム名総年俸(単位万円)勝点年俸から予測される勝ち点予測との差
1サンフレッチェ広島527606345.82817.172
2横浜F・マリノス910506257.3154.685
3川崎フロンターレ683606050.5089.492
4セレッソ大阪464205943.92615.074
5鹿島アントラーズ647805949.4349.566
6浦和レッズ1068005862.04-4.04
7アルビレックス新潟401005542.0312.97
8FC東京723605451.7082.292
9清水エスパルス408205042.2467.754
10柏レイソル664504849.935-1.935
11名古屋グランパス892004756.76-9.76
12サガン鳥栖233004636.999.01
13ベガルタ仙台487004544.610.39
14大宮アルディージャ630304548.909-3.909
15ヴァンフォーレ甲府264403737.932-0.932
16湘南ベルマーレ219502536.585-11.585
17ジュビロ磐田614802348.444-25.444
18大分トリニータ258201437.746-23.746


こうなりました。勝ち点と総年俸の相関性は0.518となっており、昨年度の0.326と比較すると、それなりの相関性が出ました。



じつは、計算する前、今年は盛大にジュビロ磐田がずっこけた上に、貧乏チームな広島とセレッソが上位に来てるので、相関性は低めかな、と思っていたのですが、思ったより数値は良かったです。ちなみに、ジュビロと広島を抜いて計算すると、相関性は0.63程度まであがります。


ついでに散布図も作ったので貼っときますが



f:id:pal-9999:20131210200749j:plain


こうなってます。ほとんど外れ値といっていいのが広島と磐田でして、広島は予測される勝ち点より+17の上積み、磐田は予測される勝ち点より-25の下積みとなっており、資金力は大して変わらないのにどうしてこうなった状態です。本来、順位的には大して変わらないところに落ち着いてもおかしくないんですが。


えっと、広島の監督のポイチさんなんですが、ここ二年連続で年俸から予測される勝ち点より+16以上というスーパーな成績を収めており、もし来年もこの成績を続けた場合、Jリーグ史上、最高のコスパを弾きだした監督の一人という評価をうけるべきだと思います。ちなみに、過去、最高クラスのコスパを弾き出した監督とチームは、オシムの千葉、三連覇時代のオリヴェイラの鹿島になります。これらのチームは3年連続で、年俸から予測される勝ち点よりも+16ほど勝ち点が多い状態を続けることが出来たチームです。来年、広島が勝ち点62以上を取ったら、オシム、オリヴェイラにポイチさんは並びます。二年連続でも十分凄いですが、三年連続となったら、これはもう最高の監督という他ありません。



今年のJ1に関して一言でまとめると、「年俸の安いストライカーが大爆発」という状態でして、はっきりいって、給料以上の働きをしている連中大杉です。お前ら、このご時世に働きすぎ。


一方で、給料泥棒状態なのが名古屋のケネディと磐田の前田さんでして、コストパフォーマンスが酷いことになってます。これも、ちょいと表にしときますね。


年俸得点数(PK抜き)1得点に必要な額
ウィルソン500011454.5454545455
大迫200018111.1111111111
興梠450013346.1538461538
ノヴァコビッチ70009777.7777777778
工藤15001978.9473684211
ルーカス60009666.6666666667
大久保700021333.3333333333
マルキーニョス1300014928.5714285714
川又9002045
前田850071214.2857142857
ケネディ1000071428.5714285714
柿谷20002195.2380952381
佐藤寿人550015366.6666666667
豊田350016218.75
南野360572
松田力大学在学中4測定不能
森島康仁9007128.5714285714


こうなります。ストライカー別で抜き出して、表にしました。順番は適当です。ちなみに、今年のJ1に関して言うと、1ゴールに必要な年俸は、平均して1148万円ほどになります。1148万円で1ゴールです。1ゴールで1148万円以上必要なストライカーは、ストライカーとは呼べません。コスパ悪すぎです。


で、前田とケネディのコスパが悪いって話をちょいと先にしましたが、これ、彼らの一得点に必要だった額をみればわかると思うんですが、一得点するのに1000万越えという数字でして、いくらなんでもコスパが悪すぎます。正直、給料ドロボーと呼ばれてもしょうがないかと。



一方で、コスパ最強なのが新潟の川又です。年俸900万で20ゴールを決めており、1ゴールあたり45万円という破格の数字です。ありえない。



まあ、湘南サポからすると、新潟と試合する度に、こいつに試合壊されるので、顔もみたくないFW筆頭候補なんですが、それにしたって、ゴール決めすぎ。


あのですね、サッカーの世界では、普通、「どっかの屋根裏部屋にスーパーストライカーが隠れてる」なんて事は絶対ないんですよ。サッカーの世界で、良いストライカーってのは美人コンテストに出たゴリラのレベルで目立つんです。


もし、J1で川又が20ゴール決められるってのが、去年の時点でわかってたら、凄まじい争奪戦になってます。だって年俸900万ですよ?その上、新潟は毎年のように浦和に引き抜き食らってるわけだし。


とにかく、川又のゴール数は、ちょっと異常なレベルでして、今年の新潟の後半戦の立役者です。今年のベストFWかどうかはおいておくとして、コスパ最強のFWだったのは川又でFAです。ぶっちゃけ、年俸3000万払っても、まだ全然安い。


900万で20ゴール決めてくれるFW雇えるなら、湘南だって残留できてるわいヴォケ!!!!それが出来ないから泣いたんだ。おかしい。絶対おかしい。何か狂ってる!!!




85 U-名無しさん@実況はサッカーch:2012/04/08(日) 16:54:34.49 ID:/PhM/SWB0 ケンゴヘ ニイガタキトク スグカエレ



こんなネタで出てた時代が懐かしい。孝行息子ってレベルじゃねぇぞ川又。



まあ、川又のアレは異常すぎるので、他のFWの話もしときましょうか。川又の次にコスパが良かったのが、セレッソの柿谷と柏の工藤です。彼らも凄い。1ゴールあたり100万を切る数字でして、しかもユース出身ときてる。素晴らしい孝行息子達です。柿谷はちょっと前まで放蕩息子でしたけど。あと、大迫も1ゴール111万円計算なんで、これも凄い。


もう一人、1ゴールあたり100万切るのがセレッソのホープ、南野君でして、年俸360万で5ゴール決めてます。これも凄い。安い。こないだ5年契約を結んでましたが、まあ、当然かと。1000万払っても、5ゴール決めてくれれば全然お釣りがきますわ。来年は二桁が目標でしょうが、二桁取ってくれたら、セレッソのフロントは笑いが止まらないでしょうね。


それともう一つ。これ、近年顕著な傾向なんですが、外国人FWのコスパが悪いって所です。ウィルソン、マルキ、ルーカス、ダヴィ、ノヴァコビッチ、みんなそうなんですが、コスパで見ると、正直、あまり・・・って数字なんですね。それぞれ、素晴らしいFWには違いないんですけど、年俸がそもそも高いので、コスパを考えると、正直微妙なんです、外国人FW。


ちょっと前まで、反則外国人ってのは勝利を約束してくれる存在でしたが、今のJリーグを見る限り、反則外人より、点が取れる日本人FWのほうが役に立つってのが正直な所です。何でかしらないけど、海外の連中がお買い上げになるのは、SBとMFに偏っており、日本人FWって、海外があんまりお買い上げにならないんですよね。だから、良いFWが国内に残る傾向があって。この傾向が続くなら、FWは日本人つかったほうが良いじゃないの?とか思う訳です。もっとも、点取れる日本人FWなんて、そう簡単に見つかるモンでもないんですけどね。


最後にまとめになりますが


えーっと、最後のまとめになります。僕は湘南サポやってるわけですが、勝ち点25って結果は、正直、しょうがないと割切りました。低年俸チームが、年俸通りの勝ち点数を稼げるってことは、まずなくて、大概、こんな結果になるモンだからです。


今年は甲府さんがJ1残留をしましたが、JFKさんレベルの監督でも、J1では勝ち点37っていうギリギリ残留できるかどうかって数字ですんで、年俸2億程度のチームがJ1で勝てないってのはしょうがないと思ってます。



勿論、サガン鳥栖という例外もいるわけですが、それは日本代表クラスのFW豊田に加えて、今期途中から菊池と林という日本代表級の選手を何故か補強できたというのが原因ですし。いやね、これね、決まったとき、「なんでなんで?」って気持ちだったんですが、菊池は過去に起こした事件の原因でA代表に選ばれないだけで、実力だけなら今ちゃんとかマヤ、イノーハと遜色ないって選手だし、林はなんで清水出したし・・・ってGKだし。この二人が加わってから、上位を片っ端から食い荒らすという極悪チームになってるし。



J1のおかしな傾向として、日本人FWは15点くらい取っても、年俸が3000~5000万程度で済むというのがありまして、これ外国人だったら1億以上払わないと取れないレベルです。コスパで見ると、現状、日本人FW使った方がずっと良いんです。


そんな訳ですので、これからしばらくは、日本人FWがJ1で幅を利かせる時代になると思ってます。そういうチームがしばらくは上位に来るんだろうな、と。



まとめますと、「J1で戦うなら最低でも総年俸で4億程度のチームを作らないと残留争い間違いなし」って所と、「日本人FWのコスパが劇的に良くなっている」の2点となります。



それでは皆さん、ご機嫌よう。


ミランは何で本田を欲しがったのか?~本田はミランでどんなプレーが求められるのかって話~

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さて皆さん、こんにちは。


ミランCEOが本田の加入を発表!!背番号10で1月12日デビューへ


ようやっと、本田のミラン移籍が決まったんで、本日はお蔵入りさせてたネタでお送りしたいと思います。ネタの内容は「サッカーにおけるレフティの効用」です。これは、以前、ちょっと書きかけて、そのまま放置してた奴なんですが、本田のミラン移籍が決定したんで、せっかくだし、それと絡めて、書いときたいと思います。


本題に入る前にレフティのトップ下で現在、世界一なエジルのプレーの紹介


えっと、まず本田の話になるまでに、エジルのプレー動画貼っときます。



メスト・エジル 全74アシスト集 2010 2013 - YouTube



こいつですね。レアル時代のエジルの全アシスト集です。まず、こいつを見てください。これを見てくれないと、話が出来ません。見るだけでも面白いので、とにかく見てください。見ない人は、この先の文章読んでも意味がありません。



さて、見てくれましたか?見ましたよね?見たらオッケーです。


見てくれたのを前提で話を進めます。まず、エジルって選手なんですが、典型的なレフティのトップ下のプレーをします。どこが典型的なレフティかっていうと、まず、中央からやや右サイドの高い位置でボールを受けたがるって所です。これはロッベンやメッシも同じです。


なんで、その位置でボールを受けたがるかというと、中央からやや右サイド寄りの位置でボールをもった時のレフティは、左足でボールを持ちます。この時、レフティは相手DFから遠い方の足でボールを持てるってのがポイント。


そのため、この位置ではレフティはボールを持った時、DFにボールを取られにくいんですね。ちょっと図でやりますが、

f:id:pal-9999:20131214030339j:plain

こうなります。DFはボールとゴールの間を結ぶ線上に立つってのがサッカーの基本なんですけど、そのセオリー通りに守る限り、レフティのこの位置では、右半身でボールをプロテクトしつつ、左足でボールをキープできます。世界で一番有名なレフティとしては、メッシ、ロッベン、エジルになりますが、彼らの十八番がこの形で中にカットインしていく形です。



エジルの得意のプレーは中央からやや右サイド寄りの位置でボールを受けて、そこから、ちょっと中にドリブル入れて、ドリブル突破、スルーパス、コンビネーションによる突破、ファーへのクロスの中からベストのソリューションを選ぶって形です。この形を作った時のエジルのプレーの精度はちょっと異常でして、どのプレーも一級品です。まあ、芸術的なレベルですね。


この動画は、レアル時代の奴ですけど、アーセナルに移籍してからも、エジルの役割はほとんど変わってません。基本右サイドでボールを受けて、そこからちょっと中にドリブル入れて、ドリブル突破、スルーパス、コンビネーションによる突破、ファーへのクロスってのが彼の仕事です。


動画の奴だと、中央、もしくは右サイドでボールを受けたエジルからクリロナへのパス、あるいはクロスが決まってゴールってのが多いですが、レフティのトップ下と左WGってのは、もの凄く相性がいいです。レアルではクリロナが思いっきりその恩恵を受けてましたし、アーセナルでは色んなプレーヤーがエジルの恩恵を受けてます。アーセナルの試合見てれば、エジルが右サイドでボールを受けて、そこから決定的な仕事をするってシーンをしょっちゅう見かけると思います。



エジルのプレーってのは、レフティのトップ下の教科書みたいなモンでして、レフティのプレーヤーであれば、彼のプレーは凄く参考になると思います。


エジルの得意なプレーを、ちと図にしてまとめときますが、



f:id:pal-9999:20131214031152j:plain



こうなります。これらは、基本的にレフティのトップ下にデフォで求められるプレーでして、どこのチームに行こうが、基本的にレフティのトップ下に求められるのは、こういうプレーになります。ついでにメッシとロッベンのプレー集も貼っとくので、見といてください。彼らはレフティのプレーヤーに求められるプレーの生きる教科書です。



Arjen Robben Super Skills 2009 2012 New HD - YouTube
Lionel Messi Super Goals 2012-2013 HD (remake ...



ただし。



同じレフティでも全く違うプレーが得意な選手がいます。それがガレス・ベイル




ギャレス・ベイル 究極ゴール、スキル集 - YouTube



彼はメッシ、ロッベン、エジルとは違って、左サイドを主戦場にするレフティです。プレー集みればわかると思いますが、彼の得意技は、スペースにポーンとボールを蹴り出して爆発的な加速力でDFを置き去りにするプレーが十八番です。インテル戦でマイコンをちんちんにしたプレーを覚えている人は多いと思います。彼は縦突破系のレフティのWGでして、カットイン系のエジル、メッシ、ロッベンとは、プレースタイルが全然違うって所を覚えておいてください。プレー集みれば、プレーエリアとプレースタイルが全然違うって所はすぐわかると思います。

ミランで本田は何を求められるのか


さて、こっからが本題。本田のミラン移籍が決定したわけですが、本田がミランでやらないと行けない仕事の話になります。現在のミランのフォメになるんですけど、



f:id:pal-9999:20131213032931j:plain

ミランのフォーメーション



こうなってます。433、もしくは4321みたいな形です。僕のお気に入りの若手のエルシャーラウィーは怪我してて、フォメに入ってませんが、本田が加入する頃には戻ってくるでしょうから、そうしたら、フォメは4231になると思います。エルシャラ、カカ、バロテッリ、本田を同時に使うとすると、4231以外に方法がないので。



さて、現在のミランなんですが、右WGはヴァルテル・ビルサっていうレフティの選手がつとめています。夏にミランに移籍してきた選手でして、何で、この選手がミランに来る事になったのかってのは、彼がレフティだってのと明らかに関係があります。



ここで、エジルのプレー集を思い出してください。エジルが中央から右サイド寄りの位置でボールを受けて、クリロナにアシストしてるプレーが沢山ありますよね?でもって、現在のミランにはカカ、エルシャーラウィー、それからバロテッリっていう右利きの選手がいるわけです。エルシャラは典型的な左WG、バロテッリはファーでのヘディングが結構得意です。カカはコンビネーションが上手。



レフティのビルサ、冬にレフティの本田って選手をミランが取ったのは、ココがポイントなんです。



簡単に言えば、ミランがレフティの選手にやって欲しいのは、中央からやや右サイドよりの位置でボールを受けて、そこから軽く中にカットインし、


1,トップ下カカとコンビネーションして中央突破、
2、左サイドから斜めに走り込むエルシャラにスルーパス
3,ファーのバロテッリへのクロス


って形です。ちなみに、ボールが左サイドにあって、エルシャラ、もしくはカカがボールを持っている場合、右サイドから斜めにゴール前に入っていって、


1、エルシャラ、もしくはカカからのスルーパスを受けてシュート、あるいはクロスを折り返す
2、エルシャラ、もしくはカカのクロスをファーでヘディング


っていう日本代表の岡崎みたいなプレーが求められます。



これらが、本田がミランで求められるであろう仕事でして、トップ下で使われても、右WGで使われても、基本的に求められる仕事は、そう変わりません。右WGで使われても、イメージとしては日本代表の香川みたいな形で使われるので、右WGで使われてもそんな心配はしないでもオッケーです。ベイルみたいなプレーは求められるとは思いません。そもそも、現在、右WGやってるビルサはそーゆープレーはしてないので。



これも図でやっときましょうか。4231でやるとして、本田がミランで求められるのは、


f:id:pal-9999:20131214033234j:plainf:id:pal-9999:20131214033245j:plainf:id:pal-9999:20131214033251j:plainf:id:pal-9999:20131214033255j:plain


こういったプレーになります。ボールが左サイドにある時は、本田がエルシャラの動きをすればオッケーです。図にしてませんが、本田が中にはいる動きをしてSBを中に絞らせ、空いたスペースにSBを走らせてパスを出すってのも重要です。




さて問題は本田はこういったプレーをセリアAで出来るのかって所なんですが

えーっと、こっから問題なんですが。



間違いなくミランが本田に求めているのはエジルみたいなプレーだって事です。じゃなきゃ、夏と冬にレフティの10番タイプを連続で取ったりしません。



右サイドのレフティから、左サイドのエルシャラ、カカ、バロテッリへと繋いでフィニッシュ。狙いとしてはそんなトコでしょう。ミランはボランチとCBが全員右利きなんで、そこから右サイドの本田に繋ぎ、本田がそこでタメを作って中に軽くカットインして、ファーへクロス、オーバーラップしたSBへパス、カカとコンビネーション、エルシャラへのスルーパス、ってプレーが求められている訳です。



タイムリーな事に本田のプレー集があがってたので貼っときます。



本田圭佑 KEISUKE HONDA 2005-2013 WELCOME TO A ...


エジルのプレー集と比較しながら見てくださいな。右サイドでは、本田とエジルが似たようなプレーしてるのがわかると思います。彼らは両方ともレフティなので、似たようなプレーになるのは当然なんですけども。



で、なんですけどね。



実は、コレ、日本代表だと上手くいってないんですよ。CSKAだと、そこそこあるんですけど、なんでか日本代表だと少ない。僕が不安なのはそこなんですね。もっとも、これは本田だけの責任じゃないんですけど。


ちと、日本代表のアシストランキング貼っときますけど

日本代表アシストランキング

1 長友 佑都 10
2 遠藤 保仁 9
3 香川 真司 6
3 中村 憲剛 6
5 清武 弘嗣 5
6 本田 圭佑 4
6 駒野 友一 4
8 長谷部 誠 3
8 内田 篤人 3
10 岡崎 慎司 2


http://www.football-lab.jp/japan/ranking/

こうなってます。うちのブログで散々書いてきましたが、日本代表は左で作って右でフィニッシュってのが形として出来上がっており、その為、右サイドの長友、遠藤、香川のアシストだけで25って数字になってます。これみただけで、攻撃が左偏重だってのがわかります。右の岡崎、内田、長谷部、駒野は、全部で12アシストしかしてない。駒野は出場時間が短いのに4アシやってますが、これは彼が日本人最高のクロッサーである事を考えれば当然の数字でもあります。


これね、僕が日本代表で一番不満な所なんです。



なんでかというと、日本代表ってのは本田っていうレフティの良いトップ下を持ってるわけですよ。そして、CBとDFは全員右利き。だったら、普通は中央から右サイドにポジショニングした本田に縦、あるいは斜めにパス入れて、そこから本田が中に軽くカットインして攻撃の仕上げをするって形にするのが普通だからなんです。



ところが、日本代表はコレがあんまり機能してないんです。実際の所、遠藤が左に縦パスいれて、日本代表は香川が左サイド、やや中央よりでボール受けて、そこから斜めに軽くドリブルして、攻撃の仕上げをしてるのが現状でして香川は左WGじゃなくてトップ下の仕事やってるんです。



うちのブログで「本田と香川の関係性」については、1度も褒めた事ありませんけど、本来、レフティのトップ下と左WGの関係ってのは、レアルのエジルとクリロナの関係になるべきであって、日本代表の本田と香川の関係って、ちょっと歪なんです。


簡単に言えばどういう事かというと、あの二人は、本田が右サイドの高い位置でラストパスあるいはクロスを上げ、香川はフィニッシュするか、あるいは本田からサイドチェンジを受けてプレーするべきなんです。ところが、コレがほとんど機能してない。


原因は色々あります。香川の中に入りたがる病、岡崎が全く組み立てでは邪魔になってる所とかね。でも本田にも責任はあるんですわ。組み立ての時、妙に左に寄りすぎるし、右での組み立てで、なんでか知らないけど良いプレーをしてくれないんです。



ちと、こないだのベルギー戦の前半の話になりますが、あの試合、遠藤と香川がベンチスタートで、清武左、長谷部山口蛍のダブルボランチでスタートした訳ですよ。あの布陣だと、左からの組み立ては無理です。左で縦パス通せる選手がいない。


ただ、山口は右サイドでなら縦パス通せる選手な訳だし、CBとボランチが全員右利きなんだから、CBとボランチから右に展開し、右サイドの高い位置で本田が組み立てればいいだけの話だったんです。ところが、これが全くといっていいほど機能しない。いつもの日本代表というか。まあ、本田がデヨングのハードマーク受けてたってのはありますけど、それにしたって・・・という感じでした。



あの試合、本田は後半、同点ゴール決めてるんで、それはそれでいいんですけど、その同点ゴールにしたって、結局、遠藤が左サイドの底でボール持って、右にサイドチェンジした所からスタートしてるわけです。結局、左に遠藤がいないと・・・って感じのゴールでして、不満は残るわけですよ。あの形は結局、いつもの日本代表の形でして、右で作って左にはたくってのが、あんまし機能してない。それが出来てれば、前半、あそこまで清武が消える事もなかった。





で、何が言いたいのかというとですな


結局ねえ、僕が本田のコメントとか読んでて、いつも不思議に思う事なんですけど、しょっちゅうクリロナの名前を本田が出すんです。

 ―個人としては、今日のような試合を勝たせる選手になりたい?
「きょうは個人的にどうこうできるレベルではなかったのかもしれないけど、クリスティアーノ(・ロナウド)みたい(ひとりで状況を打開するよう)なことはできないにしても、可能性がある限り、個人能力を求めていかないといけない。オンリーワンにはなりたいと思っていますね」


「オンリーワンになりたい。急成長しますよ」…本田に聞く

先日も、こんなコメントがありましたけどね。


いやね、個の力を求めるのは結構な事なんですが、そこで何でクリロナの名前がいつも出てくるのかと。本田は自分で自分の事をトップ下といってるプレーヤーで、クリロナは右利きで、しかも左WGでしょ?と。名前だすなら、同じレフティのベイルのが適当なんですけど、ベイルは本田とは似ても似つかないスタイルの持ち主です。


クリロナのプレーなんて、本田のプレーとは似ても似つかないし、プレーエリアが全く違うし、真似してもしょうがないし、本田が左WGなんて目指しても意味ないし。



結局、何が不満って、本田に求められているプレーってのは、エジル、ロッベン、メッシのそれなんです。最初に貼った動画でエジルがクリロナにアシストするプレー。アレなんですよ。そっち方面を極めないといけない。本田がやらないといけないのはクリロナのプレーじゃなくて、クリロナにアシストするエジルのプレーだろうと。点にこだわるってーなら、ロッベンかメッシのプレーになりますが。一番いいのはメッシになる事なんですが、あれは人外ですからねえ。


ちょっと脇道にそれますが、メッシがいないときのバルサは右サイドの高い位置で攻撃の変化をつけるプレーヤーがいなくなるって欠点を抱えてます。まあ、質の高いレフティなんて、そうそういるもんじゃないので、しょうがないんですが。



ミランがレフティのトップ下、あるいは右WGに求めているのは、エルシャラとバロテッリにアシスト出来ること、そして右サイドから中央にカットインして、コンビネーションかミドルシュートでゴールを決めることなんです。



本田がレアルに移籍してエジルのポジションでプレーしたとして、クリロナのゴールが増えるか?とか考えたことがあるんですよ。エジルがやってる事が本田にも出来るのかな、と。


結局、それが出来るなら、本田はレアルで10番だって話にはなるんですが。



逆にですけど、エジルがミランに移籍してきたら?こっちは簡単にイメージできます。バロテッリとエルシャラのゴールは絶対増える。カカは・・・多分、押し出されちゃうでしょうけどもね。



アーセナル vs. マルセイユ



これはこないだのCL、アーセナルマルセイユの動画ですけど、アーセナルの2ゴールはエジルのプレーから生まれてます。どっちも右サイドでエジルが攻撃の仕上げを担ってます。本田が求められるプレーってのは、コレなんです。



本田はミランに行く訳ですが、エルシャラやカカ、バロテッリのゴール数が増えたら、それは間違いなく成功です。ただ、それが出来ないようだと、中田みたいにボランチで使われる事になると思います。どういう事かってーと、こいつは、以前も紹介しましたけど、


中田英寿のポジション適性とイタリアでの苦闘



こちらの記事の中にありますが、

レンツォ・ウリビエリ
「相手のディフェンスと中盤の間、やや開き気味の位置から内に入りながらフリーでボールを受ければ、ゴール正面に近い絶好のポジションで前を向くことができる。ここまでは戦術的な狙い通りだった。彼ほどのテクニックの持ち主ならば、そこで決定的なチャンスを作って当然の状況だ。それこそまさに私が彼に求めていたことだ。
しかし、中田にそれを求めるのは誤りだった。彼は本来トップ下のプレイヤーではなかったからだ。私はもっと早くそれに気つくべきだった」



 中田がトップ下ではないとは?



レンツォ・ウリビエリ
「中田のフィジカル面の資質は(トップ下より)センターハーフにより近い。つまり、非常に高い持久力を持ち、90分間休まず走り続けることができるが、爆発的な瞬発力には欠けている。
トップ下は、試合の中でどんな動きをするだろうか。ずーっと動かずにいて、突然ダッシュをする。またずーっと止まっていて突然スタート。この繰り返しだ。しかし中田は常に走り続け、動き回っている。これはセンターハーフのプレイスタイルだ。
中田は、たくさんのポールに触る。で、質の高いプレーを繰り出す。我もよく使う表現で言うと『量の中に質を見出す選手』だ。こういうタイプはトップ下にはあまり向かない。相手DFと距離が近すぎて、動き回るスペースがないからだ。彼が生きるのは、もっと自由に動ける中盤だ」


って所です。中田が何故、イタリアでボランチにポジションを落とされたのか。それはウリビエリの「相手のディフェンスと中盤の間、やや開き気味の位置から内に入りながらフリーでボールを受ければ、ゴール正面に近い絶好のポジションで前を向くことができる。ここまでは戦術的な狙い通りだった。彼ほどのテクニックの持ち主ならば、そこで決定的なチャンスを作って当然の状況だ。それこそまさに私が彼に求めていたことだ。」って所に集約されるんです。


中田にトップ下の仕事を求める際、監督がやって欲しいのは、「相手のディフェンスと中盤の間、やや左サイドに開き気味の位置から内に入りながらフリーでボールを受けて前を向く」、これに尽きます。これは日本代表で香川がやってる事です。ただ、中田にそれをやらせてみると、何でか上手くいかない。ボールを受けても、ゴールに背を向けたままボールをキープして攻撃をスローダウンさせてしまう。エジルのように、「相手のディフェンスと中盤の間、やや右サイドに開き気味の位置から内に入りながらフリーでボールを受けて前を向き、そこから決定的な違いを作り出す」ってプレーがあまり出来ない。


これ、中田がトップ下からボランチにポジションを落としていった原因です。同じようなプレーヤーにピルロがいます。ピルロも似たような理由でトップ下からボランチにポジションを移しました。



これね、どうなるかは、結局、本田次第なんですけどね。ミランが本田に眼をつけたのはコンフェデのイタリア戦だったみたいですけど、あの試合で、本田が右サイドの高い位置で起点になっていいプレーが出来ていたかっていうと、あんま出来てないんです。攻撃は前半なんて馬鹿みたいに左偏重になってたし。



とりあえず、クリロナの事は忘れて、エジル、メッシみたいなプレーをミランでも日本代表でも見せてくれってのが僕の切実な願いではあります。彼のミランのキャリアの為に必要なのは、クリロナみたいにプレーすることでなく、メッシやエジルみたいなプレーを右サイドですることなんです。


また長くなっちまいましたが、本田がミランで求められるのは右サイドからカットインで違いを作る。これに尽きます。右サイドからカットインして、ロッベンやメッシみたいにゴールを決めまくるというのは、セリエAのDF相手では難しいので、カカとのコンビネーションからのゴールが増えればいいんですが・・・・



長くなったので、今日はこのあたりで終わりにします。日本代表の右サイド問題については、又、日を改めて詳しく書きます。


ではでは。

日本代表、岡田時代とザッケローニ時代の違い、そしてあんまり変わらなかった事

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さて、本日は久しぶりに日本代表ネタでお送りしますわ。つか、書こうとして書きかけにして、お蔵入りしてたネタが大量にあって、まとめとかなきゃいけないんですが、本日はその一つ。日本代表ネタですけど、岡田時代とザッケローニ時代の違いについてです。


これも、書きかけのまま、放置してた奴なんですが、年内に日本代表についてまとめとこうと思って、色々と書き直してエントリにまとめることにしました。


内容的には、ザッケローニのサッカーと、岡田時代の日本代表なんかについての話になります。ちなみに、内容的には、サッカーのうんちくの中でも、あんまり面白くない「守備」の話が主体となっており、攻撃の話を聞きたい人には、あんまり面白くない話かとは思います。





岡田時代の日本代表の問題点について


で、まず、岡田時代の話から始めますけど、その前に今週号のnumberで、ピクシーのインタビューが載ってます。そこにJリーグ創世記の小話が載ってるので、それをちょっと引用しますが、

日本にこれほど長く留まることができたのは、すごく幸運だったと思う。実は1994年に来日した当時、名古屋を辞めてヨーロッパに戻る寸前までいったんだ。当時のグランパスは試合で負け続けていたし、つまらないミスも多すぎた。なのに監督と話し合いをしようとしても、一切聞く耳を持ってもらえなかったからね。


そこで奇跡が起きた。フロントが監督を代えてベンゲルを連れてきたんだ。彼が名古屋にやってきたのは、クラブにとっても僕にとっても大きなターニングポイントになった。


以来、僕は今日まで日本サッカーに深く関わり続けてきた。たしかにスタート直後のJリーグはいくつかの課題を抱えていた。特に気になったのは戦術面だ。ゾーンディフェンスとマンマークの違いなども正しく理解されていなかったから、組織的な守備が本当の意味で浸透していなかった。

2013年、12/26日発売のナンバーより

ってモンです。全文読みたい人はナンバー買ってください。黒字強調は僕ですけど、発足当時のJリーグってのは、守備戦術の面でヨーロッパに比べて遅れておりまして、そのキャッチアップが必要でした。名古屋は1994年、イングランド出身のゴードン・ミルンを監督にしてピクシーを連れてきたんですが、どうも折り合いがよくなかったようで、翌年、ベンゲルが名古屋に就任することになります。こっから、名古屋の本格的なキャッチアップが始まります。


ベンゲルに関しては、まず、守備戦術から入ってまして、名古屋にヨーロッパ流の組織的な守備戦術を1から植えつけた監督でもあります。もっとも、攻撃に関しては、これまたピクシーが言ってますが、「もちろん僕は守備に関しては、監督の指示を忠実に守った。でも攻撃では、自分のやり方を貫かせてもらった。たとえベンゲルに反対されてもね(笑)」なんてインタで述べてるんで、そーいう選手でした。守備は監督の指示通りやるけど、攻撃は俺様が仕切るぜ、みたいな選手でしたからね。ピクシーくらいの選手になれば、それでいいんですけど(笑)。


で、なんですけど、なんでこんな話から入るかってーと、岡田時代以前、トルシエが「日本には守備の文化がない」って言って、それが末永く記憶されている訳です。実は、こないだ、カペッロが欧州サッカー批評のインタで「イングランドには守備の文化が欠けている」って発言をしてまして、イングランドもかー、などと思った事があったのですが。日本代表とイングランド代表に共通する問題として、DFとGKのやらかしが妙に多いってのがあります。



こんな話をつらつらとするのは、岡田時代からでなく、それ以前からずーっと続いている問題として、日本代表及びJリーグってのは、時々、信じられないような個人戦術面での未熟さってのを見せる事があるからでして、特に守備面でそれが顕著です。




そういうのを踏まえて、岡田時代の日本代表の話を始めます。


まず、岡田時代の日本代表を分析した外国人監督というと、主に、スペイン人ではファン・マヌエル・リージョ、ミケル・エチャリ、イタリア人ではレンツォ・ウリビエリ、マルコ・ジャンパオロ、アントニオ・アッコンチャ、シモーネ・ボンバルディエーリ、ミルコ・マッツァンティーニになります。


それぞれの監督の分析については、


『 岡田ジャパン 』 ファン・マヌエル・リージョ


世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜 (COSMO BOOKS)

世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜 (COSMO BOOKS)


日本サッカースカウティング127選手

日本サッカースカウティング127選手


といった書籍で読むことができます。リージョの奴は、随分前のスポルティーバの奴なんで、手にいれるのがちょっと困難ですが、イタリア人監督5人による分析と、スペイン人のミケル・エチャリの分析は、それぞれの書籍で読む事が可能です。



で、これらの分析に共通する岡田ジャパンの組織戦術面での問題点ですけど、羅列しますが、



1,FWのプレス。FWがプレスをかけても後ろが連動しておらず、ライン間が間延びしてしまっている。


2、同一のサイドでの多すぎるパス回し。選手同士の距離を近づけすぎており、相手の組織的なプレスの餌食になっている。


3、リスクを無視した攻め上がり。両SB、両ボランチ、さらにCB(闘莉王)まで攻め上がる事がある。カウンターへのリスク管理が出来ていない。



ってものです。これらは岡田時代の日本代表のダメなほうの特徴でして、イタリア人監督やスペイン人監督から激しくダメ出しを食らってます。どれも、組織戦術面では、常識的なソレではありません。これらは、ザッケローニ時代になってから、全部、日本代表から消え去った特徴でもあります。もっとも、岡ちゃんも本番では、こういった戦術は改めて、阿部ちゃんアンカーのドン引き戦術に切り替えた訳なんですけどもね。



ただし、変わらなかった事もあります。それは、ミケル・エチャリが「日本人選手たちは時折、信じられない戦術的未熟さをせみることもあるが、それも含め、欧州や南米のプレーを見慣れた私には新鮮だった」と言っていますが、日本人選手ってのは、スペイン人監督やイタリア人監督から見ると、時折、信じられないような初歩的なミスを起こすって所です。


これは、Jリーグ創世から続く問題でして、これについては、後述します。




ザッケローニ時代になって変わった事

さて、こっからがザックになってから日本代表で変わった事です。まず、先に述べたような岡田ジャパンの問題点は、ザック時代になってからは、日本代表では見られなくなっています。プレスが連動してないって問題はなくなってますし(フィジカルコンディションが低くてダメな時はありますけどね)、同一サイドでのパス回しにこだわるって事も無くなってます。また、両SBに両ボランチ、さらにCBまでが攻め上がるなんて事は、負けてて試合終了直前とかいう時以外は行われなくなりました。


ザックは組織の守備戦術に関しては、非常にオーソドックスなソレを使ってまして、岡ちゃんみたいな奇抜な事はやってません。というか、岡田時代のアレ、ちょっと特殊すぎました。


ザッケローニって監督ですが、選手選考には特徴があります。ボランチには守備が強い選手を好み、サイドにはカットイン系のWGと突破力のあるSB、WBを好むって所です。FWはビアホフタイプが好みかと思ったら、単純にリーグ戦で点を取っている選手を呼び、使う傾向もあります。


要は343ができる選手を呼んでるって事です。


ザッケローニウディネーゼ時代、ボランチにジャンニケッタ、ロッシット、ワレムという守備的なMFを使い、WBに走力のある選手を使ってましたが、ボランチの人選、SBの人選を見ていると、343をやりたくてたまらないんだなあ、というのが僕の印象です。SBに長友、内田、駒野、ゴートク、酒井ゴリといった選手を呼び、ボランチでは例外的な遠藤を除いて、長谷部、細貝、山口、高橋と守備がしっかり出来る選手しか呼んでませんからね。


ザックの選手選考については、まず343にフィットしそうな人選になっているってのが特徴でして、これは監督の好みの問題ですから、それについては、僕は問題だとは思ってません。大概の監督は、自分の好きなシステムってのを持ってるもんです。



ザッケローニの戦術については、守備は非常にオーソドックスな監督です。というか、現在、主流になってるゾーンを、かなりの初期段階から使っている監督です。これについては、



監督ザッケローニの本質

監督ザッケローニの本質



こちらの本のロベルト・ロッシのインタに詳しいのですが、ちょっと引用しましょう。

私はサッキとジョルジー二の下でゾーンを経験したいたのだけれど、ミステル(ザックの事)の戦術は彼らと比べてより緻密で頭を使わせるものだった。当時、ゾーンで戦うチームが基本戦術にしていたのは、プレッシングとオフサイドトラップだった。チーム全体を押し上げてボールにプレッシャーをかけ、最終ラインはフラットに保って、裏のスペースにボールが出そうになった時は一歩押し上げてFWをオフサイドにする。私は二人の下でそういう戦術を経験してきたから、ミステルとはよくオフサイドについて話をした。


ミステルの考え方は、オフサイドはあくまでプレッシングの結果だというものだ。守備の局面になったらまずボールをサイドに追い込んでいき、そこから奪いにいく。その時、最終ラインはフラットにするのでなく、一人がボールにプレッシャーをかけ、残る三人はやや下がったカバーリングのポジションにラインを形成するというやり方だ。つまり背後がカバーされている。ところがサッキやジョルジー二のやり方だと、一人がボールにプレッシャーをかけ、他の三人はすべてパスコースを塞ぎにいくため、次に起こるのは、ボール奪取に成功するか、オフサイドを取るか。しかし、そのどちらにも失敗した場合は裏に抜け出されてGKと一対一になるしかない。とはいえ、当時はまだこの戦術が広くしられておらず対応策も編み出されていなかったため、そういった事態は一試合に1度か2度起これば多い方だった。選手にとっては、とにかくアグレッシブにプレスをかけ、裏にパスが出たら一歩前に出て片手を上げればいいのだから、話はシンプルだ。


でもミステルのやり方はより高度で注意と集中を要求するものだった。アグレッシブにプレスをかけるとはいえ、常に選手間の距離と位置関係を保たなければならない。そして、そのタイミングに関しても細かい取り決めがあった。サッキやジョルジー二は、「サイドに追い込んだ相手が横や後ろにパスを出そうとする時には、その受け手にすかさずプレッシャーをかけろ」と教えていた。しかしミステルは必ず、「パスが出された瞬間に動き始める」よう指示した。そうすれば、フェイントなどで逆をとられて裏を衝かれることが避けられるからだ。



『タイミング』という概念はミステルの戦術できわめて重要なコンセプトのひとつになっている。パスを受けようとする選手は、三つのタイミングを持っている。ボールを止めるタイミング、顔を上げるタイミング、そしてパスを出すタイミングだ。前のパスが出された瞬間に動き出して受け手にプレッシャーをかけにいった選手は、相手からこの三つのタイミングのうち一つを奪うことを狙う。止めるタイミングを奪えば、ダイレクトパスを強いるかイーブンボールになるかのどちらかだ。止めた後、顔を上げるタイミングを奪えば次のパスが不正確になる。パスを出すタイミングを奪えばそこで追い詰めることができる。もちろんワンタッチでプレーされればそれを止めるのは難しいが、それは相手にとって最も難易度の高い選択肢だ。ボールを奪えなくとも難易度の高いプレーをしいるところまで追い込めば、次のプレーで奪うことはさらにたやすくなる。これがミステルのプレッシングに対する考え方だった。今ではすでに広く受け入れられている考え方だた、当時、こんな事を言っているのはミステルだけだった。

というものです。これは、ザッケローニのプレスに関する基本的な考え方でして、この本の最後のザックのインタでも、それが裏付けられます。ここも軽く引用しときますが、

●ゾーンディフェンスをチームに教えるためのメソッドはどうしたのですか?


「ピッチの上で試しながら、だね。当時はセリエAでもゾーンを導入しているチームはサッキのミランくらいしかなかった。でも私のやり方はちょっと違っていたから。サッキのチームはプレッシングを常時続け、オフサイドトラップを狙い続けていた。私のやり方は、相手が対策を取ってくるのを防ぐため、状況に応じてプレスをかけるというものだった。もちろん、いつやるかべきかというルールも明確で、オフサイドはプレッシングの結果として取るモノだと考えていた。ボールがオープンかクローズか(前方へのパスコースがあるかないか)という考え方はまだ一般的ではなかったが、私はすでにそれを導入していたよ」


これですね。以前、「サッキのプレッシングのやり方をそのまま真似しているチームはもうない」って話をしましたが、それはこーいう理由です。サッキのやり方は、現行のサッカーのオフサイドのルール、そしてハイプレス破りの戦術が広く流布している現状、やるのはリスキーすぎるんです。なんで、現在、スタンダートになっているのはザックタイプの方です。ドルトムントとかバルサは、ハイプレスのチームですが、ハイプレスやるのはボールを奪われた直後の3~5秒程度に留め、ボールを奪取できなかったら、一旦リトリートして陣形を整えてから再度、プレスするやり方になってます。



日本代表のその辺りのルールは、どうなってるのかよく知らないのですが、プレッシングの基本的な考え方は、ザックは現在、スタンダートになってるやり方をそのまま使っており、繰り返しますが、守備戦術で岡ちゃんみたいな突飛な事は特にやっていません。


岡田時代と比較して、明確に変わったと言えるのはココでして、プレスに関していえば、ザックはイタリアで基本的なやり方をそのまま日本代表に持ち込んでいます。



ザッケローニ時代になっても変わらなかった事


で、こっから問題なんですけどね。えーとですね、こっからは、内容的に選手のダメ出しになるので、そういうの読むのが嫌な人は、こっから先は読まない方がいいです。僕個人も、あんまし書いてて気持ちの良いモンじゃありません。



さてさて。



最初の方で、エチャリの「日本人選手は時折信じられない戦術的未熟さを見せる」って話を引用しましたけど、これがどーいう事かというとですね。



まず、日本人GKの話からしましょうか。実は、ナンバーの最新号に、ミケル・エチャリのレポートがありまして、「わたしがJから選んだ”世界に通じる”ベストイレブン」ってのがあります。興味のある人は、買って読んでください。



で、その中にJリーグのGKの話がありまして、「まず、GKのレベルにはばらつきがある。無茶な飛び出し、見るに堪えないパンチング、壁の作り方を間違えるGKも残念ながらいたが、菅野孝憲柏レイソル)、楢崎正剛名古屋グランパス)、西川周作サンフレッチェ広島)は基本技術が高く、ゴールマウスでのリーダーシップと落ち着きを見せている。」ってのがあります。一番評価しているのはFC東京の権田のようです。


でもって、コレ読んだ時に、「無茶な飛び出し、見るに堪えないパンチング、壁の作り方を間違えるGK」ってのを見て、



「ガヤさんのことかーーーーーーーーーーーーー!!!!」



と思ったのは僕だけじゃないと思います。参考までにガヤさんのやらかし動画貼っときますけど、






コレですね。動画の最初からいきなりやらかしてますけど、まず、ガヤさんは、無茶な飛び出しというか、珍妙な飛び出しをする人でして、飛び出し後にやらかす率が半端ありません。この動画で飛び出してやらかすプレーがいくつもあります。これはガヤさんだけのせいでもないんですけどね、DFと意志疎通の問題もありますので。。。。まあ、ガンバについては、「GKが飛び出したら高確率でやらかすチームなのに、何でライン上げてしまうん?」と常々思っておりました。


次に「見るに堪えないパンチング」なんですけど、ガヤさんって、シュートをとんでもない所にこぼす癖があり、この動画でも、そーいうのが頻繁にあります。絶対にこぼしちゃいけない場所に弾いてしまうんです。「ガヤさんにミドルは非紳士的行為でイエロー」というネタがありますが、ガヤさん、ミドルでニアを抜かれてみたり、ミドルシュートをとんでもない所にこぼして押し込まれる事があり、そういう経緯があって、ネタ化されています。



エチャリについては、川島や権田への評価が高いので、それは良いんですが、その川島がこないだの試合でガヤさんばりのバンザイアタックをかましてみたりと、



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「なんで日本人GKやらかしてしまうん?」と、節子ばりに涙目になります。権田もオリンピックの韓国戦で地味にやらかしてるしね。



ついでに、2012 J1第17節 FC東京×ガンバ大阪の動画があったんで、そっちも貼っときます。権田対ガヤさんというハイレベルなGK対決です。



まあ、この動画で一番酷いのは、ルーカスにミドルでニア抜かれてしまうガヤさんのアレなんですけどね。この試合、権田とモリゲも大概なアレですけど、ガンバ相手なんで、点とられるのは仕方のない部分もあります。


ただ、この動画貼ったのは、GKの次のCBの話をしたいからなんです。ぶっちゃけ、動画の4:12からの所。ガンバの失点シーンです。


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このシーンで注目してほしいのは、画面右端の今ちゃんなんですわ。このシーンでも、前に飛び出しちゃってるでしょ?今ちゃんが前にくいちゃったせいで、右CBは、今ちゃんが空けちゃったポジションをカバーすべきか、FWのルーカスをマークするべきかって難しい判断を強いられる羽目になってるんです。今ちゃんが空けたポジションにFC東京の2列目が走り込んできてるしね。今ちゃんの食いつき癖、2012年のリーグ戦だと、もう完璧に狙われてました。


あそこはボランチとSHに任せて、今ちゃんが食いついてなければ、右CBがルーカスのマークを外しちゃう事は無かったでしょ?って話なんです。



これね、うちのブログでも以前から指摘してきましたし、エチャリも前から指摘してる今ちゃんの悪癖なんです。



これもナンバーの2013年8/8号で、エチャリが「コンフェデで浮き彫りになったゲームマネジメントの課題」ってコラムを書いてますが、その中で、



率直に言って、今野、吉田のコンビでは世界を制するのは難しい。前者は軽率にボールホルダーに飛び込む事があるし、後者はヨルダン戦のように致命的なミスを犯し、早さに対応できない点もある。アジアを舞台にしているときから指摘してきたが、今回のコンフェデでその小さなミスが致命傷になった。二人が今大会、高い集中力を見せ、奮闘していたのは間違いないのだが・・・・」



ってのです。


吉田の判断ミスと足の遅さについては、ついこないだ、久々にサウサンプトンでスタメンで出た時に、モロにやらかしたんで、そっちには触れないでおきます。「吉田 やらかし」でぐぐってください。すぐ出てきます。



吉田って選手については、もうエチャリが著書「日本サッカースカウティング127選手」で、その弱点を簡単にまとめてくれてますが、


「まず、ダッシュ力のあるFWを苦手とし、ターンが遅いためしばしば置き去りにされる。その結果、軽率なファウルが多く、敵にやらずもがなのフリーキックを与えることも。また、1度ポジション取りを誤ると修正に手間取り、相手に決定的な仕事をされてしまう。そして不用意なオフサイドトラップからピンチを作るなど、戦術的にも未熟に移る。」


読んだ時、吉田の欠点を洗いざらい、簡潔にまとめてるなあ、と感心した位です。



それからね、最近の代表の試合見る限り、吉田のこういった欠点、相手チームにばれてて、ガチで狙われてるって事です。


ウルグアイ戦、オランダ戦、ベルギー戦、全部、吉田と内田の所で失点してますけど、これ、絶対に偶然じゃありません。明らかに吉田の所を狙ってきてます。特に吉田と内田の間のギャップが狙われてます。


結局ですけど、CB、GKの欠点ってのはプロのスカウト、監督が見れば、まず確実に狙われてしまうんです。



今ちゃんと吉田のアレを書くと、「じゃあ、やっぱり中澤と闘莉王を呼び戻したほうが良くないかい?」って思う人がいると思います。でも、そんな簡単な話じゃないんです。



これね。



スペイン人のエチャリにしろ、イタリア人にしろ、中澤と闘莉王の欠点をすぐに見抜くんですよ。エチャリは、岡田時代の中澤と闘莉王に対して、「ポジション取りが未熟で危うい印象」って話をしてます。



でもって、「世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス」では、イタリア人監督に中澤にしろ闘莉王にしろ、かなりダメ出し食らってるんです。どういうプレーがよくなかったのかついては、本読んでもらえればわかります。


で、結局、この本で、イタリア人監督のウリビエリが



「言葉にするとすれば、それは下地ということになるだろうか。すなわち、基本だ。この基本的なことを、おそらく日本の選手達はユースの時代から正しく積み重ねてこなかったのではないだろうか。この試合の中で数多くみられた初歩的なミスを見る限り、そう考えざるを得ない。


サッカーとは、秒単位で局面が変わるスポーツであり、だからこそ瞬時の判断が求められる。そして、その判断を半ば委ねた結果がポジショニングなのだから、それを若い頃から培っていないとすれば、また次の試合でも同じようなミスを繰り返してしまうのではないだろうか」



って話をしてんですね。



岡田ジャパンからザックジャパンになり、変わった事は組織面での戦術、特にプレスに関しては、極めてオーソドックスなそれになってます。



一方で、変わらなかった事。それはDFが、相変わらず、初歩的なミスを繰り返しているって事です。



以前、バスケ関連でに似たような話があんのね、と思って呼んだブログの記事があるんで紹介しときます。



アメリカと日本の違い ~スラムダンク 谷沢くんの話~



こっちの記事で、アメリカと日本のバスケの基本技術の違いについての話があります。サッカーの話とは、ちょっと毛色が違いますが、ちょっと身につまされるお話なので、興味のあるかたは読んでみてください。



あのですね。



よく日本代表について「フィジカルが弱い」って批判がよくあるわけですよ。特にDFに関しては、欧州勢やアフリカ勢と比べて、実際そうなのは否定しようがないんです。



でも一方で「欧州勢や南米勢と比べて、日本のDFは基本が出来てない」ってイタリア人やスペイン人の監督がまず最初に口を揃えているって現実もあるわけです。日本人DFは基本的な部分でミスが多い。でも、何でか、そっちはあまり批判されない。




岡ちゃん時代のサッカーの話をしたり、日本人DFの話をしたり、バスケの話を紹介したりしたのは、ココを問題にしたいからで、イタリア人のザックを監督に持ってきても、結局、ここは変えようがないんです。代表のDFが基本が出来てないってのは代表監督のせいじゃないんです。ユースのレベルの話になるからです。基本を教えるのはユース世代の監督の仕事なんだから。



今日はこのあたりで。攻撃の話については、また今度やります。これも書きかけの奴があるので。



ではでは。

サッカーにおけるに個人戦術のお話(主に守備)

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さて、皆さん、こんにちは。本日は、又、地味な話なんですが、サッカーにおける守備のお話をしたいと思います。前回もちょいとしましたが、今回は、守備戦術の中でも、個人戦術(一対一)なんかの話がメインです。そういや、守備のチーム戦術の話はしてきたけど、個人戦術の話は全くしてこなかったので、良い機会なんで、やっとこうと思います。


ちなみに、今回の奴はゾーンディフェンスの話です


まあ、これはホントに基本のお話であって、わざわざそんな基本的な話をエントリにする必要なんてあんのかよ、というアレがあるんですが、書こうと思ったきっかけは何かってーと、




これです。サッカーダイジェストの最新号に、毎年恒例のJ1全ゴールのDVDがついてまして、そいつにサッカーダイジェストの編集部が選んだベスト10ゴールってのが載ってたわけです。



で、どれも凄いゴールなんですけど、そのうち4つほど、DFが基本的な部分でミスをした事がきっかけで生まれたゴールってのがありまして、今日はそれと絡めて、サッカーにおける守備の基本というか、個人戦術とグループ戦術の話をしようと思ったわけですね。




とりあえず、まずyoutubeから、サカダイの編集部が選んだベスト10ゴールの動画探してきたんで、貼っときます。




10位 柏レイソル、工藤のゴール

2013 J1 第10節 柏レイソル 2-1 横浜F・マリノス 06/05/2013 - YouTube


9位 鹿島、大迫のゴール

J1 第2節 鹿島アントラーズ対ベガルタ仙台 得点ハイライト - YouTube


8位 広島、高萩のゴール

2013 J1 第13節 湘南ベルマーレ 0-2 サンフレッチェ広島 25/05 ...


7位 大宮、ズラタンのゴール

セレッソ大阪VS大宮アルディージャ ズラタンのゴール J1第6節 4月13日 - YouTube



6位 浦和、原口のゴール

2013 J1 第10節 セレッソ大阪 2-2 浦和レッズ 06/05/2013 - YouTube



5位、川崎、大久保のゴール

2013 J1 第23節 川崎フロンターレ 2-1 大宮アルディージャ 28/08/2013 - YouTube


4位 C大阪 柿谷のゴール

2013 J1 第13節 セレッソ大阪 2-1 名古屋グランパス 25/05/2013 ...


3位 横浜FM、斎藤のゴール

2013 J1 第16節 横浜F・マリノス 2-1 大宮アルディージャ 13/07 ...


2位 横浜FM 俊輔のゴール

J1第23節 横浜Fマリノス 3-0 浦和レッズ [ハイライト] - YouTube


1位 広島、佐藤寿人のゴール

2013/09/28/ サガン鳥栖 0-2 サンフレッチェ広島 佐藤寿人、スーパーゴー ...



となっております。とりあえず、それぞれのハイライトをちょっと見てみて下さい。



ここで、問題。


この中で、約一名、DFが一対一の局面で絶対やってはいけないプレーを二回やっており、それが原因でゴール決められている選手がいます。それは誰でしょう?



答えは、守備の個人戦術の話の話をしながら、お答えします。ホントに基礎的なミスをやってるので、分かる人にはすぐ分かると思います。



サッカーにおける守備の個人戦術

さて、こっからが今回のエントリの主題になります。サッカーにおいて、基礎の基礎ですが、一対一の局面での個人戦術の話です。



まず、一対一の局面というのは、前を向いているアタッカーとの一対一、アタッカーの背後からの一対一の局面に分けられます。さらにそれを細分化すると、


個人戦術
 │
 │
 ├→ 前を向いたアタッカーとの一対一
 │  │
 │  ├→ 中央での一対一
 │  │       │
 │  │       ├→ 長距離
 │  │       └→ 短距離          
 │  └→サイドでの一対一               
 │          ├→ 長距離
 │          └→ 短距離
 │
 │
 ├→ アタッカーの背後からの一対一
 │  │
 │  ├→ 中央での一対一
 │  │       │
 │  │       ├→ アタッカーがボールを持っている
 │  │       │         │
 │  │       │         ├→ 中央へのパス
 │  │       │         └→ サイドへのパス
 │  │       └→ アタッカーがまだボールを持っていない   
 │  └→サイドでの一対一               
 │          ├→ アタッカーがボールを持っている
 │          └→ アタッカーがまだボールを持っていない
 │
 │
 └→数的不利(中央、もしくはサイドでの1対2)



局面ごとに分解すると、こんな具合になります。それぞれの局面ごとにおいて、守り方のセオリーみたいなモンが存在します。



でもって、サッカーには無数のセオリーが存在しまして、互いに相反するみたいな奴もあります。例えば、ヨーロッパ式の4バックと、南米式の4バックだと、ちょっと毛色が違います。


前を向いたアタッカーとの一対一


これ、守備のセオリーから入りますけど、「前を向いてボールをキープしてる相手に対して無闇にボールを奪いにいってはいけない」ってのがあります。



ボールを奪えずにかわされたら、相手に馬鹿みたいにスペースを与えてしまい、さらに味方選手がカバーに走らないといけなくなるため、チームにとって非常に迷惑な行為になるからです。前をむいた相手に対して、無闇にボールを奪いに行くのは基本的に間違いです。特に中央での一対一ではそうです。中央での一対一では、サイドと違い、守備の助けになるサイドラインがありません。中央で前向いた相手との一対一の場合、ディレイ&ジョッキーでサイドにボールを出させます。できれば、アタッカーの不得意なサイド、ドリブルで使う足の逆側のサイドに追い込んでいき、アタッカーの逆足でキープさせる状況に持って行ければ満点です。


基本的に、中央でボールを持って前を向いたアタッカーとDFの一対一ではアタッカーが有利な状況となります。この状態で、DFが適切な個人戦術上の行動を取らなかった場合、その後には悲惨な結果が多くの場合、待ち構えています。


ここで、問題にしたいのが、


5位、川崎、大久保のゴール

2013 J1 第23節 川崎フロンターレ 2-1 大宮アルディージャ 28/08/2013 - YouTube



こいつです。中央で大久保と大宮のボランチの一対一の状況が出来てるんですけど、大宮のほうのボランチが、前向いてボールもった大久保にたいして、つっかけちゃってるんですね。しかも、大久保から見て右方向へのコースを空けてしまった。大久保は右足が利き足なんで、こっち方向へのドリブルはゴールに繋がるアクションになりやすい。しかも、大宮のDFは川崎側からみて左サイドに絞っているってので、絶対にボールを持ち出させてはいけない方向に行かせてしまっている。


大久保のシュートはスーパーでしたけど、このシーンでは、大宮のボランチの一対一での対応の不味さ、それも基本的な部分でミスがでているので、その後に悲惨な結果が待っていたのは、当然とも言えます。不用意に大久保クラスのアタッカーにつっかけて、しかもその後、行かせていけない方向に突破させてしまっているわけで、これはホントに不味いプレーでした。




次に、もう一つ。こっちは技術論の話にもなるんですが、どんな局面であろうと、「前を向いたアタッカーに背を向けてターンをしてはならない」ってのがあります。左右に振られる中で、DFがアタッカーに背を向けてターンしてしまうと、その瞬間、必然的に相手アタッカーを見えない瞬間が出来るからで、能力の高いアタッカーであれば、その瞬間に決定的なプレーをしてしまうからです。



「そんなん基本的な話じゃねーか、馬鹿か?」と思う人もいるかもしれませんけど、コレね、やらかしてるDFがいるわけですよ。これが、最初の問題の答えになります。やらかしてるDFがいるんです。




7位 大宮、ズラタンのゴール

セレッソ大阪VS大宮アルディージャ ズラタンのゴール J1第6節 4月13日 - YouTube



6位 浦和、原口のゴール

2013 J1 第10節 セレッソ大阪 2-2 浦和レッズ 06/05/2013 - YouTube



この二つです。やらかしてるのはセレッソのCB、茂庭です。茂庭のプレーに注目して見てください。ズラタン相手、原口相手に背を向けてターンしてしまい、その後にシュート打たれてます。


これ、ズラタンや原口クラスの相手にはプロのCBなら絶対にやってはいけないプレーで、ズラタン相手、原口相手に、茂庭が背中を見せてターンしちゃってるんです。これは絶対にやっちゃいけない。理由は前述した通り。


これねえ、今回のエントリ書いた理由でもあるんですが、茂庭って、日本代表にも選ばれた事があるCBな訳です。そういう選手が、こういう基本的な所でミスする事があるんですよ。前回のエントリで話をした事でもありますが、時々、日本人DFって、信じられないようなミスをすることがあるんです。



勿論、海外のDFもやらかすときはやらかしますけどね。ちょっと、その話も含めて、次に「背後からの一対一」の話をしましょう。



アタッカーの背後からの一対一


今度は、アタッカーの背後からの一対一になります。こっちは、特にCBに多い状況なんですけど、この場合、基本的にDFが有利になります。というのも、ボールと相手アタッカーを同一の視野に入れてアクションを起こせる状況が多い為です。


この状況で、一番理想的なのは、相手のパスをインターセプトする事です。ただし、それが出来ずに、相手アタッカーの足下にボールが入ってしまった場合、適切な行動を取る必要があります。



これ僕の私見ですけどJリーグでは、アタッカーの背後からの一対一でミスが起きる事が多いです。日本代表の試合で、中澤とか闘莉王がアタッカーの背後からの一対一でやらかすことがあって、僕は、どうにも、日本人DFは、ここでのミスが多い印象をもっています。


ただ、海外のDFでもやらかすときはやらかします。ユーロでのドイツ対イタリアで、フンメルスがやらかしました。動画貼っときますが、



EURO 2012 準決勝バロテッリ2発! - YouTube


こいつです。ドイツの失点、最初のは完全にフンメルスのやらかし。この一点目がドイツに重くのしかかる事になります。


何がいけないかってーと、サイドでフンメルスカッサーノの一対一が出来たわけです。この時、カッサーノはゴールに向けて背を向けた状態で、この時にフンメルスに求められるのは、絶対にカッサーノをゴールに向けてターンさせない事。


ところが、フンメルスカッサーノに対して、不用意に足出して態勢を崩してしまい、結果としてカッサーノにゴール方向にターンされちゃう訳です。これは絶対やっちゃいけないプレーでして、その後にバロテッリがゴール決めたんですけど、この最大の原因は、フンメルスのやらかしです。




でもって、これ、日本代表で闘莉王もやってるんですよ。2009年のオランダ戦ですけどね。




日本 VS オランダ(Japan vs Netherlands)2009-09-05 - YouTube



日本の2失点目の闘莉王の対応が問題なんですけど、中央でボールを受けたデセーブに対して、闘莉王がマークに出たわけです。この時、デセーブはゴールに背を向けており、やはり、ここではターンさせない事が一番重要です。ところが、闘莉王は不用意に足出して、態勢を崩してしまい、その結果としてターンされてしまってるんです。あとはスナイデルのゴラッソが決まって日本が2失点目。これ、完全に闘莉王のやらかしでして、CBがやっちゃいけないプレーをやってます。



闘莉王の欠点なんですけど、時々、この手のやらかしをするのと、攻撃の時に「急ぎすぎる」ってのがあります。これは、サカダイのベストゴール10に入ってる、柿谷が名古屋相手に決めたゴールの奴でもそうでした。



4位 C大阪 柿谷のゴール

2013 J1 第13節 セレッソ大阪 2-1 名古屋グランパス 25/05/2013 ...



これですけどね。何が不味いって、闘莉王、マークついてる相手に左足でパス出してるんです(逆足でのパスは体の向きからコースを読みやすい)。その結果として、セレッソの枝村は簡単にインターセプトのコースに入ることが出来、そこから一気にショートカウンターセレッソに持っていかれてます。日本代表や名古屋で、闘莉王は似たような事をやっており、スペイン人のエチャリであったり、イタリア人監督に、揃ってこの部分を指摘されてます。闘莉王はフィード上手い選手なんですけど、時々、無謀すぎるパス入れる事があり、これは結構な問題だったりします。これは、守備戦術の話というより、ビルドアップの話なんで、この辺りでやめときます。



アタッカーとの背後からの一対一では、基本的にDF有利なんですけど、対応ミスると致命傷になります。こないだ、ミラン対インテルでありましたが、ミランのポーリが、ゴールに背を向けてる長友に対して体を寄せすぎてしまい、バランス崩して長友に入れ替わられてしまうってミスをやってました。しっかり寄せて前向かせないのは基本ですが、寄せすぎて入れ替わられるのは厳禁です。


もっとも、しっかり寄せないと、



日本×ガーナ Japan×Ghana 全得点シーン 2009/09/09 - YouTube


日本の3失点目のシーンですけど、中澤がゴールに背を向けてボールを受けたムンタリとの距離空けすぎてしまい、簡単にターンされてパス通されて失点とかいう目にも合います。



これも基本的な話なんですけど、背後からの一対一では、「相手にしっかり寄せてターンされないようにする」、「その際に不用意に足だしてバランスを崩さない事」、「体を寄せすぎてFWに体を押さえ込まれ入れ替わられないようにする事」ってのが大事になります。こういう基本が出来てないと、やっぱり悲惨な事になります。



ちと、長くなりすぎたんで、今日はこの辺で。

今回は、紹介した動画大杉だし、中身も長くなってきたんで、この辺りにしときます。ホントは、全局面での解説もいれるべきなんですが、それやると、本気で長くなりすぎてしまい、二万字とか書かないといけなくなるので、勘弁してください。



今回のエントリ書いたのは、前回のエントリで「日本人選手は時々、信じられないような戦術的な未熟さを見せることがある」って話で、どういう局面でどういうミスが出てるのかって話をちょいとしたかったからです。



前回紹介した本ですが、


世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜 (COSMO BOOKS)

世界が指摘する岡田ジャパンの決定的戦術ミス〜イタリア人監督5人が日本代表の7試合を徹底分析〜 (COSMO BOOKS)


こっちの本の付録に、「サッカーにおける戦術とは何か?」ってのがついてます。中身は基本的な守備のセオリーをまとめたもので、何でこんな付録がついてるのかってーと、日本代表の試合で、極めて初歩的なミスが多いというのがその理由です。あともうひとつ。よく、「Jリーグはディレイ主体」って話をする人がいますが、これもアレな話ですが、本の中で、イタリア人監督に「日本人は時間を稼ぐという守備の基本が出来ていない」って指摘をされてます。岡田時代、前向いたアタッカーにやたらと飛び込みたがる選手が多かったせいなんですがね。


今回、サカダイのベストゴール10を見てみて、そのうち4つのゴールはDFの初歩的なミスが原因となっており、「うーん」と思ったので、こんな話になったんですけども。そのうち一つに大久保につっかけたアレがあって、うーん、と。


日本代表でも、最近、DFが初歩的なミスやらかして失点ってのが多いんですけど、それは代表の今ちゃんやマヤに限った話じゃなくて、中澤や闘莉王も、代表時代にやらかしてたりするんです。元日本代表の茂庭までやらかしたりします。


以前、ザックが、日本代表の目指すところとして、「バルセロナのサッカーとドルトムントのサッカーの中間」とか言ってた事があるんですが、最近の日本代表って、ほとんどガンバです。


ザル4バックにネタGKはガンバの代名詞でしたが、バルセロナのサッカーとドルトムントのサッカーの中間とは、ガンバだったのか・・・・!と、僕は最近気づいた次第です。まあ、ここはネタですけどね。



えっと、もうすぐW杯なんですが、僕はもう失点については諦めました。もういいです。守りきれるはずないし。なんで、全盛期のガンバさんみたいに、3-2で勝つサッカーを目指せばいいと思います。これ、割とマジで言ってます。


こないだ、ザックが、

「我々は全3試合に勝つことを常に考えていかなければならない。W杯は非常に重要だし、素晴らしいサッカー文化を持つ国で行われるので、そこで日本のイメージを高められると信じている。私のチームの選手たちには『守備の心配はするな。そして多くの攻撃を仕掛けるようにしよう』と要求するだろう。この3年半で我々はかなり成長しているし、FIFAランクで上の相手と戦う我がチームをぜひ見てみたい」



ザッケローニ監督が指摘する日本人選手の問題点…「もっとシュートすることを目指すべき」


私のチームの選手たちには『守備の心配はするな。そして多くの攻撃を仕掛けるようにしよう』と要求するだろう。」とか、景気のいい事いってたんで、




「イエーイ、ガンバ路線!」



と当ブログはザッケローニを応援しております。ガンバに対して「一番心配なのは守備だよ!!」とかいうのは野暮なように、もうここまで路線が決まってる以上、開き直って、どんだけ点取れるかを楽しみにW杯を待ちたいと思います。もうザルで結構です。ザルで殴りかかるサッカーでいきましょう。



イタリア人監督を連れてきて、3年半が経ち、できた代表チームがドルトムントでもバルセロナでもなく、ガンバサッカー(美しいパスワークとコンビネーション、そしてザル守備)だったというのは、非常に香ばしいものを感じるのですが、ある意味でとても日本らしいといえば日本らしいので、当ブログはザッケローニを支援し続けます。


ではでは。

「イングランド・フットボールの源泉に毒を投げ入れた」と言われる人のお話

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皆様、新年、あけましておめでとうございます。


と、ご挨拶をしましてから、今日は新年一発目の話をしたいと思います。なんつーか、今日のネタは元旦に行われたマンチェスター・ユナイテッドトッテナムの試合を見て、「なんだこれ、チャールズ・ヒューズが泣いて喜びそうなゲームをやってるな」と思ったからです。


ちなみにチャールズ・ヒューズについては英語版のwikipediaへのリンク貼っときます。



Charles Hughes (football coach)



彼は、元イングランドFAのテクニカルディレクターであり、コーチングの為のマニュアルを作成した人物であり、ロングボール戦術の開発者の一人、となっています。そして、今回のタイトルである「イングランド・フットボールの源泉に毒を投げ入れた」とまで言われて批判されている人物です。


僕は、ロングボールの戦術自体は全く否定しないのですが、彼のコーチングマニュアルについては、それこそ言いたいことが山ほどあるので、今日は、そういう話になります。


興味のある人はおつきあいくださいませ。



イングランドとロングボール戦術

えーと、まず、この話からになるのですが、イングランド代表ってのはロングボールとプレッシングに基づくダイレクトなサッカーをやります。彼らの戦術については、以前、ロングボールの戦術を扱った記事があるので、そっちを読んでください。



2013CL決勝トーナメント、レアルマドリー対マンチェスターユナイテッドのレビュー



これですな。



それで、なんですけども、イングランドのサッカーについては、実は、numberの最新号でオシムが


それに比べるとイングランドはナイーブでしょうか?


「悪くはないが、驚きがない。アイデアもなく、やっているのはいつも同じことばかりだ。戦いのサッカーでは彼らは存在感を示す。しかし他のやりかたとなると、なかなかスタイルを変えられない」


とまとめてます。



これ、去年のレアル対マンUでもそうでしたが、マンUのほうは馬鹿みたいにロングボール一辺倒の攻撃をやってました。というか、それ以外はしてなかった。でも、ファーガソンは、たまには、違う事もやってたわけです。


ただ、今年に入って、モイーズが就任して以来というもの、正直な話、「悪質な先祖返り」としか言いようがないサッカーをプレシーズンから繰り広げてまして、正直、辟易している所でもあります。


そもそもイングランド代表ってのは、攻撃パターンが極めて限られているのが特徴でして、レアル戦でのレビューで書いたようなロングボール戦術と、サイドに張っているWGにパスしてWGがドリブルしてハイクロスをぶち込むって攻撃ばっかやります。オシムが「悪くはないが、驚きがない。アイデアもなく、やっているのはいつも同じことばかりだ」って言ってるのは、イングランド代表が、そんな攻撃ばっかり繰り返すからです。


で、先日のマンUもまさにそれでして、前半は右に右利きのバレンシア、左にレフティのヤヌザイを入れて、


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こんな感じで、右サイドに張ってるバレンシアにパスだして、ひたすらクロスをあげてました。右サイドに攻撃が偏る理由は、マンUは左サイドの底から縦パス通せる選手がおらず、ビルドアッパーが右利きばかりなんで、パスが右方向に偏ること、また右サイドから左サイドへのサイドチェンジなんて、まずやんないからです。



ひとまずマンUの話はおいといて、ここで疑問が出ますよね。「なんでイングランド代表はそんな攻撃ばっかりすんの?」と。



ここで、チャールズ・ヒューズの話になるわけです。そう、件の「イングランド・フットボールの源泉に毒を投げ入れた」と言われるサッカーマニュアルを作り上げた人物の話に。


チャールズ・ヒューズの著作の紹介

チャールズ・ヒューズなんですが、彼の著作は日本語訳もされており、普通に日本でも買うことができます。日本語訳されているのは4冊で僕も持っているのですが、


サッカー戦術とチームワーク (1974年)

サッカー戦術とチームワーク (1974年)

サッカーの戦術と技術―イングランドサッカー協会コーチングブック (1)

サッカーの戦術と技術―イングランドサッカー協会コーチングブック (1)

サッカーの戦術と技術―イングランドサッカー協会コーチングブック (2)

サッカーの戦術と技術―イングランドサッカー協会コーチングブック (2)

サッカー 勝利への技術・戦術

サッカー 勝利への技術・戦術


この4冊になります。最初に紹介した3つは、普通の実用的なマニュアルといった所で、特に問題ないのですが、問題なのは4冊目、「サッカー 勝利への技術・戦術」なんです。


それ以前の3冊では、ヒューズはごく普通の実践的なサッカーの指導書を書いています。ところが、4冊目で、もうどうしようもない「ダイレクトフットボールの狂信者」に変貌してるんです。一体、彼に何があったのかは知りません。ただ、この本がイングランドFAの指導・育成ディレクターによって書かれたって事が問題なんです。



「イングランドサッカーを10年遅れさせた」、「イングランドサッカーの源泉に毒を投げ込んだ」、そしてブライアン・クラフ、イングランドサッカー史上最高の監督の一人であり、二部にいたノッティンガム・フォレストを率いて、一部に昇格させ、名門リヴァプールを下してリーグ優勝を勝ち取り、UEFAチャンピオンズカップ(現UEFAチャンピオンズリーグ)2連覇を達成した人物に、「チャールズ・ヒューズのフットボールに対する取り組み方が完全に間違っているということを、疑いの余地無く明らかにしたい。彼はフットボールにつららが生えるべきだと信じている」と言われた人物、それがチャールズ・ヒューズです。


彼が、そういった批判を受けた原因は、4冊目の本なんです。



チャールズ・ヒューズ著「サッカー 勝利への技術・戦術」の何が問題なのか?


これね。


内容としては、技術指導とか、GKへのコーチングの仕方とか、FKでの壁の作り方とか、そういう部分には特に文句はないんです。「へー、イングランドではそーゆー風に教えてるのね」という感じです。


ただ、この本の問題というか、イングランドFAの指導・育成ディレクターとして、明らかに問題があるのは、この本がある種のプレー哲学を勧めている、という点です。つまり、「ダイレクトプレーによるサッカー」を。



ダイレクトプレー自体が悪いという訳ではありません。問題なのは、この本の序論からなんですけどね。ちと引用しましょうか。



サッカーについて、ここ約30年間守備中心の戦術が重視されてきたのは否定できない事実であることを簡単な統計が物語っている。1954年のワールドカップ決勝リーグ26試合で、140得点、即ち、1試合につき5.4点をあげたが、1986年の決勝リーグでは、試合数が52試合と二倍になったのに、得点は132点、即ち、1試合につき2.5点しか得点できなかったのである。この観点からすれば、サッカーは向かしと比べておもしろいとは言えなくなっている。


(中略)


この理由は、新しい効果的な守備の戦略にあるというよりむしろ、誤った指導による攻撃戦略になる。即ち、ボールと取られないように安全にパスを繋ぎながら、ゆっくりと攻撃を組み立てていくポゼッション・サッカーである。


(中略)

しかし、多くの事実から、ポゼッションサッカーは間違っているのである。連続パスの回数を分析してみてもわかるように、味方同士でパスしながら攻撃を組み立てる時間が長くなればなる程、守備は守備の組織を立て直しやすくなる。サッカーでは、「時間はいつも守備側に味方してくれる」と一般的には言われている。つまり、ポゼッション・プレーの行き着くところは、得点のない引き分け試合である。



だからといって、あらゆる機会にボールを前方に、即ち、相手側のペナルティエリアに向かって蹴るという、キック・&ラッシュ戦略のほうが良いという事にはならない。


ポゼッションプレーとキック&ラッシュ戦術の両方のバランスがとれていてこそ成功するのである。


そこで、素早く直線的に相手ゴールに向かって、少ないパスで攻めるダイレクト・プレイが重要になってくる。このダイレクト・プレーは、正確にボールを前方へ動かすことを意味する。連続パスは、シュートのチャンスを作り出すだけで十分である。


これまでの資料によると、5回以上の連続パスでは、得点のチャンスは減少することがわかっている。パスの回数が増えれば増えるほど、シュートチャンスは遠ざかっているのである。勿論、パスが10回以上になっても得点のチャンスが全くなくなることはないが、シュートまでに時間がかかり過ぎる。10回以上の連続パスでは、3%(30回に一回)の得点に過ぎない。

こーなってます。そして、ヒューズは自分が集めた資料を提示しています。その表を引用すると、こうなります。


サッカーのどのレベルにおいても、おおよそ得点の85%、五点のうち四点以上、は五回以下の連続パスから得点されている。得点できた連続パスの回数を分析すると、連続パスの回数が多くなるにつれて得点が少なくなることがわかる。

パスの回数0123456789101112
総得点2025329352617167715222
87%13%

われわれの資料では、トップグループの109試合の1/4以上の得点は、パスが行われない(パス回数が0)状態から記録されている。これらは、セット・プレーから直接、あるいは守備側のリバウンド・ボールから、または攻撃者が守備者のボールを奪うか、それともパスをインターセプトして得点した記録である。連続パスの回数の多い攻撃は、リバウンドやセットプレーに繋がっていくことはあり得ない。我々は、上記0パス得点53点の直前のパスを分析した。この分析では、6回以上のパスは全体のぴったり11%に当たっている。



0パス得点の直前のパスの回数

パスの回数01234567891011121314
「0」パスの総得点531213115512111nonenonenonenone1
←89%11%→


いく人かのコーチは、これらの統計に疑義を持っているし、この調査や統計資料の正当性、またはこれから導き出される結論を認めようとしない。ワールド・サッカーは、ここ30年に誤った戦略の方向に動いてきているのも事実である。ダイレクト・プレーの利点を示す統計資料は、ダイレクト・プレーの分析の章、本書の終わりの章、で扱われている。

と、なっている訳です。


さて、皆さん、これ、どー思います?読んだ感じ、もっともらしいと思えるかもしれませんね。ただね、これね、明らかにおかしいんですよ。特に統計関連。



一応、言っておくと、これ、散布図と相関係数を計算して作ったので載せときますが、



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こうなります。相関係数は糞高く、-0.9です。パスの本数が少なければ少ないほど得点は増える。0パスを除いてもそうなります。



ただね、まず黒字強調した所からいきますが、「勿論、パスが10回以上になっても得点のチャンスが全くなくなることはないが、シュートまでに時間がかかり過ぎる。10回以上の連続パスでは、3%(30回に一回)の得点に過ぎない。」がありますよね?これ、計算してみると、10回以上の連続パスで入った得点を総得点で割った数字なんです。これ、絶対におかしい。



まず、この部分ですけど、10回以上の連続パスの攻撃は30回に1回しか成功しない、ってミスリードに繋がります。これは、10回以上の連続パスで入った得点を総得点で割った数字に過ぎないのに。



ただ、この統計で、問題なのはそこじゃないんです。根本的に、確率の話をするのであれば、絶対につけなければいけない指標、つまり試行回数が抜けているんです。



どういう事かというと、コイン投げで説明しましょう。1円玉、10円玉、100円玉、500円玉を用意します。それぞれをコイン投げします。1円玉を500回、10円玉を100回、100円玉を10回、500円玉を5回、コイントスし、表の出た回数を記録します。



この場合、馬鹿でもわかる事ですが、1円玉が一番多く表が出ます。試行回数がダントツに多いからです。一番少ないのは、100円玉か500円玉になります。試行回数が少ないからです。



このケースで「一円玉が一番多く表が出たので、小銭の中では、一円玉が一番表がでる確率が高い」なんて言い出す奴はいないでしょう。一円玉で一番沢山表がでたのは、単に試行回数が多かったからに過ぎず、コイントスの確率は、基本的にフィフティ・フィフティです。



そして、チャールズ・ヒューズの理論の間違いもそこなんです。



パス回数5回以下のプレーから得点の85%が生まれているとして、そもそも、サッカーの全プレーのうち、パス回数5回以下のプレーって全体の約何割なんだ?という点が抜けている。



実は、ここで、チャールズ・ヒューズに関係している人物として、チャールズ・リープの名前が挙がります。彼も、長い事、サッカーの試合の分析をしてきた人物であり、まあ、彼らの間には、色々なアレもあったみたいなのですが、このあたりはジョナサン・ウィルソンの「サッカー戦術の歴史」を読んでみてください。彼らの間では、「ダイレクトプレーの戦略は、ポゼッションサッカーよりはるかに好ましい」という点で一致していたとヒューズは述べています。



で、この「サッカー戦術の歴史」の中では、リープとヒューズの話が沢山でてくるんですけど、リープの分析の話だと、彼の分析した試合の中で「三回以下のパスによる動きは全体の91.5%」、また、当時ロングボールで有名だったチーム、ワトフォードについて「三回以上のパスの受け渡しからは五回に一回しか得点は生まれない」って話が出てくるわけです。



前者の数字がまず問題でして、これはジョナサン・ウィルソンも指摘してますが、「三回以下のパスによる動きは全体の91.5%」であるならば、「何故、三回以下のパスから生まれるゴールは全体の8割に過ぎないのか?ダイレクトフットボールが有効であるならば、この数字は91.5%より高くならなければならない」って事です。


三回以下のパスによるゴールが多いのは、単にプレーの回数が多いからであって、それが確率的にゴールの可能性が高い攻撃だって事にはならんのです。



そしてもう一つ。当時からロングボールで有名だったチーム、ワトフォードについてリープは、「三回以上のパスの受け渡しからは五回に一回しか得点は生まれない」って分析してるんですけど、これ、「ワトフォードですら三回以上のパスの受け渡しから、ゴールが5回に1回成功するのであれば、3回以上のパスの受け渡しをしたほうが良くないか?」ってなるんです。だって、20%の確率でゴールになる攻撃なんだったら、やらなきゃ損でしょう。



ここで、最初に貼ったヴァレンシアのクロスの話になるんです。



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これね。12本クロスあげて、一回もゴールに結びつかなかった。先日の試合ですけど、マンUは、前半、ほとんど手数をかけずにゴールに結びつく攻撃をしてました。CLのレアル戦と一緒。つまり、どういう事かというと、「3~4回のパスからシュートまで行ける攻撃」です。



具体的に、どういうルートかというと、CB→ボランチ→WG→ドリブルしてクロスって奴です。こういった攻撃ならパス回数3~4回でシュートまでいけますからね。いつも通りです。



こういった攻撃の特徴は、少ないパス本数でシュートまで行けるって事です。そんな攻撃を延々と続けた。で、取れた得点は1点。クロス上げた本数、シュートの数、コーナー取った数、ポゼッション、全部上回ってましたけど、マンUの負けでした。



あのですね。これ、イングランド代表もそうなんですけど、ポゼッションを圧倒的に取ってる試合でも、イングランド代表って、パス3~4本でゴールまで行けるような攻撃しか、ほっとんどしないんです。



その新逆にあるのが、バルサであったり、あるいはブラジル代表になります。バルサにしろ、ブラジル代表にしろ連続パス5回以上の得点が非常に多い。バルサは異次元ですけど、ブラジル代表でも得点の32%が6回以上のパスから生まれています。




なんで、こんな風になるかってーと、それは彼らの攻撃方法と関係していて、彼らはドリブルだけでなく、アタッキング・サードでのコンビネーションを好むんです。



どういう事かというと、イングランド代表やマンUの場合、サイドにボールがでたら、そこからはパスでなくドリブルです。一方、ブラジルとかバルサの場合、そしてガンバやセレッソ、広島なんかもそうですけど、サイドにボールだした後、一回バイタルにボール入れる事が多いんです。そこからコンビネーションを始める。そのため、シュートに行くまでのパスの本数が増える傾向があるんですね。




実はヒューズは、著書の中で「パスかドリブルか迷ったらドリブル」ってプレーを勧めており、パスの本数が増えれば増えるほど得点機会は減るっていうヒューズ理論を、あろうことか、イングランドの育成の場に落とし込んだんです。サイドにパスだして、そこからドリブルで突破してクロス。これなら、3本程度のパスでシュートまで行けますからね。しかも、そういう攻撃のための練習方法まで考え出して普及させてしまった。



一国のFAの育成担当のディレクターが、これほど偏った考えに基づいて、選手育成をやるなんて、あまりに馬鹿げてます。



彼の就任後、イングランド代表がどうなったかは、皆さん、ご存じの通り。



正直、今現在でもイングランド代表を見てると、ヒューズの影響としか思えない部分が多いです。特に攻撃面は。



イングランドには10番タイプがむかっしからいません。ルーニーはその数少ない例外で、これ又、オシムの今回のnumberのインタの引用になりますが、

ルーニーがいますが。

「彼はパスも出せるしゴールも決められる。想像力に溢れ、イングランドでは希有な存在だ。というのもプレミアでその役割を担うのは外国人で、彼らがイングランド代表にはいればすぐにでも世界チャンピオンになれる(笑)」


ってのです。イングランドにはアイデアがないと、オシムはいいますが、これね、ヒューズ理論にのっかって選手育成すれば、絶対そうなるんです。ってのも、少ないパス本数でシュートしようとすると、攻撃パターンは非常に限られるんです。FWにロングボール当ててフリックするか、WGにロングボール当ててそこからドリブル突破してクロス。こんな攻撃に限られる。要するに一昔前のプレミアのサッカーです。



最近、ブログで、海外サイトのマンUフォーラムの翻訳とかあるじゃないですか?あれ読んでると、時々、「創造的な選手がいない」とかいう人をみかけますが、そもそも、マンUって創造的なプレーより、3~4本のパスでゴールまでいけるような直線的な攻撃しかしてないのに、創造的なMFとかいらんでしょ?みたいな話になるですよ。


マンUがイニエスタ取るとかいう飛ばしが出た時に、僕が思ったのは、「マンUでイニエスタが何をするんだ?」って所です。



ヒューズ理論だと、パスは少なければ少ないほど良い訳で、コンビネーション・プレーを主体とするサッカーの狂信者集団のバルサの選手とった所で意味ないでしょって話です。コンビネーション・プレーは、パスの本数が5~6本必要になってくるので、3本以下のパスでフィニッシュに行こうとするヒューズモデルのサッカーに合うわけがない。


モイーズのサッカーみてると、遅攻ですら、明らかに少ない本数のパスでフィニッシュまで行こうとしているので、イニエスタとった所で、使う意味がないでしょって話です。


4本以上のパスを繋ぐ必要があるコンビネーションアタックは、ダイレクト・プレーより得点の確率が低いのか?


で、〆にこの話になるんですよ。


あのですね、いわゆるコンビネーション・プレーは、その性質上、パスの本数が増えます。ワンツーひとつとってもそうです。CBからボランチに繋ぎ、そこからサイドのWGに展開。WGは、一度、ここでバイタルにいるトップ下にボールを当てて、斜めにゴール前に走り込み、トップ下からリターンを受け取り、そこからサイドを抉ってグランダーのクロス。クロスを合わせると5本のパスが必要になります。



ヒューズ理論だと、これは得点確率の低い攻撃です。ただ、アレはそもそも問題があるので、そういう訳じゃ絶対ありません。



でも、実際問題として、どっちのが得点期待値はでかいの?ってのは、全プレーにおけるパス本数、それぞれのゴールの割合、そしてダイレクトプレーの数とゴール数、コンビネーションプレーとゴール数の割合を出して見ないとわかりません。実際、僕はそこまで計算した事ないです。面倒すぎるし。



現実的な話をすると、自分のチームの選手次第って話にはなるんですがね。




今回の話で言いたいことは一つです。




「ゴールはパス三回以下のプレーから生まれるものが80%」ってのはサッカーの世界で、しばしば言われる話です。



ちなみに、Jリーグの場合、


調べてもわからないサッカーのすべて

調べてもわからないサッカーのすべて



って本の中に、2010年度の5本以上パスを繋いで決めたゴールランキングがあります。それで計算すると、5本以上のパスを繋いで決めたゴール数は、J1の場合、全体の18.4%となっています。つまり、4本以下のパスで生まれたゴールは全体の82%を占めるという事になります(PKを含む)。



ですが、「パス4回でゴールに向かうプレーを繰り返せばゴールが増える」と思わないでください。J1では「ゴールはパス4回以下のプレーから生まれるものが80%」になっているのは、単純に「パス4回以下のプレー」の母数のでかさによるものだ、というのは覚えておいてください。試合みてても、J1で一番多いのはパス4回以下のプレーです。感覚的な話をするとプレーの9割は、パス4回以下のプレーです。



そもそも、そういうサッカーやれば点がバカスカ入るなら、今頃イングランドはW杯を4~5個取ってます。ヒューズ理論が破綻してるってのは、その後のイングランド代表の得点が伸びてないこと、バルサみたいなチームが点をバカスカとって、スペイン代表が主要大会で3連覇した事でも明らかです。



コレを勘違いすると、酷い事になります。勿論、ポゼッションしても得点が増える、なんて事は絶対ありません。無意味な横パスだけ繰り返しても意味ないです。同様にダイレクト・プレーを増やせば得点が増えるって訳でもないんです。点取りたいなら、どうすればいいのか?それはサッカーにおける究極の問いであって、今でも、その答えをみんなが探していますが、銀の銃弾は見つかってません。



あと、チャールズ・ヒューズの本ですが、ダイレクトプレーに異常なまでに固執してることを除けば、普通に使える指導書なんで、サッカーのコーチングマニュアル読みたい人は、一読の価値はあるかと思います。



ではでは。

スポーツと観客動員のお話。観客は何に反応するのか。

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さて、皆様、こんにちは。今回も書きかけたまま、放置してたネタをやろうと思います。ネタの内容としては、Jリーグと観客動員の謎です。



じつは、先日、今年度のJリーグの観客動員が発表され、


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http://footballgeist.com/audience より

開幕から20周年となった昨シーズン、J1とJ2のリーグ戦やナビスコカップなどを合わせた全845試合の入場者数は916万5092人でした。これは前の年を41万人余り上回って過去最多だった2009年の957万人に次いで過去2番目に多い入場者となりました。

Jリーグ 厳しい経営続くクラブも


こうなりました。


なんというか、客が減ってるので2ステージやろうぜ!とかいう建前をぶち壊すような話ですが、2013年は観客動員そのものは良かったようです。リーグ戦のみでは830万人、カップ戦込みだと916万人となっており、過去二番目に多い入場者数です。


これで2ステージ制にして動員が減ったら笑えない話です。もっとも、試合数そのものが増える事になるので、それはないとは思いますけどね。



さて、今回のお話なんですが、サッカーの戦術とか、そういう系のお話でなく、Jリーグにおける観客動員のトリビアみたいなお話になります。なので、気楽な気持ちで読んでください。内容的にはネタ的な要素が大量にあります。



それじゃ、本題に行きましょう。



Jリーグにおいて、観客は「チームが強い」とスタジアムに来るのか?


さて、最初のネタはこれです。「チームが勝てば動員は増えるのか?」って話です。最初に結論から言ってしまうと、幾つか、そうでもないクラブがあるっぽいってのがあります。



Jリーグホームゲーム平均入場者数



まず、Jリーグのホームゲーム平均入場者数がみれるサイトを紹介しておきます。これをみれば、各クラブの平均入場者数がみれます。今期は、「観客減ったんで2ステージ制にする」とかいう建前をJリーグ上層部が言ってたのに、終わってみれば観客動員は良かったようで、どうなってんねんって話にはなるんですが、まあ、そういうモンだと割切るしかないでしょう。


これで来期、動員が減ったらどーすんでしょうね。


ま、ここは、とりあえず、今日の話とは関係ないので、サイトの紹介だけしといて、次に進めます。


シカゴカブス、勝たなくても観客動員が良く、市場価値が高いチーム


サッカーの話を読みにきたのに、何で野球の話から入るんだよ!!と思う人がいるかもしれませんが、今回の話をするとき、こいつは避けて通れないんです。まず、この話をしないと始まらない。


というわけなので、まず、最初に本の紹介を。以前もしましたが、もう一回。



オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く

オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く



こいつですね。スポーツの統計に興味がある人は、この本はお薦めです。色々なスポーツの楽しい統計ネタが楽しめます。


で、今回の話も、統計ネタなんですけど、上記の本に「シカゴ・カブスは呪われている」って章があります。シカゴ・カブスといえば、MLB屈指のネタ球団であり、そしてMLBで最も価値が高いと算出されているチームです。

MLB球団市場価値 ベスト5
1.ニューヨーク ヤンキース 15億ドル
2.ニューヨーク メッツ 9億1200万ドル
3.ボストン レッドソックス 8億3300万ドル
4.ロサンゼルス ドジャース 7億2200万ドル
5.シカゴ カブス 7億ドル


MLB大リーグ球団市場価値ランキング


ヤンキースは別格としても、シカゴ・カブスの市場価値の高さはメジャーでも群を抜いており、スタジアムはいつも満員に近く、球団経営は最高クラス、チケットの高さもMLB最高クラスです。



一方で、なんですが、シカゴ・カブスは、メジャーでの成績はぱっとしません。その上、


ビリー・ゴートの呪い


第二次世界大戦が始まる1940年代に入ると、勝率5割を切るシーズンが続いたが、戦争が終わった1945年にはグリムが監督に復帰し、16回目となるリーグ優勝を果たす。しかし、タイガースとのワールドシリーズでは3勝4敗で惜しくも敗れ去った。このシリーズの第4戦では「ビリー・ゴートの呪い(山羊(ヤギ)の呪い)」の元となった出来事が起こっている。これは2勝1敗とカブスがリードして迎えた第4戦。地元バーの店主であるビリー・サイアニスはカブスの熱狂的なファンで、可愛がっていた山羊と共にいつも試合観戦に訪れていた。しかし、この試合に限って球団側は山羊の入場を禁止し、シアニスと山羊は球場から連れ出されてしまった。理由は山羊の臭いだった。これに激怒したシアニスは「2度とここ(リグレー・フィールド)でワールドシリーズが開催されることはないだろう」と言い放って球場を後にしたという。そして皮肉にもシアニスの予言通り、これ以降チームはワールドチャンピオンはおろかリーグ優勝にさえ遠ざかることとなり、長い低迷期を迎えることとなる。



シカゴ・カブス


こんなネタで有名だったりします。有名な「ヤギの呪い」です。



もう一つ、カブスのネタ球団っぷりを際だたせているのが、「スティーブ・バートマン事件」でして、

スティーブ・バートマン事件(Steve Bartman incident)とは、2003年10月14日に行われたMLBナショナルリーグチャンピオンシップシリーズ第6戦の8回表に起こったシカゴ・カブスファンによるファウルフライの捕球妨害事件である。その直後、リーグ優勝まであとアウト5つに迫っていたシカゴ・カブスが大量失点を喫してフロリダ・マーリンズに逆転負けし、翌日の第7戦も敗れてワールドシリーズ進出を逃したことで、この事件はシリーズのターニングポイントと見られるようになった[1]。



スティーブ・バートマン事件

こいつですね。バートマンってカブスファンがファウルフライを捕ろうとして弾き落としてしまい、そこからカブスは1イニング8失点で大逆転負けを喫し、ワールドシリーズへの切符を逃した事件です。


この後の展開も、まさにメジャー屈指のネタ球団っぷりを発揮してまして、wikipediaにもありますが、マリーンズのファンから贈り物が大量に届いたので、バートマンはそれを全部寄付したり、

政界からの反応

イリノイ州知事のロッド・ブラゴジェビッチは試合後、「あの馬鹿から(刑務所入りした後)保釈申請が来たとしても絶対拒絶してやる」と発言した[15]。シカゴ市議会議員のトム・アレンは、バートマンはアラスカ州へ移住すべきだと述べた。一方、バートマンの妨害によって救われた形のフロリダ州知事ジェブ・ブッシュは「彼の安全を守ることを約束する」と述べ、バートマンを亡命者として受け入れる用意があると明かした[16]。


こんなのや

その後

翌日の第7戦にも勝利してナ・リーグ優勝を果たしたフロリダ・マーリンズニューヨーク・ヤンキースとのワールドシリーズを4勝2敗で制し、6年ぶり2度目の世界一に輝いた。


後に、このボールは多くのファンが見守る前で爆破された[14]。


バートマンが座っていた座席である「セクション4、8列、シート113」はリグレー・フィールドの名所の1つになった[17]。


バートマンにはマスコミから多額の報酬で出演オファーが来たが、すべて断った。2012年に発売されたプレイステーション3用ソフトMLB 12: The Showのコマーシャルで、カブス優勝のシーンが実はリアルなゲーム画面で、これを見て涙ぐむ青年のシーンが話題になったが、彼のモデルがバートマンではないかと憶測が流れた。ただし、CM製作者はこれを否定した[2]。


バートマンの風貌がカブスのキャップにヘッドフォン、眼鏡、緑のタートルネック、黒いセーターという特徴的なものであったため、ハロウィーンのコスチュームにもなった[18]。アリゾナ・ダイヤモンドバックスの本拠地チェイス・フィールドに出没するバートマンの偽物は名物化している[19]。


事件後、バートマンは仕事も住所も変え、公の場には一切姿を現していない[3]。2011年、カブスのセオ・エプスタイン球団社長は「全てを水に流して前に進むべきである。私はいつでも彼を暖かく迎え入れる」と述べ、バートマンと公式の場で対面することを望んだ[20]。


こんなのまであります。wikipediaからの引用ですが、どれも有名すぎるエピソードです。




さて、紹介した本の「シカゴ・カブスは呪われている?」って章では、ヤギの呪いやバートマン事件のネタの紹介と共に、シカゴ・カブスは本当に呪われているのか?というネタをやってます。



でも、その話の中で一番面白いのはそこじゃないんです。ネタ的に、最高にクールなのは、シカゴ・カブスの観客動員ネタです



ちと引用しますが、

お金のインセンティブの話に戻すと、1990年から2009年で、MLBのチームの価値はいずれも、勝てば勝つほど高まった―――ただ一チームを除いて。カブスという球団の勝ちは負ければ負けるほど、ちょっと上昇している!なして?カブスがいつものぶざまなプレーを繰り広げているのにファンは球場に来続けたからだ。チケットの販売による売上高は、カブスがいつもよりちょっと負けが込んでるとき、実は増えている。


ってものです。この本にはシカゴ・カブスと、シカゴ・ホワイトソックスのシーズンごとの勝敗、勝率、観客数、収容率などのデータが載っているのですが、この二つは対照的で、カブスのほうは酷い成績でも、1998~2009まで観客数は極めて安定しており、一方でホワイトソックスのほうは順位が観客動員に跳ね返ってます。



何故?こっから先が傑作なんですよ。これも引用しますが、


実は、リグレーカブスの本拠地の球場)の観客数は、カブスの勝率より――――ずっとずっと――――ビールの値段に敏感なのだ。1984年から2009年のビールの値段を調べ、その価格を一般物価水準とその期間のインフレ率で調整し、その実質価格と各年の観客数の関係を調べると、観客数は試合に勝ったとか負けたとかの4倍以上もビール価格に反応している。


それだけじゃない。カブスの球団組織はそれがわかっている。過去20年間の勝率が48.6%だなんてぶざまな成績を出しておきながら、カブスのオーナー達はチケットの値段を1990年以降で67%も引き上げた。これはリーグ平均の44.7%を大きく上回る。それと同時に観客動員はキャパの99%という史上最高を記録している。でもビール価格は、ビールそのものと同じように、まったく変わらなかった。2009年のチーム・マーケティングレポート(TMR)によると、リグレーフィールドでのチケットはMLBで三番目の高さだ。MLBの平均は一人48ドルであり、リグレーを上回るのは、ボストンのフェンウェイパークの50ドルと、新しいヤンキーススタジアムの73ドルだけだ。でも、ギルレーフィールドのビール(小)の値段はリーグで三番目の安さである(売店で一杯5ドル。TMRは、そういう形で価格を報告する)。リグレーより安いのは顧客層の小さいピッツバーグ・パイレーツ(一杯4.75ドル)と中ぐらいのアリゾナ・ダイアモンドバックス(4ドル)だけだ。そして、これらの2チームのチケットの値段はそれぞれ15.39ドルと14.31ドルである。


黒字強調は僕ですが、これ、ホントにケッサクですわ。観客動員が、チームの勝率より、ビールの値段に結びついてるなんてね。



と、ここまでは「流石カブスだ!MLB屈指のネタ球団っぷり!そこにしびれる!あこがれるう!」で済む話なんですが、皆さん、この話を読んで、すぐ「あれ、これ、どっかの島国の球団で、似たようなトコがないかい?」と思いませんか?



そう、阪神タイガースというチームの事です。


阪神タイガースとビール


さて、皆さん、阪神と言えば、


あぁ、阪神タイガース―負ける理由、勝つ理由 (角川oneテーマ21)

あぁ、阪神タイガース―負ける理由、勝つ理由 (角川oneテーマ21)


この本が有名で、「野村くんなあ、うちの球団にとっていちばんありがたいのは、巨人とずっと優勝争いをして、最後の最後に負けて2位になることなんだよ」「優勝を逃せば、選手の給料を上げんでもいいからな」なんて話を現役時代に阪神の営業担当からノムさんが聞いたって話から始まるわけです。


いかにも阪神らしいというか、発想が大阪のあきんどです。



で、なんですけどね。ノムさんは、阪神のこういった体質を問題にしていて、負け犬根性が染みついていたなんて話をしてますが、これもカブスと良く似てます。カブスは負け犬根性が染みついていて、MLBのチャーリー・ブラウン扱いされる事もあります。



でもね。阪神には別の側面もあるんです。それは万年黒字球団であり、日本でもっとも地域密着に成功したプロスポーツチームであり、球場を親会社で所有しており、巨人やソフトバンクみたいに馬鹿高い球場使用料を払わずに済んでいる、という形で、プロスポーツチームの理想的な経営モデルを作り上げているわけですよ。フィールドでは、無様に負け続けてた時代、万年二位だった時代、色々ありますが、観客は強い時も弱い時も、甲子園に来続けているわけです。


ここで疑問が出ますよね。


なんで、ここまで球団経営は上手くやってるのに、阪神の暗黒期、チームは弱いまま放置だったのか?何故、巨人のようになれないのか?、と。



で、ここでね、僕も、ちょいと計算してみたわけですよ。すなわち、阪神の観客動員と勝率、そしてビールの値段との相関性を。



阪神タイガース年度別成績


ビール価格



最近は、この手の数字がネット上に転がっているので、ホントに楽なもんです。

年度試合+-勝率順位観客動員観客動員/試合数ビール価格
5212079401390.663922532.10833333332086
5313074560180.569226284.83076923081633
5413071572140.554736875.28461538461565
5513071572140.554735914.54615384621541
5613079501290.612428926.86153846151493
5713073543190.574829327.16923076921397
5813072580140.553828366.43076923081317
591306259930.512425264.04615384621238
601306462420.507936354.88461538461144
6113060673-70.472445674.36153846151042
6213375553200.5769110187.6541353383875
6314069701-10.496437025.0142857143818
6414080564240.5882110647.6740
651407166350.518239506.7857142857686
6613564665-20.492336995.1777777778654
6713670606100.538537985.8676470588602
6813372583140.553828276.2180451128567
691306859390.5354210327.9384615385529
7013077494280.6111210568.1230769231504
7113057649-70.471157165.5076923077458
7213071563150.559128076.2076923077417
731306459750.5203210618.1615384615408
7413057649-70.4711410848.3384615385337
7513068557130.55283139310.7153846154326
76130724513270.61542136110.4692307692319
77130556312-80.46614139310.7153846154293
7813041809-390.33886139210.7076923077305
791306160910.50414165812.7538461538287
80130546610-120.455169513.0384615385298
811306758590.5363164112.6230769231316
821306557880.53283192814.8307692308300
8313062635-10.4964179913.8384615385314
8413053698-160.43444193414.8769230769333
8513074497250.60161260220.0153846154325
8613060601000.53236018.1538461538321
8713041836-420.33066212916.3769230769316
8813051772-260.39846206915.9153846154305
8913054751-210.41865184914.2230769231290
9013052780-260.46189414.5692307692292
9113048820-340.36926182014280
921326763240.51542285321.6136363636274
9313263672-40.48464276820.9696969697273
9413062680-60.47694270420.8280
9513046840-380.35386207015.9230769231190
9613054760-220.41546186014.3076923077190
9713662731-110.45935227016.6911764706189
9813552830-310.38526198014.6666666667192
9913555800-250.40746260119.2666666667194
013657781-210.42226241317.7426470588186
114057803-230.41616207014.7857142857190
214066704-40.48534268019.1428571429191
314087512360.63041330023.5714285714193
413866702-40.48534352325.5289855072191

表作るとこうなります。観客動員については、実数公表は随分後の事ですし、正確じゃないかもしれません。あと、ビールの値段は消費支出を元に現在の価値に換算した価格となってます。



で、こいつを使って、簡単に阪神の勝率と動員、ビールの値段と動員の散布図を作ってみましょう。



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これが、阪神の1952~2004までの勝率と動員の散布図です。相関係数は-0.36です。なんと負の相関です。ただ、相関係数は低いので、「勝率が低いほど観客動員が良くなる」ってわけでもないです。


ケッサクなのは次。



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まさにキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!である。



こいつは、阪神の1952~2004までのビールの価格と動員の散布図です。相関係数は-0.71。負の相関性がでました。こんな、いい数字が出るとは思わなかったので、散布図作って、R2を出して、画面の前でガッツポーズしてしまったのは言うまでもない。これだけ、いい数字が出ることは滅多にないぜ!流石、阪神さんやでえ・・・・!



カブスと阪神の共通点は、ビールの値段と観客動員に強めの相関性が認められるってトコです。



そして、それだけじゃない。カブスにしろ阪神にしろ、フロントはそれを知ってるって事。



カブスは本拠地のリグレーでチケット高め、ビールの値段を安く設定してるって話をしましたよね?これ、阪神も同じなんです。甲子園の生ビールの値段は600円。全球団で一番安く、そしてチケットでは、プロ野球だと、自由席は1500円~800円程度なんですけど、阪神は1900程度に設定されてて割高なんです。



こうやってみてみると、阪神のフロントは、野球の現場はわかってないかもしれないけど、いわゆる「トラキチ」と呼ばれる自分の所の顧客層については、よく知ってるって事なんです。チームの勝率をあげるより、生ビールの半額券配るか、生ビール半額デーやった方が、よっぽど集客力があるって事です。



ま、ここまでは野球のネタなんですけどね。ただね、実は、ビールの値段に強く反応してるチームがJリーグにもあるんですわ。




浦和レッズと観客動員、レッズサポの謎の生態に迫る


さて、こっからがJリーグネタです。Jリーグでネタチームというと、西のガンバ、東のレッズという感じになります。理由は、Jリーグ初期に、どっちのチームも「Jリーグのお荷物」と揶揄されるほどに弱く、浦和に至っては、1993年シーズン終了後に当時監督が「3年間分負けた」とコメントしたり、リーグ戦でも喜びすぎて同点にされたり、リフティングで点を入れられるなど、それはもうネタくさい失点の仕方を繰り返したせいでもあります。その弱さは漫画などでもネタにされており、とにかく、まあ、ネタに困らないチームでありました。



しかし、こと、観客動員については、ガンバとレッズは対照的で、Jリーグバブルがはじけた後、ガンバが動員で低迷したのに対して、レッズは常に入場者数でリーグトップをひた走り続けておりました。ちなみに、順位は1993~1999年まで年間順位は中位から下位でしたが、Jリーグホームゲーム平均入場者数では、1996年から1999年まで常にトップです。


この「弱い癖に観客動員は常にトップ」というのが、初期浦和レッズの特徴でして、「なんでチームは弱いのに、あんなに客が入るんだ?」というのは、Jリーグの謎の一つでした。



まあ、そんな訳でして、古参レッズサポーターってのはチームをひたすら愛し、弱い時でも応援しつづける人達ってイメージがあるんですがね。




ただ、ここで、浦和レッズの観客動員と勝率、浦和レッズの観客動員とビールの値段で散布図作ってみましょう。

年度1999199819971996199519941993相関係数
平均観客動員21276227062050424329195601847511459
年間順位15610641210-0.2478219417
ビールの値段194192189190190280273-0.7632474081


こーなりました。



まさにキタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!である。本日二度目。観客動員と勝率の相関係数は-0.2程度。負の相関がでてますが、弱い相関性なので、それはどうでもいい。


しかし、ビールの値段との相関性が-0.76とか、これもう最高。浦和さんなら、やってくれると信じてました・・・!画面の前で思わずガッツポーズ。10年来の謎が解けた気分です。



散布図も作ったので載せときますね。


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これが1993~1999年における浦和のホームゲーム平均入場者数とビールの値段の散布図です。相関係数が-0.76、R2が0.58、イイヨイイヨ-。


これだけ見ると、ビールの値段が安いと浦和のホームゲームの入場者が伸びる計算がたちます。こんだけビールの値段に反応してくれるなら、話は簡単で、ビールのタダ券とチケット抱き合わせれば、入場者が伸びるハズ。


初期浦和のフロントって、ビールのタダ券でも配って集客してたんじゃないですかね?食いつく可能性が馬鹿ッ高い。


でもって、浦和さんのフロントが、阪神のフロントじゃないですけど、補強とか適当だったり、チームを弱いまま放置してたのも、ある意味で理解できます。チームの勝率あげるのに金使うより、ビールのタダ券でも配った方が、集客力があるって事なんですからね。


ただ、そーいう牧歌的な世界は1999年で終わりを告げます。J1に降格制度が導入され、浦和は1999年にJ2に降格。そして、2000年のJ2では流石にビールだけでは無理だった。ホームゲームの平均入場者数は16,923に落ち込み、ビールだけではJ2で人呼べないって事は明らかになりました。



でね。


浦和サポーターって、近年、ちょっと違う傾向が出てるんです。これも表にしときますが、

年度200520062007200820092010201120122013相関係数
観客動員393574557346667476094421039941339103663437100
勝ち点5972705352483655580.6072121844
ビール価格1931951921972001991971920.0599320652


2005年以降、埼スタが出来てから、傾向的に明白になってきてるんですけど、勝ち点と観客動員に正の相関性が認められるようになってきてるんです。1999年以前と全く逆。+0.6程度の相関係数がでてます。でもって、ビールの値段に観客動員が全く反応しなくなった。もっとも、近年、ビールの値段がほとんど下がらなくなったって影響もあるんですがね。



浦和レッズサポーターという部族については、近年、その傾向に変化があらわれており、ビールの値段には反応せず、浦和の勝ち点のほうに反応するようになっているってのがあります。



これ、金銭的なインセンティブでいうと、初期の浦和フロントってのは、「勝ちたい」と思う金銭的インセンティブがあんまりありませんでした。ってのも、ビールの半額チケットでも配っておけば人が入るような状態だったからです。勝率上げても、観客動員にあんまり影響がなかった。でも、最近の浦和は、勝ち点稼がないと客が減る傾向があり(特に旧ペトロビッチ時代とかね)、以前と比べて、ずっと強く「勝ちたい」っていう金銭的インセンティブがあるようになってるんです。



ペトロビッチ監督は、浦和を滅茶苦茶にしてましたが、一つだけ功績があります。それは、浦和のフロントに「勝たないと観客動員が減る」っていう冷たい現実を思い知らせたって事です。




一方、FC東京サポも、食いしん坊で有名ですが、面白い数値はでませんでした。実は、FC東京については、相当期待していたのですが、数値は期待外れでした。各地のスタに出向いていっては、美味しいものを食い尽くすので有名なFC東京サポーターですが、ビールの値段やチームの勝ち点の上下と、観客動員の間に強い相関性はありませんでした。




まあ、今日はこのあたりで。


言いたかったのは、「勝てば観客動員が良くなる」というのは必ずしも正しくないチームがある、かつてはあった、ってこってす。


ではでは。

本田のミランデビュー戦とミランの監督解任のお話

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さて、皆さん、こんにちは。先日、とうとう本田がミランでデビュー戦を飾りましたので、本日はミランのお話でもしようかと思います。もっとも、試合内容については、そんなに詳しくはやりません。なんでかってーと、ミランが、試合後、監督のアッレグリの首を飛ばしたからででして、「移籍して一戦したら監督が替わっていた」というイタリア全開な展開です。



そんな訳ですんで、試合内容云々の前に、最近のミランってクラブの問題点とかを、さらっとまとめときたいと思います。


僕個人としての感想なんですが、アッレグリミランで本田がプレーするのは心配だったので、割と解任を指示してます。なんで、アッレグリがダメなのかってーと、理由は単純で、「アッレグリミラン、怪我人大杉」だからです。正直いって、半月板やっちゃってる本田みたいな選手を、怪我人続出させてる監督の下でプレーさせるのはホント勘弁して欲しかったので、解任自体は本田にとってはプラスです。W杯前に怪我させられたら、たまったモンじゃないし。ただ、後任がセードルフとかタソッティとかインザーギとかのOBの名前ばっかり上がるのは勘弁してほしいのですが。





アッレグリミラン、何故、怪我人がこうも多かったのか?


で、最初の話になるんですけど、「何でミランは怪我人がこんな多いの?」って話になるわけです。これについては、今に始まった訳じゃなくて、



ミランとユヴェントス、圧倒的な負傷者の差


こっちにガゼッタの2012年の記事がありますが、

ミランは昨シーズン、第37戦でインテルとのダービーを落としてスクデットセリエA優勝)を逃した。しかし、ミランの医務室はどうなっていたか? 今シーズンの第2節まで考慮して、ミランはのべ319選手が公式戦を欠場している。ベンチなしで、29チームがつくれる数だ。ミランは昨シーズンの38試合でのべ307選手が欠場した。1試合平均8.07人だ。レオナルド体制のときから不安はあったが、マッシミリアーノ・アッレグリ監督になってから、その数は増えている。


イタリア王者になったユヴェントスは、リーグ戦を通しての欠場者がのべ44人。ライバルのミランは307人だ。両チームは公式戦の数が8つ違う(ユヴェントスはリーグ戦とコッパ・イタリアで43試合、ミランはリーグ戦とコッパ・イタリアチャンピオンズリーグで51試合)。しかし、両チームの違いは明白ではないだろうか。

ってのがあります。これ、アッレグリが監督になってから、如何にミランで怪我人が増加したのかって話をする時、数字として実感してもらうのにもってこいの記事なんですけど、とにかくアッレグリが監督になってからミランは怪我人が多くて、年間通じてベスメン組めた時期のほうが少ない、というか、ベスメン組めた事がないって状態でした。


で、その怪我の内容なんですけど、サッカーは接触プレーが多いので、打撲とか捻挫系の怪我が出るのはしょうがないのですが、アッレグリ体勢になってから、特に顕著だったのが、筋肉系の故障だったりします。今シーズンで言えば、「太ももの筋肉の負傷」で、カカ、バロテッリ、ビルサ、シルベストレ、アバーテモントリーボが戦線離脱してます。判を押したように、みんな太ももの筋肉の故障です



サッカーのフィジカルコンディショニングにおいて、現在、筋肉系の故障の予防は最も重要なテーマになっており、ミランみたいなチームが筋肉系の故障が続出するってのは、ちょっとおかしな話です。ミランラボなんていう、専門のコンディショニングチームをもっているのに。




この原因は何か?まあ、わかってたら、誰も苦労はないんで、推測しか出来ないんですけど、タイムリーな事に、WSDの最新号、No,403で、ミランの話が載ってたので、それを紹介しときます。WSDが巻末で連載してる「football こころとからだ研究所」からです。


ロベルト・ロッシミランは昨シーズンから、故障者の多さが際だっていたよね。「ミランラボ」を含めたメディカル部門の責任が問われて、主任フィジカルコーチを長年務めてきたダニエレ・トニャッチーニが更迭されたのは、それでだろう。後任のフィジカルコーチに、アッレグリ監督の息がかかったシモーネ・フォレッティが就任した今シーズンは、フィジカルトレーニングのメソッドを見直すという話だった。


プレシーズンにそのフォレッティのインタビューを読んで、私は目を疑ったよ。今シーズンはCLプレーオフがあるから、例年よりも2週間はチームの仕上がりを早める必要がある。だから、インターバル走など持久力アップのための有酸素運動を減らして、その分インテンシティを高めるとコメントしていた。驚いたのは、インターバル走の具体的なやり方だ。700メートルを二分半で走っていた以前のやり方を、620メートルを2分で走るように変えると言うんだ。心肺機能を負荷に慣れさせて、向上させるこの手のトレーニングは身体が適応するのに時間がかかるから、ある一定期間は繰り返さないとならない。

これですね。



これ、今回のWSDでもロッシが言ってますが、コンディショニングの方法としては、かなりトラディショナルな方法です。どういう事かというと、開幕時のコンディションは多少低くてもいいので高い負荷の持久系、パワー系のトレーニングをやっておいて、11~12月に最初のピークを作り、冬の中断期間にミニキャンプを張って負荷の多い持久系のトレーニングをして4~5月に再度ピークを作ろうとするやり方です。


以前も、ちょっとブログで扱いましたが、これ系のトレーニングは、最近、主流から外れてきており、主流になってるのが、モウリーニョが採用しているようなやり方になります。これは、ネットでみれますが、


3. フィジカルサーキット無し、ジムトレーニング無し、グランド周りのランニング無し

「ピアニストが巨匠の作品に取りかかる前に、ピアノの周りを走り回っている姿など見た事が無いだろう?同様に私のメソッドでも選手にグランドをぐるぐる走らせることは無い。」

またモウリーニョと彼の右腕とも言える、フィジカルトレーナーのルイ・ファリアにとってはフィットネスジムとは怪我のリハビリのための施設でしかない。



4. ボールは絶対必要だ。練習時間は最長90分


「私のトレーニングは決して長くはない。その内容はダイナミックであり、かつとても効率が良いものだ。私の選手たちにはボールコントロールをすることを特に好きになって欲しい。そしてボールを相手から取った後に何をするべきかを学んで欲しい。

3時間ものトレーニングなど、選手を飽きさせるだけだ。そんなことをしていたら、すぐに選手はボールが好きでなくなってしまう。」



5. シーズン中にコンディションのピークの時期は無い

「週ごとのトレーニングサイクルは純粋に次の試合をフォーカスしデザインしている。私はシーズンのある1部分、例えば12月や5月などにピークを迎えるようなプラン作りはしないし、強豪チームとの試合のために特別に調子を上げるようなこともない。」



モウリーニョ、10の言葉



こーいう奴です。モウリーニョって監督は戦術面では特に新しい事はやってませんが、フィジカルトレーニング、フィジカルコンディショニングのメソッドについては、最先端のやり方を採用しています。トラディショナルなコンディショニング方法は採用しておらず、短時間、高負荷、シーズン中のある時期にピークをもってくるようなコンディショニングはしないって所に特徴があります。


モウリーニョのフィジカルトレーニングの特徴は、サイクルが一ヶ月、三ヶ月単位の陸上競技的なモノではなく、一週間単位でサイクルを回す所に特徴がありまして、週末の試合にフォーカスしてサイクルを回していきます。


基本的に、2000年代に入る前、ヨーロッパのサッカーチームはプロからアマまで、シーズン前には走り込みと戦術練習、パワー系のトレーニングやるのが普通だったんですが、モウリーニョみたいな監督が結果を出し始めている事から、サッカーの世界で、フィジカルコンディショニングの様相が変わってきているってのがあります。



アマだと高校サッカーや、プロだとマガト系の監督とか、Jリーグだとサガン鳥栖は二部練、三部練が当たり前って所もありますが、そーゆー「高頻度」な練習とは対局にある考え方です。




いくつか、「低頻度」なトレーニングで記録を伸ばした人達の記事とかサイトを紹介しておきますが、



ウェイトトレーニングの基礎知識



"公務員ランナー"川内優輝のマネジメント力



メアリー・ケイン、トレーニング情報



三つほど、記事を紹介しておきます。最初の記事はパワーリフター三上さんの記事でして、三上さんのケースだと学生時代、毎日ウェイトをやっていたが、記録が伸びなかった。で、自分には才能がないのかと思ってたんだけど、社会人になってから、トレーニング頻度を週1回とし、使用重量を大幅に減らし、毎週少しずつ重量を増やすようにしたら、記録が伸び始めた。その後、サイクルトレーニングを取り入れた所、順調に記録が伸びるようになったって話があります。


これ、ウェートをやる人なら、知っておいたほうがいい話で、やればいいってモンでもないんですね。


で、二番目のは公務員ランナーで有名な川内さんの記事ですけど、

少ない練習量で日本トップクラスのマラソンランナーになった川内を、“天才タイプ”だと思う人がいるかもしれないが、川内自身は「才能なんてなかった」と言う。実際、埼玉県の強豪校・春日部東高校時代は故障に悩まされたこともあり、県大会でも上位に入ることができなかった。そのため、箱根駅伝の常連校をあきらめ、陸上では無名の学習院大学に進学した。


普通なら、その時点で競技への“本気度”が徐々に低下していくが、川内は違っていた。大学で出会った新たな練習スタイルが人生を変える
ことになる。


高校時代は朝練習を行い、ポイント練習も週に3~4回あったという。しかし、学習院大では朝練習がなく、ポイント練習も週に2回だけだった。津田誠一監督からは「(強豪校の練習と)競うことはない。頑張るな、頑張るな」と声をかけられて、川内は練習を継続してきた。トレーニングは「速く走る」ことではなく、「一定ペースで押していく」ことに重点が置かれていた。


「今、思うと、大学で強くなる方法に気づいたことが大きかったですね。大学での練習は高校時代と正反対だったので、当初はなかなか信じることができませんでした。でも、少ない練習量で高校時代の記録を超えたことで、この練習は正しいと思うようになったのです。

こういう奴ですね。内容的には三上さんの奴と同じような感じなんですが、高校時代、高頻度な練習を繰り返していたけど、記録は伸びず怪我がちだった。ところが、大学にはいって、朝練無しでポイント練習が週に2回だけ、っていう少ない練習量で高校時代の記録を超えれた事で、大学には入って始めた練習の有用性を確信したって奴です。社会人になっても一部練しかしてないようです。



三つ目の奴は、5000mで全米高校記録をもつ、メアリー・ケインの奴なんですけど、最大週間走行距離は現時点で60マイルって所がポイント。これ、メアリー・ケインより走ってる選手は、日本の高校でも沢山いるでしょう。(まあ、日本の部活陸上走りすぎ、ってのもあるんですが。)




サッカーのトレーニングは、それぞれの監督がそれぞれのメソッドを持っているので、自由にやればいいことなんですが、トレーニングメソッドについては、選手や大会方式に合わせて調整する必要があって、「これがベスト」ってのは、今の所、特にありません。




それで、なんですけど、サッカーにおいて、水曜日にCL戦って週末にリーグ戦を戦うビッグクラブは、トラディショナルなフィジカルコンディショニングは出来ないってのがある訳です



つーか、根本的に無理です。週に二回、最大負荷で試合でプレーする以上、


日曜:試合
月曜:回復トレーニング
火曜:戦術練習と移動
水曜:試合
木曜:回復トレーニング
金曜:フィジカルトレーニング、戦術練習、技術練習
土曜:試合に向けた戦術練習と移動



これ以外に方法がない。チームの主要メンバーは、フィジカルトレーニングをやれるのは金曜のみで、しかも二日後に試合があるから、負荷の高いトレーニングは出来ません。インターバル走だったり、ジムでの負荷の高い筋力トレーニングは試合の二日前にやっても意味ないし。



こーなると、モウリーニョがやってるみたいに、サイクルを一週間で回すほうが良いってのはあるわけです。週二回、試合がある場合、長いサイクルで練習を回すのは事実上、無理なんで。



ここまで、スポーツの世界の練習メソッドをいくつか紹介してきた訳ですがね。



ミランに話を戻すと、今年の成績の酷さについては、最大の原因として、「フィジカルコンディショニングの失敗」が上げられます。筋肉系の故障からの怪我人が多すぎです。



これはフィジカルコンディショニングに失敗したチームが陥る状態で、この部分については、はっきりいって、監督とフィジコの責任です。どーいうトレーニングやらせてたんだって話です。



そういう訳ですので、今回の監督解任については、僕は本田にとっては、ある意味で良かったと思ってます。もっとも、後任の監督が、アッレグリより酷いレベルで怪我人続出させる可能性もある訳ですが・・・・・



セリエAには色々と問題があるわけですが、ピッチ上に話を絞ると、やたらとビッグクラブが野戦病院化するってのがあります。ユーヴェ、ミランインテルと、何でか野戦病院化しやすく、フィジカルトレーニングのメソッドを見直した方がいいんじゃ?ってのがある訳です。ザックのフィジコも、代表でやたらと怪我人だしてますけど、僕はどーにもイタリア人フィジコが好きになれません。それはそーいう理由です。怪我の予防がさっぱり出来てねぇ。



セリエAのビッグクラブは、落ち目とはいえ、いい選手いっぱいいます。でも、怪我人続出になって、戦力にならないってケースがあまりに多いんです。



今年はWカップがあるんで、長友と本田には怪我して欲しくないわけですよ。彼らがセリエ野戦病院のお世話にならない事を祈ってます。



でもって、本田のデビュー戦について、なんですけど


ちと、フィジカルコンディショニングの話が長くなりすぎたので、マッチレポートは軽めにしときます。



この試合については、ミランが簡単にサッスオーロから二点先制しました。ここまでは良かった。問題はその後。


https://www.youtube.com/watch?v=3LceDDN07hk


つべに動画あがってたんで、URL張っときます。


とにかく、ミランの最初の失点が酷くて、これ、キャプもつけときますけど、


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こーいう流れでした。サッスオーロとオッサスーロ間違えました。何が酷いって、人数揃ってるのに綺麗にゴール決められている所です。


何で、こんな事が起きたのかって話になるんですがね。



基本的に4312ってフォメは守備では、デフォで3の所の両脇が空いてます。だから、そこで起点を作られやすいって欠点があります。コンフェデのイタリア対日本で、散々、香川にあそこで起点つくられてました。で、そこで起点作られると、ボランチが一枚、サイドに出てくるんですけど、その時、中央で相手チームのボランチをフリーにしてしまいやすいんです。


この時のミランがまさにそれで、サッスオーロボランチをフリーにしてしまってます。コンフェデのイタリア戦で、散々、遠藤と長谷部がフリーで前むいてボール捌けたのも同じ理屈です。


こうなんない為には、トップ下やFWの守備参加が必要不可欠なんですけど、カカもバロテッリも、申し訳程度の守備しかしておらず、サッスオーロボランチに簡単に前向かれて、そこからラストパス通されてるんです。


根本的に、ミランのフロント、FWに守備やらない奴ばっかり取りすぎなんです。バロテッリ、カカ、ロビーニョと、守備が微妙なのばっかです。カカは、それなりにはやってくれてましたけど、ロビーニョバロテッリの守備の時の怠慢は目を覆いたくなるレベルでして、あんな守備しかしないようじゃ、サッスオーロボランチは自由にボールを配球出来る訳で、ボランチに自由に配球されたらボコられるに決まってる。


一点目と四点目は、どっちも似たようなやられ方でして、3の位置の両脇にボール当ててからボランチに展開、そこから崩しにかかるっていう4312対策の基本をモロにやられた格好です。



この試合、ターニングポイントになったのは、守備面では、アッレグリが後半10分で4312やめて、パッツィーニモントリーボを入れて、442に切り替えた所で、これで、前半から延々と問題になってた4312の3の所の両脇使われてやられるってパターンがなくなりました。


ただ、ロビーニョが右SHに入ったんですけど、すぐに守備サボりはじめまして、アッレグリは、ロビーニョが守備さぼってるのみて、そこで本田を入れる決断をします。


本田が入ってからは、すぐ様相が変わりました。ロビーニョみたいに盛大に守備サボらないし、真面目にボール追うし、攻守の切り替えの時もすぐ戻ってきてくれるので、守備は断然安定しました。


また、本田が入って右サイドの高い位置で起点が作れるようなり、オッサスーロの左サイドを押し込むことが出来るようになったので、オッサスーロの左を封じる事もできるようになったので、その後はミランペースでした。ただ、残念なことに本田には何度かチャンスが来たんですが、決められず。



本田のデビュー戦、ミラン相手に4点とったベラルディに全部もってかれた感じもしますが、本田の出来自体は非常に良かったです。



真面目な話、今回の試合見る限り、本田は絶対にスタメン取れます。今のロビーニョなら、本田のほうが遙かに役に立ちます。右サイドで起点作れるし、守備も真面目にやってくれるので。(ロビーニョは右サイドで起点作ることすらほとんど出来てなかった)



正直、今のミランは、後半の442で戦った方がいいです。カカを左SH,本田が右SHにして、バロテッリパッツィーニで2トップ組ませてね。もっとも、オーナー命令で4312か4321やる可能性あるわけですが、それだと今のミランは守りきれませんわ。


やるとしても、それは本田が相当守備やらないといけなくなります。本田はスタメンは取れるでしょうけど、その後が大変です。まあ、このあたりはわかりきってた話なんですけど、守備しないFWばっかりフロントが集めてくるので、トップ下がその尻ぬぐいせざるを得ないチームなんです。今のミランのDFでは、カカと本田が守備頑張らないと守れないです。



あと、残念な話ですが、ミランはもうCL無理です。三位のナポリと勝ち点差20ついてます。残り試合数19試合で、勝ち点差20ってのは、挽回不可能な数字です。試合数を勝ち点差が上回ったら、逆転はほぼ不可能です。


それに加えて、フィジカルコンディションの調整にミランは失敗してるっぽいので、EL圏内への追い上げも期待できません。怪我人の多さが、調整の失敗を雄弁に物語ってます。



なんで、正直、本田は怪我せず、W杯まで過ごしてくれたらいいかな、と。CLも出られないしね・・・・



今日はこのあたりで。それでは。

2014年プレミアリーグ後半戦、マンチェスターユナイテッド対チェルシーのレビュー 「モイーズアウト」

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さて、皆さん、こんにちは。本日は、先日行われたプレミアリーグ第22節、マンチェスターユナイテッドチェルシーのレビューでもしたいと思います。ちなみに、香川は出てません。ベンチにはいましたが、ウォームアップすらしませんでした。試合は、というと、エトーさんがハットトリック決めて、チェルシーが3-1で勝ってます。


で、なんですが、この試合、ホントに見ててイライラしっぱなしの試合でして、「モイーズアウト!」と叫びながら窓から飛び出したくなるレベルの試合でした。ホントーに酷い。


どういう風に酷いのかって話になるんですが、今日は、そんなお話です。


試合のレビューに入る前にマンチェスターユナイテッドの守備の問題点について


さて、レビューに入る前に、ユナイテッドの守備の問題点について、簡単にまとめておきます。このチーム、守備面で糞みたいな事やってまして、「何でこんな守備やってんだ?」と、プレシーズンマッチマリノスセレッソと試合した頃から不思議でしょうがありませんでした。


まあ、どういう事かってーと、セレッソマンチェスターユナイテッドの試合の


http://www.youtube.com/watch?v=sircJyVALHA


ハイライト動画へのリンク張っときますけどね。


これ、キャプやるのも面倒なので、どこがアホかってーと、セレッソの最初の得点の所ですけど


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これね。失点自体は、DFのミスなんですけど、問題なのは、ここでユナイテッドのMF4人が異様に横に間延びしているって所なんです。MFの間隔が5メートル近く離れており、こんだけスペース与えてしまうとか、普通はありえません。



なんで簡単にセレッソの選手に縦パスいれられているんです。この試合、セレッソが何度もバイタル使ってコンビネーションやってましたけど、その原因が、この異様なスペースです。



ついでに図でやっときますけど、モイーズのユナイテッドは、4411か442でブロック作るんですけど、その時に、


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こんな感じで、SHとボランチの間に異様なスペースが生まれるチームに仕上がってまして、「なんでこんな守備やってんの?川崎じゃん。」ってのが正直な感想です。川崎フロンターレってチームも似たような問題抱えてまして、あそこのザル守備の原因がコレです。



で、なんですけど、このMF4人が横に間延びしやすいって欠点が、プレシーズンから、ずーっと続いてまして、こないだのスォンジー戦だと、開始4分の時点で



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こんな感じで、横に間延びして、ボランチとSHの間に異様なスペースが出来ているって状態でした。


これね、年明けからスウォンジーとやる度に、あそこを集中的に狙われてまして、何度、スォンジーのアタッカーに、このスペース使われて崩されかけたか、数えるのも嫌になるほどです。「バッカじゃねーの?」と何度も思ってました。



スウォンジーとやる時、ユナイテッドの方はそんな失点しまくりって程じゃありません。ただ、こういう守備やってると、強豪相手には絶対に守りきれません。バイタル使われて絶対にやられます。



チェルシー戦の前に僕としては「モウリーニョがあそこ見逃す訳ねーし、どうすんだろうなあ」と思ってた訳です。


チェルシーマンチェスターユナイテッド、ユナイテッドのゲームプランについて


さて、こっからが本題。この試合なんですが、スタメンは、


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こうなってました。どっちも4231でミラーマッチです。ユナイテッドはトップ下にヤヌザイ、ワントップにウェルベックです。



で、なんですが、この試合、前半の入りはユナイテッドが優勢でした。理由は、ユナイテッドがハイプレスかけてきたからで、これでチェルシーがポゼッションが上手くいかなくなり、ユナイテッドが前半10分あたりまではペース握ってました。



ただ、前半16分、恐れていた自体が発生します。


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流れとしては、こういう感じでした。これね、ユナイテッドみたいに、SHとボランチの間がスッカスカなチームに対する攻めの定石です。SHとボランチの間にボールを入れて前を向けたら、軽くサイドにドリブル入れて、相手のボランチを一枚、サイドに釣り出す。で、次にSBとCBの間のスペースにトップ下かボランチが走り込む。これで相手チームのボランチを最終ラインに吸収させてバイタルに誰もいない状況を作ってから、ボールホルダーがバイタルにカットインしてフィニッシュ。



これねえ、見てて「あー、やっぱりやられた」って思ったシーンでして、根本的に、ユナイテッドってチーム、守備で横に間延びしすぎなんです。アホじゃねーかと思うことが多く、モウリーニョが舌なめずりして狙ってくるのは目に見えてました。ココ、ホントにチェルシー基本的な事しかしてないんですが、それであっさり先制されてます。



で、ユナイテッドの二失点目も守備が酷くて、こっちは単にDFの問題なんですが、





こんな具合です。おかしいだろ、常識的に考えて・・・という奴なんですが、今のユナイテッドの守備なんてこんなモンです。



でね。



怒りが頂点に達したのは3失点目なんですが、セットプレーからです。これはキャプでやっときましょう。

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これですわ。見てて、マジ怒りが頂点に達したんですけど、「こんな簡単にマーク外されてどーするんだ!?アホなのか?マンツーマンでやるなら、スクリーンで簡単にマークはずされてんじゃねぇよ!!!」と。マンツーマン相手なら、相手チームがスクリーンかけてくるのは当たり前な訳で、こんな簡単にマーク外されてるようじゃ守れるわけねぇだろうと。別にチェルシーサイドは、難しいプレーしてる訳じゃないんです。ホント、基本的なプレーをしてるだけなんですが、それであっさりマーク外されてる。


これね、プレシーズンマッチマリノス戦でも、セットプレーから、ユナイテッドはあっさり失点してましたけど、セットプレーの守備練習、マジどうなってるの?と。



これ、今年のJ1で守備がザルで有名だった川崎とクリソツです。もっとも川崎のほうはセットプレーの時、ゾーンで守るんですけど、ゾーンの守備の欠点をちょっと突かれただけで失点しました。ユナイテッドのほうはマンツーマンですけど、マンツーマンで守る時の欠点をちょっと突かれただけで失点。もうね、アホかと。



あのですね、川崎のほうは守備はザルですけど、とりあえず点だけは取るチームでした。それに見てて面白いサッカーやってます。ただ、ユナイテッドは守備がザルな上に、みててつまらないサッカーしてるので、もう救いようがありません。



監督に差がありすぎる!


で、こっからはチェルシーのほうの話になります。今回は短めにすませたいので、詳しくはやりませんが、この日のチェルシーですけど、守備面では明確なほどの穴がありました。どこかってーと、



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これ、前半8分のユナイテッドの攻撃の場面ですけど、チェルシーのバイタルスカスカでしょ?バイタルにダビド・ルイスしかおらず、両脇にぽっかりスペースできてる。この後、ユナイテッドはラファエルとヴァレンシアでワンツーして、その後、ラファエルからバイタルでフリーになってたヤヌザイにパスだす事に成功してます。



この日のチェルシーなんですけど、バイタルにかなりスペースがある守り方してました。どういう事かってーと、ユナイテッドと同じで、ボランチとWGの間がスッカスカなんです。なんで、普通に考えたら、バイタル使って崩せばいいだけなんですよ。



ところが、これが又、モイーズサッカーなんですけど、サイドのWGにボールだしてハイクロスハイクロスハイクロス!!って事ばっかりやってまして、「馬鹿じゃねぇの?」と。



中央にスペースがある守り方を相手がしてるんだから、中央にいきゃいいのに、なんでサイドからハイクロス上げるんだよと。チェルシーのDFは高さがあって、ハイクロスあげた所で望み薄だろうと。もっとも時々、ヤヌザイとかウェルベックが頑張ってましたけどね。


それから、ラファエルのオーバーラップに対して、チェルシーのWGのアザールがついてこない時があったので、普通に考えたら、ラファエルのオーバーラップ使うか、ラファエルをオーバーラップさせて、サイドにダビド・ルイスを引っ張り出し、中央をワンボランチにして、その両脇を使うって攻撃をすれば、点取れただろって話になるんですけど・・・・そーいうの一切やんねぇし


あのですね、モウリーニョがそれを警戒していたのは間違いないんです。


ってのも、3点とってから、チェルシーはどんどん守備的な選手追加していって、最後は完全にバイタル封鎖してました。最初にあった穴は、モウリーニョの交代策で完全に塞がれてしまい、ユナイテッドは後半70分あたりで攻め手をほとんど失いました。


多分、モイーズが中央狙いに切り替えたら、モウリーニョは即対応できるようにしてたんでしょう。ユナイテッドはサイドからハイクロス上げる攻撃しか、攻撃パターンをほとんど持ってないので、バイタルにスペースがあっても問題ない、ってそろばん弾いたとしか思えないやり方です。


結局ですけど、監督に差がありすぎます。


この日のモウリーニョですけど、まんう相手はイージーだったと思いますよ。一番嫌だったのは、ボランチとWGの間のスペース使われる事だったでしょうけど、ユナイテッドがたまーにあそこにボール入れる事に成功しても、結局サイドに振ってドリブルからクロスみたいな攻撃ばっかするし、それだけならチェルシーのDFは高さで勝ってるから怖くない。


モウリーニョは、この日のゲームまでにチームで怪我人をそんなに出してません。一方で、モイーズは怪我人だらけ。チームのフィジカルコンディショニングではモウリーニョの圧勝です。


また、この日のゲームプランでも、モイーズが最初のハイプレスの後、ゲームプランと呼べるようなものが無かったのに対して、モウリーニョはユナイテッドの守備の欠点を確実に突いて得点を重ねてます。さらに交代カードも三枚全部使ってます。サッカーってスポーツでは、後半終了間際になると、異常に怪我が増えるので、後半になったら怪我防止も含めて、タックル受けやすいポジションの選手は変えたほうがいいんです。負けてても勝っててもね。モウリーニョはその辺り、ホントにきちんとしてます。一方、ユナイテッドは交代カード一枚だけ。モイーズ、ふざけてんのかと。



その上、一番糞だと思ったのが、ロスタイムのラファエルのプレーで、ロスタイムに両足タックルかましてるんです。まあ、イエローですみましたけど、あれ、レッドカードが妥当なプレーです。ヴィディッチも、その前にアザールへのタックルでレッドだされてるんですけどね。


あのねえ。ロスタイムに負けてて、あーゆープレーするのって、「勝てないならせめて怪我だけでもさせろ」って感じの奴で、サッカーファンとしては最悪に近い印象なんです。「いい加減にしろよユナイテッド」って思ったシーンでして、糞つまんないサッカーして糞味噌に負けた上に、さらにロスタイムにラフプレーするとか、プライドもなくなったのかと。



モウリーニョに対して、モイーズはフィジカルコンディショニングで負け、チーム戦術で負け、チームのスポーツマンシップの点でも負けてる状態で、勝ってるトコがホント何もない。



こーいう監督と6年契約してるんですよね。ご愁傷様です。



今日はこのあたりで。


つぎはフィジカルコンディショニングの話でも詳しくやろうかと思います。


ではでは。


サッカーにおけるフィジカルコンディショニングのお話

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さて、皆さん、こんにちは。本日は、また地味ーな話になりますが、サッカーにおけるフィジカルコンディショニングの話でもしてみようかと思います。先日、本田の話をした時に、サッカーにおけるフィジカルコンディショニングの話をちょいとしましたが、今日は、それメインでお話をしたいと思います。


こんな話をしようと思ったのは、Jリーグのクラブがキャンプに突入したからでもあり、また、、


“見えない”ドーピング  攻防の最前線



こんな話も話題になってたからです。フィジカルコンディショニングには、薬物も密接に関わってくるので、そっち方面の話にも、やっぱりなってしまう訳でございますよ。嫌な話ですね。


2014年、J1におけるフィジカル・コンディショニング

(追記、すいません、2ステージ制は来年からでした。来年からの話だと思って読んでください。)


まず、サッカーにおけるフィジカルコンディショニングについては、以前、書いた記事ですいませんが、


サッカーにおけるフィジカルトレーニングの今昔


本田のミランデビュー戦とミランの監督解任のお話


で、結構、触れてきた話題なわけです。


サッカーにおいて、トラディショナルなフィジカルコンディショニングのメソッドってのは、開幕時のコンディションは多少低くなるものの、プレシーズンのキャンプで高い負荷の持久系、パワー系のトレーニングをしておいて、11~12月に最初のピークを作り、冬の中断期間にミニキャンプを張って負荷の多い持久系のトレーニングをして4~5月にもう1度ピークを作ろうとするやり方です。


これは、J1のチームでも同じような形でして、今年に関しては、6~7月のW杯ブラジル大会開催期間中、J1は8週間中断される為、多くのチームがこの形でフィジカルコンディショニングをしてくるものと思われます。



どういう事かというと、J1の場合、今年から2シーズン制ですので、ファーストステージの山場である5月に最初のピークを作り、中断期間にもう一度、負荷の高い持久系、パワー系のトレーニングをやって、2ndステージ山場の11~12月にもう一度ピークを作ろうとするやり方になります。



実は、2014年のJ1の場合、W杯の都合上、二ヶ月の中断期間があって、1stステージの山場である15~17節が中断明けにずれ込んでいるので、フィジカル・コンディショニングは、結構難しい問題になってきます。15~17節で1stステージ優勝を争っているチームの場合、中断期間明けのここにピークをもってこないといけなくなる為、中断期間にそういうコンディショニングをしないといけません。つまりスピード系のトレーニング多めにして、負荷の高い持久系、パワー系のトレーニングを控えるわけです。それで15~17節あたりにピークを作る。ただ、それをやるとなると、今度は2ndステージの山場である11~12月とプレーオフにピークをもってきずらくなります。


1stステージで優勝したら、2ndステージを捨てて、プレーオフに焦点合わせたコンディショニングをする、というやり方も可能なんですが、そうなると、年間優勝は難しくなります。フィジカルコンディションの問題上、2ndステージの成績は絶対悪くなるからです。


この辺りのさじ加減は非常に難しい問題で、これ系のコンディショニングをするチームの監督とフィジコは、今から頭を悩ませていると思います。



最近、Jリーグでも採用しているチームが多くなってきたモウリーニョタイプのコンディショニングについて


さて、次に、最近、Jリーグのチームでもモウリーニョタイプのフィジカルコンディショニングを採用するチームが出てきています。これは、伝統的なサッカーのフィジカルコンディショニングとは、ちょっと違うわけです。


伝統的なフィジカルコンディショニングのメソッドというのは、スポーツ科学の適用が進んでいた陸上のメソッドをそのままサッカーに適用した奴でして、1ヶ月あるいは3ヶ月のサイクルでトレーニングを回し、ピークを作っていくやり方になってます。



一方で、モウリーニョのフィジカルコンディショニングのメソッドは、サイクルが一週間で完結しており、シーズン中にピークの時期を作らないって所に特徴があります。モウリーニョのサイクルについては、これはネットでみれますので、紹介しておきますが、


モウリーニョのウィークリーサイクル (モルフォサイクル) 前編


モウリーニョのウィークリーサイクル (モルフォサイクル) 後編



こういった形になってます。トレーニング・メニューは全てボールを使って行われ、一週間のうちに、持久系、スピード系のトレーニングがそれぞれ組まれています。時間は最長で90分、一部練しか行いません。ただし、その代わりに、練習は試合と同じ強度で行われます。短時間、低頻度、最高強度のボールを使ったトレーニング、という所が特徴です。



実は、「アンチェロッティの戦術ノート」の中に、モウリーニョのフィジカル・トレーニングのメソッドについての詳細な記述があるので、それを引用しておきます。


チェルシーモウリーニョが監督を務めていた時代から、毎日のトレーニング、そして試合におけるフィジカル的な負荷についてのデータをアーカイヴして、それをベースにトレーニングを組み立てるというメソッドを蓄積してきていた。そのトレーニングメニューの内容も、イタリアのようにボールを使わずにトレーニングシューズを履いて行うものは少なく、ボールを使ったメニューが大部分を占めている。もちろん、ひとつひとつのエクササイズはフィジカル的な負荷が計算されている。毎日のトレーニングメニューを組み立てる際には、ドリスコール(チェルシーのフィジコ)がその日に必要な(あるいはそれ以上かけてはならない)負荷がどのくらいかを我々に伝え、それに基づいて一緒に相談しながらメニューを決めることになる。


ここまでみてきたように、今私は、チェルシーがクラブとして蓄積してきた人材やメソッドを採り入れながら監督として毎日の仕事を組み立てるという、新たなやり方に取り組んでいる。結果的に、毎日のトレーニングはミラン時代と比べて時間が短く、しかしその分インテンシティが高いものとなった。これは、フィジカルのエクササイズもボールを使って行うため、技術・戦術練習の要素も同時に織り込めるようになったこととも関連している。練習メニューに関していえば、変わったのは特にフィジカルの部分であり、戦術トレーニングに関しては、私が長年積み重ねてきたやり方を保っている。


というものです。



ちなみに、コレ系のフィジカル・トレーニング、フィジカル・コンディショニングのメソッドは、去年のJ2でガンバが採用した方法でもあります。



ガンバ大阪が取り組む、新トレーニング。



新トレーニングに取り組んだこの1年。 ガンバ大阪は確かな成果とともにJ1リーグに昇格する。



こっちの記事にありますが、ちょいと引用すると、

J2リーグのスケジュールには、J1リーグのような中断期間がありませんからね。例えば、中断期間にピークを設定し直して身体を作り直すような時間はない。だからこそ、今季は試合を戦いながらフィジカルを維持、向上させていくことを目指したというか。ボールを使って戦術的なアプローチをしながら、かつ、フィジカルを鍛えられるトレーニングに取り組みたいと考えた。その意向を新シーズンを迎えるにあたってフィジカルコーチである吉道(公一朗)に伝えた上でシーズンに入る前も、実際にシーズンが始まった今も、選手の状態を見極めつつ常にディスカッションをしながら日々のトレーニングに取り組んでいます。(長谷川健太監督)」

「どのトレーニングを取り入れても、フィットする選手、いない選手がいるように、今回のトレーニング方法が全ての選手にあてはまったかとは一概には言えません。ただ、監督が課題に掲げチームとして取り組んできた『球際の強さ』や『爆発的なスプリント回数の向上』という点については明らかに変化が見られたのかな、と。また、特に10月半ばの天皇杯3回戦・大宮戦を含め、それ以降のリーグ戦、最終節までの6試合において、疲労は間違いなく蓄積されている状況であったにも関わらず、最後まで走り負けないスプリント力やその回数、攻撃のアクション頻度が増えた事実は、手応えを感じられる要素の1つだったと思います。加えて素走りのフィジカルトレーニングを減らす事によってケガ人が減るということも、僕がこのトレーニングを導入するにあたりいろんなことを教えていただいた土屋潤二さん(S.C.相模原フィジカルコーチ)から聞いていましたが、それも実感しましたね。佐藤晃大倉田秋岩下敬輔など長期離脱になってしまった選手以外は、明らかに筋肉系のケガをする選手が減りましたから。もちろん、これもトレーニングだけが理由ではなく、監督以下、コーチやメディカルスタッフの理解のもと、違和感を感じている選手は早めに外したり…というようなことをチームとして徹底してきたからでもありますが、このことは僕自身にとっても嬉しい驚きでした。」


こういう奴ですね。


去年のJ2でガンバが「ボールを使ったフィジカル・トレーニング」を採り入れた理由としては、J2には中断期間がない為、中断期間にピークを設定して身体を作り出す時間が無いこと、それから「素走りのフィジカルトレーニングを減らす事によってケガ人が減る」って所が目をひきます。「明らかに筋肉系のケガをする選手が減った」って話がありますが、これは、モウリーニョタイプのコンディショニングが注目されている最大の理由でもあるんです。


近年のサッカーシーンでは、「筋肉系の故障の予防」は重要なテーマでして、サッカーの怪我の大部分を占める肉離れをどう予防するかに、チームは腐心しているのが実情なんです。これに失敗して、チームがシーズン途中で野戦病院状態になるってのは珍しくありません。




サッカーにおける怪我の種類


これ、まず、ネットで読める奴なので、紹介しておきますが、


サッカー医学マニュアル



ってのがあります。これ、超くわしくサッカーにおける怪我の種類やトレーニングの話が載ってるので、オススメです。



で、こいつの中に、サッカーにおける怪我の種類の統計があるのですが、図を貼っとくと



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こうなります。サッカーにおける損失時間を伴う怪我というのは、「肉離れ」、「打撲」、「捻挫」で81%を占めます。ちなみに、試合中の傷害発生率はトレーニング中の約4倍となります。


怪我するときの状況の統計も載ってるのですが、


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こうなっており、「タックルを受けた場合」、「タックルをした場合」といった接触プレーの際の怪我が多いのが特徴です。接触プレーに怪我がつきものなのは、どのスポーツでも共通なので、しょうがないのですけどね。



トレーニングの組み立てにおける問題、何故、モウリーニョのチームは怪我人が少ないのか?


で、こっからが今回の話の味噌になるんですわ。モウリーニョのチームってのは怪我人が少ないです。インテル時代なんて、モウリーニョからベニテスに監督が変わった時、ベニテスはジムトレやらサーキットトレーニングやらの陸上系のフィジカルメニューを復活させたんですが、その後、何が起きたのかは皆さん、ご存じの通り。インテルは怪我人続出となりました。



ここで、さっき紹介したガンバの話にも繋がるんですけど、「素走りのフィジカルトレーニングを減らす事によってケガ人が減る」って話と繋がるわけです。「何故?」と。




先に紹介した「サッカー医学マニュアル」の中に、「2.1.4 トレーニングの回数、強度、継続時間」って項目があります。「あらゆるトレーニングプログラムは、回数、強度、継続時間の原則を守らなければならない。この3要素のいずれかを強化すればフィットネスが向上する」とされています。


簡潔にまとめときますが、




トレーニングの頻度

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トレーニングの頻度については、フィットネス向上のためには、一週間のうち3回程度は必要になります。ただし、トレーニングの頻度を上げれば上げるほど、怪我の発生確率が高まります。これはトレードオフの関係にあります。




トレーニングの強度

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トレーニングの強度はS字曲線なのが特徴であり、60%以上から急激にフィットネス向上が望め、85%以上では、伸びが緩やかになります。強度は高めの方が好ましいのですが、ただし、強度の高いトレーニングを連日で行った場合、オーバートレーニングという現象がおきます。筋肉は部位によって回復時間が異なるのですが、腹筋なんかは24時間で回復しますが、大きな筋肉(大腿筋とか大胸筋、広背筋)なんかは72時間程度必要とされてます。腹筋は毎日やってもいいんですが、大腿筋とか大胸筋、広背筋なんかのトレーニングは、しっかり3日ほどの回復期間をおいてトレーニングしないと発達しません。




トレーニングの継続時間

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トレーニングの継続時間については、約45分~1時間まではフィットネスの向上に寄与するのですが、それ以上は、それほどではなくなります。また、無酸素系や有酸素系で、異なる部分があります。



あと、大事な事なんで、サッカー医学マニュアルから引用しときますが、

強度、頻度、継続時間(量)の3要素のうち、
どれがフィットネスレベルに最も大きな影響を
及ぼすであろうか。決定的要素は強度であると
思われる。しかし、組織化されたトレーニング
プログラムでは、3要素すべてが重要である。
テーパリング(特定の競技会に向けて最高の
状態に達するためにトレーニングを減らすこ
と)に関する諸研究では、フィットネスレベル
を維持しようとする場合は運動強度が重要であ
ることが報告されている。ある研究では、トレ
ーニング量と頻度を3分の1にし、強度は維持し
たところ、フィットネスレベルはなんと15週間
も維持された。これは、プログラムの残りの運
動を高い強度で実行したため達成されたもので
あり、強度を低下させると、フィットネスレ
ルは直ちに低下し始めた。
他研究でも同様の結
果が認められており、諸研究の結果はすべて、
頻度、継続時間、強度のうち、強度がトレーニ
ングにおけるフィットネスレベルの決定的要素
であるという結論につながっている。


これですね。黒字強調しときましたが、フィットネスのレベルを維持する場合に、もっとも重要なのはトレーニングの強度です。




さて、モウリーニョのトレーニング・メソッドだと、何で怪我人が減るかは、大体、これで説明つくと思います。彼のフィジカル・コンディショニングのメソッドは、短時間(90分)、低頻度(一部練のみ、試合の翌日は休みが多い)、高強度(試合と同じレベル)で構成されてます。



基本的に、トレーニングの頻度を上げるのは怪我人を増やす要因ですし、サッカーの試合における怪我しやすい時間帯をみれば、前半30分すぎと後半の60分すぎに集中しているのがわかると思います。練習の継続時間を長くすると、そういった状況になりやすいんです。



勿論、練習の強度をあげて、試合に近づける事は、「試合における怪我の頻度は練習の4倍」なので、そのまま怪我が起こりやすくなるわけですが、強度をあげる代わりに、時間を短くすることでバランスとってるんでしょう。



モウのメソッドは、それなりにバランス取れている訳です。トレーニングの強度を上げることでチームのフィットネスを維持しつつ、低頻度、短時間にすることで怪我のリスクを減らす、という形でね。




薬物に汚染されきってるスポーツの練習メソッドは真似してはいけない理由


でね、最後にこの話になります。


最初にドーピングの話をしたのは、このせいなんですが、雑誌とかでたまーに載ってる「プロの練習方法」ってのは真似しないほうがいいんです。特に、アメスポ系の奴とかはやめたほうが賢明です。


なんでかってーと、薬物使用が前提のトレーニングをしてるケースがあるためです。


これ、こないだ紹介した三上さんのホームページにもありますが、


科学的なボディビルディング(4)


プロのボディビルダーってのは、信じられない量の薬物使用と「高強度・高頻度なトレーニング」が特徴でして、薬物使用を行ってないのに、あーゆートレーニングしても、あんまり効果はありません。というか、アメリカのプロのボディビルダーは、薬物無しでは真似するのは不可能なレベルの筋トレしてます。



wikipediaのボディビルの項目にありますが、アメリカのボディビルは薬物に汚染されきており、

薬物使用者の告白

IFBBに出場経験のあるビルダーが告白した内容は衝撃的であった。 山盛りの成長ホルモンに山盛りのステロイド。 信じられないほどたくさんの経口薬と注射薬を毎日使用しているとのことである。 下記はあるアマチュアボディビルダーの使用例である。 このボディビルダーはプロの世界では大成することはなく引退したのだが、『もしかすると、プロの世界ではこの程度の薬物ではどうにもならなかったのかもしれない。』と発言している。


【オフシーズン】

デポテストステロン 600mg 1日おき

プロホルモン 300mg 1日おき

ダイアナボール 10 毎日

レンブテロール 10~20 毎日

メリージェーン(マスキング物質:薬物使用の痕跡を体内から消す作用があるといわれる薬物) 30g 毎週


【コンテスト6週間前】

パラボラン+プリモデポ 1日おき

プロホルモン 3cc 1日おき

ハロテスティン 50mg

ファスティン 毎日

レンブテロール 20~25 毎日

ペルコダン 必要に応じて

メリージェーン 30g 毎週



ボディビル

こんな状況です。もう滅茶苦茶でして、「これだけやっても勝てない」なんて状況になってます。「ロニー・コールマン」で画像検索かければ、すごい画像がでてきますけど


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こんなのね。


もう「人間じゃない」ってレベルですが、副作用として、ハゲ、内臓肥大(腹がぽっこり出ている)と、胸部乳頭が屹立(女性化乳房)してるのがわかると思います。スポーツ選手で、たまーにそういう選手みると、僕なんかは薬やってんだろとか思っちゃうのは悪い癖なんですがね。



これ、女性のボディビルダーなんかだと、骨盤が男性化してね?ってのがあります。これはへその位置でわかるのですけど、女性は骨盤の上端よりも少し上にへそがあるもんなんですが、男性みたいに骨盤の上端になったりします。のどぼとけが出てきたり、と、男性的な特徴が身体に出てくるわけです。



ステロイドの副作用とか知ってれば、「あ、こいつ使ってるんじゃね?」とか疑ってしまうスポーツ選手はいるわけですよ。


で、薬物使用してる選手ってのは、信じられないようなハードトレーニングが可能になります。これが結果の差になって出てくるんです。筋肉量の差だけでなく、練習量の差もついてきます。



こないだ、薬物使用を告白し、「薬物無しではツールで勝てない」なんて言ってしまったランス・アームストロングのトレーニングメニューとか見たことあるんですけど、「こんなに練習して大丈夫なの?」ってレベルでした。まあ、今となっては薬物やってたんだから、当然か、みたいな話になるんですけどね。


最後に、何でこんな話するかってーと、



若き才能が潰される要因はトレーニングの量にある【サッカーのピリオダイゼーション番外編】


こっちの記事の話につながるんですが、


「トレーニングの強度が上がったら、その分、頻度(時間)は少なくする必要があります。ユースから上がってきた選手には、まずはトップチームの強度に慣れるための時間を与えることです。しかし、そのように段階的にトレーニングをしているチームはほとんどありません。トップに上がったばかりの選手であっても、『練習にすべて参加しなくてはいけない』という状況を作っています。だから疲労が溜り、パフォーマンスが下がり、ケガをしてしまうのです。なぜなら、突然高い負荷がかかる状況に追い込まれているからです」

フィジカル的に素質を持った選手は、突然、負荷が上がっても対応することができます。しかし、長い目で見ると疲労が溜り、それがケガなど痛みとなって出てくるケースが多いと言います。

「そこで監督は『よくがんばってトレーニングしたけども、残念ながらトップチームでできるクオリティを持っていなかった』と判断するのです。でもそれは、選手のクオリティうんぬんではなく、コーチがコンディショニングやフィジカルを正しく理解していないから起こったことであり、選手ではなく、コーチの責任によるところが大きいのです」

こういう例です。


これねえ、スポーツの世界にマンベンなくある事なんですが、若い選手が潰れる原因です。



基本的に、トレーニングでは強度を上げたら、頻度を下げたり、継続時間を短くしたりしないと、選手を怪我させてしまうんです。逆に、頻度を多くし、時間を長くしたいなら、強度は下げるか、クロストレーニングを導入しないと、普通はもちません。若い頃から薬物使用してるなら別ですけどね。



ジーコが16歳から17歳のあいだにステロイドを使用していたことを告白



まあ、こんなニュースが二年ほど前にでましたけど、ユース時代、ジーコステロイド打ってたのかよ!みたいな。これね、僕は欧州のユースの連中が凄い身体してるの見ると、色々と思う事もあるわけです。



ああいう連中見て、「日本人はもっと筋トレすべき!」って思う人は多いと思うんですが、ユース年代での薬物汚染って問題があったりするので、その辺りはふくんでおいて下さい、という話なのでした。



今日はこのあたりで。最後はくらーい話になってしまいましたが、日本人選手と、海外の選手の体格の違いについては、こういった薬物使用の問題もあるんで、単純に筋トレとか遺伝子だけの問題じゃないって事だけ、知っておいてください。


ではでは。

フォルランがJリーグに来たのでセレッソのお話

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さて、皆さん、こんにちは。本日は、かなーり周回遅れな感じもしますが、


】ディエゴ フォルラン選手と合意のお知らせ


フォルランセレッソに来るのが決定したので、フォルランセレッソの話でもしようかと思います。



セレッソの話は散々、うちのブログで扱ってきましたんで、「またかよ」的なアレもありますが、セレッソの試合はよく見るので、話をしやすいネタなんです。マンUにマタが移籍したんで、そっちの話もしたい所ですが、それは次にとっときます。


最初にセレッソ前監督クルピの特徴

さて、まずは、セレッソの話になると、このレヴィー・クルピって監督の話になります。もう6年くらいセレッソでずーっと監督やってるので、セレッソというとクルピのサッカーです。もっとも、去年は再登板でしたけれどもね。


クルピのサッカーの下で、香川、乾、清武なんかが海外に羽ばたいていったので、若手育成タイプの監督って感じですが、戦術面でも、特徴のあるサッカーをやるヒトです。


まず、フォーメーションにはあまりこだわりません。一つのフォメにこだわるタイプでなく、442,4231、3421と結構色々変えてきます。この辺りは柔軟です。ただし、4バックをやる際、両SBをあげるのが好きなヒトでして、442だろうが、4231だろうが両SB上げてきます。


その結果ですけど、CBには対人強くてSBの裏をカバーできる選手を使ってます。両SBを上げる結果として、最終ラインでの数的同数って問題が頻繁におこるからです。茂庭、上本、藤本、山下と、そういう系統の選手です。ただ、茂庭と藤本は足下がさっぱりな選手でして、この二人が組んでた頃はCBからビルドアップできないって問題を抱えていました。山下が茂庭に代わってスタメン取るようになると、ここが相当改善されました。


攻撃面では、レフティの使い方が非常に特徴的です。左SB、左ボランチにはレフティを使い、右のWGにもレフティを好みます。右サイドにレフティを置く、つまり逆足のWGを使うタイプの監督です。


ちょっと、図で説明しますけど、クルピが左サイドの底にレフティを置き、右サイドの高い位置にレフティを置く理由は、


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こーなります。


サッカーの世界では、レフティってのは、右サイドの高い位置からカットインする時、あるいは左サイドの底から縦パスを入れる時に、DFから遠い方の足でボールを持てるという利点があります。逆に、右利きの選手は左サイドの底から縦パスを入れるのは難しいし、右利きのドリブラーは右サイドで中にカットインするのは難しいです。これは利き足の関係で、DFに近い方の足でボールを持つことになるので、どーしても苦しい。


レフティボランチ、左SBを持っていないチームってのは、パスの展開が右サイドに偏りがちになりやすいです。又、レフティのWG、もしくはトップ下を持っていないチームは、右サイドの高い位置で攻撃に変化をつけられないって問題を抱えがちになります。


サッカーってのは、右利きだけだと良いチームは作れません。


無論、両足をまった同じ精度で使えるボランチと左SB、両足を同じ精度で使える右WG、もしくはトップ下をもてれば別ですが、こいつは、レフティより希少価値が高い選手です。


幾つかのポジションでは、右利きよりレフティの方が好ましく、クルピの場合、左ボランチを左SB、右WG、もしくはトップ下にレフティを置くことを好みます。



クルピって監督の選手起用の特徴としてはこんな所になります。


クルピのサッカーの場合、J2で3421やってた頃だと、タッチライン際にWBを張らせてワントップと2シャドーは流動的にポジションを変えながら、中央突破を狙い、相手が中央固めてくるなら、WBからクロスを上げるってのが基本でした。


442だと、両サイドのSHは中に入ってきて、SBに高い位置を取らせますし、4231でも、両WGが中に入ってきて、両SBは高い位置取らせます。攻撃方法は、いずれの場合でも中央突破がメインで、相手が中固めてくるならライン際に張ってるSBからのクロスを入れていくって形が基本です。



2013セレッソの守備


ここまで、クルピって監督の選手起用の特徴と、サッカーの色は大体説明したので、2013年のセレッソの守備の話に移ります。




まず、失点31はリーグ最少クラスでした。これより下なのはマリノスと広島のみでして、クルピのチームとしては、珍しく失点が少ないチームに仕上がってます。


失点が減った原因としては、


1,キム・ジンヒョンがゴール前で生き神だった。


2,CBの山下の成長。今年に限っていえば茂庭より良かった。


3、トップ下のシンプリシオが真面目にボランチが明けたスペースを埋めてるのでバイタルにスペースがほとんどない。


の三つがあげられます。1と2は、カウンターを食らった時に顕著でして、セレッソは両SB上げてくるので、カウンターの時、両SBの裏には広大なスペースがあります。そこを使われてしまうと、CBとGK、それから残っているボランチ一枚で何とかしないとケースが多くなるんですけど、


2013・J1 GKのセーブランキング


こっちで今年のJ1のGKのセーブ率見られますが、キム・ジンヒョンのセーブ数、セーブ率は圧巻の一言でして、セーブ数136、セーブ率81%ってのは、群を抜いた数字です。試合見てても、ビッグセーブでチームを救った回数がとにかく多い。


セレッソは被シュート本数がとにかく多いチームで、被シュート数416ってのは、大分456、湘南456に次ぐ数字です。普通、こんだけ打たれたら、失点は50を軽く超えてもおかしくないんです。


ただ、チームとしても助かっていたのは、トップ下のシンプリシオが素晴らしいバランサーだったってのがあります。セレッソは、守備の局面では441でブロック作ります。図でやりますが、


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こうね。44じゃなく、44「1」です。トップ下のシンプリシオはきっちり戻ってきます。前には柿谷一人残し、トップ下のシンプリシオボランチのエリアまで下がってきます。で、サイドにボール出されたら、


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こんな感じでズレます。サイドにボールが出たら、セレッソはサイドに3人出してきます。この際、中央が1ボラにならないようにシンプリシオがバランスを取ります。なんで、トップ下をここまで下がらせるかってーと、サイドにボール出された後、セレッソボランチを一人、サイドに出します。これは、SBの酒本と丸橋が元々MFで守備力はあんまないせいもあります。その際、中央を1ボランチにされて、その両脇を使われるってのを避けたいからです。


この守備の形は、遠藤をトップ下にしてたガンバ大阪、俊輔トップ下のマリノスあたりでも採用されており、トップ下が守備の時にバランサーとなり、ボランチがサイドに釣り出された時、トップ下がバイタルのスペースを埋める役割を担います。この仕事は、J1の場合、サイドに一回ボールだした後、中のギャップに当ててくるチームに対抗する為に、非常に重要になっています。


2013年のセレッソは9人でしっかりブロック作るチームになってまして、人数かけて守るってのが基本原則になってました。



2013セレッソの攻撃

こっからは、セレッソの攻撃の話です。


まず、2013のセレッソはロングカウンターが非常に強力でした。原因は、低い位置でボール奪った後、柿谷が裏抜け一発でもっていけるようになった事です。柿谷のFWとしての才能の開花は、やはり、これが一番大きい。自分の絶対的な形を作れた事が、得点量産のきっかけになってます。


勿論、セレッソってチームが、バイタルでのコンビネーションからの中央突破がチームとしての武器なのは変わってません。


どういう事かというと、



Cerezo Osaka vs Yokohama F Marinos: J.League ...


これ、15節のセレッソマリノスの試合の動画ですけど、セレッソの得点は、二点ともセレッソらしい取り方なんで紹介しときます。キャプで解説もいれときますが、一点目は、


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こういう形でした。


これ、セレッソの得意の形でして、「何でセレッソは両SBあげるの?」と言われると、相手のSHとボランチの間にスペース作りたいからです。相手のSHが高い位置を取る両SBに釣られて、SHとボランチの間にギャップ作ったら、その瞬間を狙って、こういう縦パス通して、そこからコンビネーションで一気に中央抜いてきます。


ここがポイントでして、SHとボランチの間にスペースが出来る守り方すると、セレッソの中央突破を食らってしまうので、そーゆーやり方はセレッソ相手にはアウトです。SHとボランチの間のスペース使った崩しは、Jリーグでもトップレベルに強力なチームです。



セレッソ相手に、「これはアカン・・・・」って守備の例としては、もう一つ、14節の磐田戦のキャプでやっときますが、


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コレですね。これねえ、セレッソ相手にはダメなんですよ、このやり方。


図でも説明しときますが、

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こうなっちゃうんです。セレッソは両SB上げて、相手のSHとボランチの間のギャップを広げようとしてきます。SHがSB気にして、ギャップ作っちゃうと、こういう形でセレッソ得意のバイタルからの中央突破食らいます。あそこでセレッソのアタッカーに前向かれちゃうと、そこからはセレッソの18番になるんで、あそこにスペースできる守り方はセレッソ相手には厳禁です。


ちなみに中固められた場合、セレッソは両サイドに張ってるSBからガンガンクロスあげてきます。



ただ、欠点もあって、これは選手の問題なんですけど、右SHと右ボラの間のギャップ使って崩すのは上手いんですけど、左SHと左ボラの間のギャップを使って崩すのはセレッソ、あまり上手くありません。理由は、今年にとったレフティエジノが激しく期待外れだったからで、セレッソで求められる役割をほとんど果たせていませんでした。


セレッソのゴール集みてもらえばわかると思うんですけど、左サイドからは多彩な攻撃が出来るんですが、右サイドからはほぼ単発の攻撃しか出来ないって問題を抱えてまして、その原因が、左SHと左ボラの間のギャップを使って崩せるレフティの不在です。エジノにはそれが求められていたんですが、ほとんど出来てませんでした。「エジノじゃなくてエジルだったら良かったのにね」というアレです。


メッシ、ロッベンエジル、マタ、この辺りのクラスのレフティセレッソにいたらなあ・・・というアレです。ちょっと不思議なのは、セレッソレフティをまだ補強してない所でして、ミッチも確か右利きだったハズなんで、どーするのかな?って所です。


クルピだったら、まず間違いなく、レフティ取ったと思うんですが、不思議な所です。


ディエゴ・フォルランの特徴

次にフォルランの話に移ります。


Los 32 goles de Diego Forlan en la Liga 08/09

Diego Forlan - all goals of season 2009




動画張っときますが、驚異的なのは両足から繰り出されるシュートです。ゴールから30メートルくらいの位置から易々と決めてきます。特に、左サイド寄り、バイタルで前向かれたらアウトです。スーパーミドルが高確率で飛んできます。日本のGKだと、アレを防ぐのはかなり厳しいです。


それから、両足で30メートル級のミドル打てるので、ワンサイドカットはあんまり意味がないですねえ、これ・・・


一方で、グランダーのクロスの処理は上手いがヘディングはイマイチです。CFタイプかというとちょっと違う。どっちかというとトップ下、セカンドトップです。両足でゴール決められますが、頭のゴールは少ないんです、フォルラン


右利きで得意なのは左サイドっぽいです。ただし左からの中へのカットインを警戒してると、縦に来てから左足でミドル決められるので注意が必要になります。





セレッソフォルラン来たらどうなるの?

次に、この話になるんですけど、セレッソは、前FC東京監督のポポヴィッチが新監督に就任しました。


この監督はサイドから延々クロス上げ続けるサッカーやるヒトではないので、セレッソのサッカーは大枠では変わらないと思います。


クルピのサッカーについては、延々と講釈たれてきましたが、基本は両SB高い位置にあげて、相手のSHとボランチの間にギャップを作り、そこのギャップをアタッカーが取ってから、バイタル使って崩す中央突破が特徴でした。


ただ、両SB上げないとなると、これの破壊力が落ちてしまうんですね。守備は、そのほうが安定するでしょうけど、両SB上げても2013年は失点少なかったんで、両SB上げるサッカーは継続したほうが良いとは思います。


ポポヴィッチに関して言えば、FC東京時代、4231か442をベースにして、両ボランチに守備力のある高橋と米本、あるいはアーリアを使って、攻撃時にはSBあげて両SHが中に入ってくる変形型の3421、もしくは2422みたいな形でやってたので、セレッソのサッカーは大枠では変わらないと思います。


セレッソのサッカーが大枠では変わらないって話を前提にして進めますが、左サイドの攻撃力は、2013と比べて、確実に上がります。理由は、そこからのフォルランのミドルがあるで、「右SHと右ボラの間でセレッソのアタッカーに前向かれたらアウト」状態は継続します。


一方で、右サイドの攻撃力は、良いレフティとってないし、ちょっと微妙です。右サイドの高い位置で攻撃に変化をつけられる選手を一人取った方が好ましいんですが、今の所、補強の予定はないみたいです。


なので、このままだと、左サイドに蓋されると、攻撃面で停滞してしまう可能性が有ります。僕だったら、レフティを何とか調達してきます。


ただ、攻撃面はフォルラン取ったんだし、そんな問題はないんです。問題は守備の方でしてね。



守備面では、フォルランを柿谷でツートップ気味で組ませる場合、どっちかが下がって守備をしないといけません。ただ、どっちもシンプリシオみたいに気の利いた守備は出来ないので、守備面では今年よりルーズになる可能性が高いです。



前のメンツなんですけど、

  フォルラン柿谷
南野       ミッチ(アーリア?)
  扇原山口(アーリア?)


になるとすると、凄い豪華なんですけど、一方で守備面でサイドにボール出された後が問題で、


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この円で囲った所が空いちゃう可能性が高いんです。シンプリシオがトップ下の時は真面目に下がってきてスペース埋めたり、相手ボランチのマークについたりしてくれたんですけど、「柿谷とフォルランにそれをやらせるのはどうなの?」って話にはなるわけです。どっちもバランサータイプの選手じゃありません。純粋なストライカータイプです。


なんで、この二人は前に残しておきたいんですけど、そーなると、一回サイドにはたいてから、相手の守備ブロックにギャップを作り、中に当ててくるチームに対して、守備面で問題を抱えることになります。勿論、どっちか片方を下がらせれば良い訳ですけど、柿谷下がらせちゃうと、せっかくの裏抜けの才能が台無しになるし、フォルランを下がらせるのも勿体ないというジレンマです。


なんで、前に二人残らせる前提で、守備面考慮すると、


  フォルラン柿谷
アーリア       ミッチ
    扇原山口


こんな感じになるかと。ミッチとアーリアにサイドだけでなく、中に絞っての守備もがっつりやらせる事になりますが、44でブロック固めるなら、両SHに守備力の高い選手使った方がいいです。こっちは前に二人残す場合のやり方になります。



最後に

セレッソってチームは、ちょっと前までJ2にいたんですけど、去年は平均観客動員18000人越えで、ガンバを上回ってます。


実は、ここ二年ほど、セレッソとガンバの間で観客動員の逆転現象が起きており、セレッソは二年連続でガンバより動員が良い状態が続いています。フォルランを取ったのは、ココで一気にガンバに差をつけて、大阪での動員NO.1クラブになろうという意気込みがビンビンします。2013年リーグ後半戦では、長居スタジアムでやったゲームは3万越え連発してたので、今年のセレッソの観客動員凄いことになりそうです。


実は、密かに期待してるのですが、ガンバのほうも「このままじゃアカン!」って事で、ガンバさんが、フォルランに対抗して、大物取りをしてくれないかなあ、と。パナソニックも業績回復してきてるし、新スタと合わせて一発かましてほしいのですよ。



そうなったら、Jリーグはウハウハです。



今日はこのあたりで。


ではでは。

2013年、J1の戦術トレンドのお話

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皆様、こんにちは。本日は、2013年のJ1のトレンドについて、まとめておきたいと思います。


これについては、以前もちょいと触れたんですけど、今日は、詳しくやります。内容的には4231から3421に変形するフォメを使うチームが増えたって話と、最初から3421でやってるチームのお話です。


今シーズン、4231、もしくは442をベースにして、攻撃時に3421に変形する形を採用していたチームとしては、横浜FMC大阪、川崎、FC東京の4チームが上げられます。


一方で、3421を採用していたチームとしては、浦和、広島、柏(途中から)、湘南の4チームが上げられます。


J1では、3421フォメで攻撃を行うってのが、2013年は戦術面でのトレンドになってまして、守備時には4バックで守るか、5バックで守るかで、それぞれのチームが試行錯誤していました。


2013年のJ1で、何で3421が採用されるようになったのか?というお話


まず、戦術トレンドの話の前に、守備ブロックの崩し方の話になるんですけど、こいつは、

調べてもわからないサッカーのすべて

調べてもわからないサッカーのすべて

この本の中にガンバ大阪の遠藤のインタが載っていて、それがわかりやすいので、そっちを紹介しておきます。軽く引用しますが、


(インタビュアー)カウンターのときは使えるスペースも多いし、狙いどころもたくさんあると思いますけど、パスを5本、6本とつなぎながら前に運んでいく遅攻のときは、相手守備ブロックが既にできあがっていてスペースが少ないことが多いですよね。そこでボールを回しているとき、遠藤さんは相手ブロックのどこがどうなっていくのを見てるんですか。



(遠藤)まず基本的に間でもらうってことですよ。そこで一回起点を作ることによって、必ず相手の守備陣はズレなきゃいけなくなるし、それを繰り返すことによってスペースができてくる。あまりそこ(間)のスペースを使わないチームもありますけど、うちは使うので。見てる人には難しいとは思いますけど、基本的には相手が守りやすい攻めをしない。そういう発想から来てるんだとおもいます。

ってものです。ここでの「間」ってのは守備ブロックのギャップのことなんですけど、442で守備をやるチームの場合、どこにギャップが生まれやすいかっていうと、


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この白い円で囲った場所になります。SBとCBの間、ボランチとSHの間です。ここは442で守備をやる場合、特にギャップが生まれやすいポイントでして、ガンバってチームは、左右にボールを動かしながら、ココにギャップを作ろうとしてきます。


現在、442守備をやる場合に特に問題になるのがSHとボランチの間のギャップで、SHに攻撃に特徴のある選手(主にWGタイプ)を入れてしまうと、ボランチやSBとの連携が上手くいかず、SHとボランチの間にギャップを作ってしまうって問題を抱える事が多い訳です。


でもって、ここで3421が、何で442相手に採用されるかって話になるんですけど、図でやると、流れとしては、


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こういった形にもっていきやすいんです。


これが442の守備に対して3421を使うメリットでして、442に対して、3421は守備をずらしてギャップを使いやすいフォメなんです。


3421を使う時のポイントとしては、3バックから1度、サイドにはたいて、相手の守備ブロックを横に広げ、そこからSHとボランチの間のシャドーに1度ボールを当ててボランチに落とすか、そのままシャドーが前を向くって形で高い位置に起点を作ってから崩しに入ります。



最初から3421でやるチームは別として、442もしくは4231から3421に変形するチームの場合、


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攻撃時に、こんな感じでポジションチェンジを行ってきます。狙いとしては、


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ここの赤で囲ったエリアにスペースを作る事です。相手のDFをシャドーやSBで引っ張る事により、赤いエリアにスペースを作る、又はボランチがフリーになりやすい状況を作るってのが狙いになります。


2013年J1のメタゲームのお話


さて、こういったフォメを使うチームが増え、一回サイドにはたいた後に、中のギャップを使おうとするチームが増えてるのが最近のJ1の特徴になります。サイドからドリブルしてクロス上げまくるってチームは、全体として見ると以前より減ってます。



一方で、こういったチームが増えた事から、それに対するメタゲームが進行しました。特に守備面で。わかりやすいのが、セレッソ大阪横浜Fマリノス、J2でしたけどガンバ大阪で、トップ下にバランサータイプの選手をいれるようになってます。セレッソシンプリシオマリノスは俊輔、ガンバの場合は遠藤です。図でやると、


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こんな感じでトップ下の選手が、守備のバランスを取ります。相手チームの降りてくるトップ下にはチェックに出て、ボランチが前に釣り出されすぎないようにする、ボランチがサイドに釣り出されたらバイタルのカバーに入ってバランスを取る訳です。



3421で攻撃してくるチームが増えてる現状、442で前に二人残して、4-4の8枚でブロックを固めるチームは減ってます。多くのチームが、守備時にトップ下を一枚下がらせて守備のバランスを取らせてます。4-4-1がJ1では基本になってます。8枚ブロックだと、サイドにはたいてから中のギャップに当ててくるチームに対して、守るきるのが非常に難しいんです。



また、バランサーの仕事として、下がってボールを受けて捌くってのも重要でして、トップ下が下がる事で、中に入ってくるWGのスペースを作り、中に入ってくるWGによって相手SBを中に絞らせて、SBが上がるスペースを作ります。トップ下がバランサーを兼ねているので、セレッソマリノス、ガンバのCFはフィニッシュに専念できるようになります。宇佐美が「ヤットさんがトップ下になってから、さらに居心地がよくなった」って話をしてましたが、あれ、どういう事かというと、ちと、フットボールラボから画像拝借しますが、


長崎戦
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京都戦
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これ、ロチャと宇佐美で2トップ組む場合と、宇佐美と遠藤で2トップ組む場合のフォメです。これね、長谷川監督の苦労の後がみえるフォメなんですよ。


つまり、ロチャと宇佐美で2トップ組ませると、前に二人残して基本的に8枚でブロック組むことになるので、SHに守備力ある奴を使わないといけない。一方で、遠藤と宇佐美なら、遠藤は下がってきて守備してくれるから9枚で守れるので、サイドに倉田とか二川さんみたいな攻撃力の高い選手を入れられるんです。


また、ビルドアップでも違いがあって、遠藤がトップ下の場合、宇佐美はビルドアップの時、下がってボール回しに参加する必要性が無いんです。遠藤が全部やってくれるし、守備でも下がる必要がない。だからフィニッシュに専念できる。一方で、ロチャと組む場合、宇佐美はボール回しで詰まったら下がってボール回しに参加しないといけないし、場合によっては下がって守備することもしないといけない。だから、どうしてもゴール前にいる時間が減ってしまうんです。まあ、どっちにしても宇佐美は点取ってましたけどね。ただ、居心地がいいのは遠藤のトップ下の方だったと思います。宇佐美はゴールに専念できますから。



この辺りは、セレッソシンプリシオと柿谷、マリノスの俊輔とマルキも一緒で、トップ下が攻守でバランス取ってくれるので、CFはフィニッシュに専念できてました。こういったバランサーは、前の枚数が足りないならCFのサポートに入るし、後ろの枚数が足りず、ボール回しが上手くいかないなら、最終ラインまで降りてきます。守備の局面でも、バイタルのカバーやボランチのケア、下がってくるトップ下のチェックを怠りません。



トップ下にこういったバランサーを配置するってのは昨今のJ1での、ある種のトレンドになってまして、「サイドに一回はたいた後に中のギャップに当ててくるチーム」に対しては有効な手になってます。


ちなみに、スペイン代表の場合は、シャビをトップ下にしてバランス取らせてます。あれがトレンドの発端になったのかもしれませんね。



最後に今年のJ1でバランス取りに失敗してたチームの例として


最後になりますが、今年のJ1で攻守のバランス取りに失敗してたチームとして、鹿島と川崎の話をしときます。これ、図でやりますけど、この2チームは守備で問題を抱えており、



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こんな感じでした。川崎にしろ鹿島にしろ、後半戦あたりで大分マシになりましたけどもね。前半はホントに酷かった。



これらの2チームは、CFとトップ下が前に残り気味で、後ろ8枚でブロック組む事が多いんですけど、その時、両SHが川崎の場合、小林とレナト、鹿島の場合、ジュニーニョ遠藤康って感じなんですが、どっちも攻撃に特徴がある選手で、守備はアレな選手なんです。対面の相手を見るくらいしか出来ず、SBやボランチと連携しながらバランス見て守るのは不得意な選手です。


なんで、これら2チームは、簡単にSHとボランチの間にギャップが出来てしまい、そこを使われてしまうチームでした。湘南とやった時、ベルマーレは別にポゼッションが上手いチームじゃないんですけど、えらい簡単にSHとボランチの間のギャップにパスが通せていて、「ベルマーレにこんな簡単にパス通されてたら、守備崩壊するだろ・・・」と思ったチームでもあります。両チームとも、降格した磐田とそう変わらない失点数ですけど、こーいう守備やってたら、失点多くなるのは当然です。(川崎の話なんですが、何でケンゴがバイタルのケアを必死にやらないのか不思議でした。大迫が前に残り気味なのはしょうがないとしても、ケンゴは戻ったほうがいい。)



今回の記事では浦和とか広島、湘南タイプの奴の話は扱いませんでしたが、眠くなってきたので、こっちは、又今度やります。


本日はこのあたりで。


ではでは。

2013年J1のトレンドその弐、3421フォメのお話

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さて、みなさん、こんにちは。本日は先日のエントリに引き続き、J1のトレンドについて扱いたいと思います。前回は442、もしくは4231から3421に変化するチームの話をしたので、今日は最初から3421でやるチームのお話になります。


ちなみに、3421を採用していたチームとしては、浦和、広島、湘南、柏(15節以降)となります。甲府も18節から3421に切り替えてますね。


さて、最初から3421でやるチームと、4231,もしくは442から3421に変形するチームの最大の違いは何かってーと、これ守備面になります。つまり、5バックか4バックかって所です。


つまり、



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こんな感じで5-4で守るか、


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こんな感じで4-5で守るかっていう違いになります。


攻撃面では、どちらも、それほど違いはありません。ただ、浦和と広島の場合、攻撃時に、


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こんな感じにボトムチェンジしますが、狙いとしては、


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こうです。CBとボランチのトライアングルで、相手2トップのプレスをいなし、そこから1度サイドにはたきます。で、中にギャップを作って、そこに顔をだしたシャドーにボールを入れ、シャドーが前を向けたら、そこから崩しにかかります。


広島と浦和は、どちらもこの形を取っており、ポゼッションの狙いとして1度サイドにはたいてから、中のギャップに当てていく形になります。



3421における守備のお話、湘南編


ちと、前振りが長くなりましたが、こっからが本題です。今回は、主に3421で守備をやる際の問題点についてお話します。


実は、うちのブログで去年はベルマーレの試合のマッチレポ、全部書こうかと思っていたのですが、途中でやめました。やめた原因は第六節の浦和戦です。


今でも鮮明に覚えている試合なんですが、去年、湘南がJ1昇格を決めた後、総括としてエントリ書いた時、「湘南のバイタルエリア問題」について扱いました。どういう事かというと、これ、その時つかった奴ですけど





ココの円で囲った部分にスペースが出来ちゃうんです。いわゆる湘南のバイタルエリア問題なんですけど、J2でやってた頃から、このエリアに頻繁にスペースが出来るチームだってのが僕の見立てで、J2ならともかく、J1だと、あそこ使われはじめたら、絶対やられると心配してたんです。


J1とJ2の違いに、「J1では能力の高いアタッカーが連動して攻撃してくる」ってのがあります。J2でも、能力の高いアタッカーってのはいるんですけど、大抵チームに一人までです。ただ、J1中堅以上だと、前の選手は化け物ぞろいで、そういった連中が連動して攻めてくる訳なんです。そういうチーム相手だと、あそこ使われたらヤバイ・・・ってのはシーズン前から心配してたんです。



5-4でブロック組む場合の問題点ですけど、これは図でやりますが、


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こうなります。これは、湘南、広島、浦和なんかの泣き所でして、失点シーンを見ていくと、このいずれかの欠点を相手チームに利用されてやられるパターンが非常に多いです。



でもって、2013J1、第六節の浦和対湘南の試合の話になるんですが、何で僕があの試合みて「嗚呼、この試合のマッチレポはシーズン中は書けない」って思ったかというと、これはキャプでやりましょうかね。動画も張っときますが、




浦和レッズVS湘南ベルマーレ 興梠慎三ゴール J1第6節 4月14日 - YouTube



こういう流れだったんですけどね、これ上からのアングルのキャプでやると、何がダメなのか、よくわかるんですけど、


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流れとしては、こんな感じでした。この試合、もうしつこくしつこく、浦和にシャドーとボランチの間を狙われていて、「うげー」と思ってたんです。湘南としても、ギャップ作らないように慎重に守ってたんですけど、29分、ついにあそこのギャップ使われてやられました。


でね、嫌になるのがこの後なんですよ。


スポーツの世界で、この手の弱みを試合で見せたら、その後、集中的に狙われます。正直言って「柏木、余計な事しやがって。。。」っていうのが試合後の僕の感想で、この手の弱みを試合で見せた以上、次の試合から、あそこは狙われまくる・・・と思いました。



でもって、案の上というか、この試合から中断期間まで、ベルマーレはしつこくしつこくココを狙われまくる事になります。特に、セレッソFC東京、広島戦では徹底的にアソコを狙われまして、「お前ら新入生イジメいい加減にしろ!!!」って感じでした。特にセレッソ戦とか涙目。


セレッソ戦については、もう開始直後から、


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でもって、この試合で、試合を決定づけたのがセレッソの2点目なんですけど、キャプでやっときますが、


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こーなりましたとさ・・・・。


ココねえ、FC東京戦でも散々狙われたし、大宮戦の一失点目でも右シャドーと右ボランチの間をパス通されて失点しましたし、もっと酷かったのは大宮戦の二失点目で、



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ココ、最初に白で囲ったスペース使われたら失点するだろうなあ・・・と思ってたら、モロに食らって白目剥きました。とにかく、シャドーとボランチの間を狙って縦パス通された時点でアウト。これね、浦和戦で、あそこがパス通るってバレてから、もう集中的に狙われまして、中断期間までは、ホント徹底的にやられました。


ちと、この時の狙いを、図で説明すると、こうなります。


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こういう流れで攻撃されると、5-4ブロックは非常に脆いです。5-4ブロックは、どうしても相手チームのボランチに前を向かれやすく、そこからこういう流れで崩されやすい布陣なんです。5バックなんで、中盤の守備で人手が足りず、相手チームのボランチ、トップ下なんかに前を向かれやすいってのが泣き所です。天皇杯マリノス対広島戦で、下がってくる俊輔とマリノスボランチ二人に簡単に広島は捌かれていましたが、守備ブロックの性質上、どうしても中盤センターで数的不利になりやすいんです。


典型的な失点パターンとしては、サイドにボランチを引っ張り出されて中央を1ボランチにされ、その両脇を使われて失点、もしくはボランチが前に引っ張りだされ、その後、ボランチとシャドーの間に縦パス通されてからCFとSHもしくはシャドーのワンツーでバイタルで前向かれてやられる、ってのです。



で、最後のは広島戦の奴です。高萩のワンダフルゴール。これは動画張っとくのでどうぞ。



2013 J1 第13節 湘南ベルマーレ 0-2 サンフレッチェ広島 25/05/2013 - YouTube



これは大宮の奴と同じ流れなんで、別にキャプで解説しないでもいいですよね。やり方は大宮と一緒です。シャドーとボランチの間狙って縦パス通す。高萩はダイレクトでCFにパスして、ボランチボランチの間のギャップに動き直してリターンを貰う。で、ここでもう一回、シャドーに当てて、動き直して、シャドーとボランチの間のギャップでリターンをもらう。で、フィニッシュと。バイタルで恐ろしいほど綺麗にワンタッチパス回されて終了。



まあ、ため息しか出ないのですが、中断前、もうJ1のチームに、あそこを狙われて狙われて狙われて、徹底的に湘南はいびり倒されました。


J2なら、あそこで前むかれても、まあ、何とかなるんですが、J1中堅以上のチームだと、高確率で中央ぶち抜いてきます。中断明けは、流石にチョウさんも中断中に守備面で対応してきており、マシにはなったんですが、浦和戦以降、毎試合大量失点、中央突破されまくりという試合が続き、正直、心が折れかけました。


J1では、弱点晒したが最後、もう徹底的に狙われますからね。


というわけでして、自分の応援するチームの欠点の話は、うちのブログではやめとこう、と思った次第なのです。これ、うちのブログのせいじゃないとは思うんですけど(あそこ狙われるようになった直接の原因は絶対に柏木とコーロキのゴール)、やっぱりね、気分がアレなので。。。。


3421における守備のお話、浦和編


で、次に3421で守備やってる浦和の話をしましょーか。といっても、浦和の話は、以前もしましたけど、欠点は541で守る以上は同じです。


ちと、川崎戦の奴でやりましょうか。J1第十六節で、川崎が浦和に4-0で勝った試合です。あの試合は、僕は馬鹿試合になるかと思ってたんですが、川崎のボロ勝ちでした。


両チームのスタメンは、またフットボールラボのやつ借りますが、

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これですね。見た瞬間に、浦和やべえ・・・と感じるメンツです。何がやばいってシャドーが原口とマルシオ。この二人はあんまし守備やらないので、後ろ5-2で守るような感じになるので、不吉なアレです。


まず、川崎の一点目からやりますけど、


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これですね・・・ココ、浦和の欠点がモロに出てるんですけど、基本的に、浦和って、シャドーの守備が緩すぎるし、シャドーとボランチの間に頻繁にギャップが生まれるチームなんです。だから、あそこ狙って縦パス通して崩すか、シャドーがそもそも戻ってこないのを利用して攻めればいいだけ、なんてチームです。




川崎対浦和の3点目もドイヒーなんですが、


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これも一失点目と同じなんですけど、シャドーの戻りは遅いし、一回サイドにはたかれただけで、中でボランチを完全にフリーにしてしまい、そこから縦パス入れられて失点。



でね。3失点目、何で、あんなに川崎のボランチをフリーにしちゃうの?って話になるんですけど、これ、浦和の守備方法と関係しておりまして、浦和って、SBがオーバーラップしてくると、シャドーがついていかないんです。WBにまかせちゃう。だから、サイドで数的有利をつくられそうになったら、ボランチがカバーにでないといけない。このシーン、川崎がサイドに来たら、カバーに出ないといけない、でも対面のボランチもフリーにしたくない、そんな訳で非常に悩ましい。


もともと、5バックにしてる分、中盤センターで人手が足りず、数的不利に陥りやすいのが5-4ブロックの難点なんですけど、浦和の場合、CFとシャドーの守備参加が少ない事から、さらにこういった状況に陥りやすいんです。相手チームは一回サイドにはたいてから、ボランチに戻すだけで、ボランチがフリーで前向いて配球できる。



もともと、ミシャ・ペトロビッチさんは、守備より攻撃が好きな人で、こーなっちゃうのかもしれませんが・・・それにしたって、ねぇ・・・・



浦和も今年失点多かったんですけど、守備のやり方的に、穴が多すぎるので、失点多くなるのは当然だったと思います。降格したジュビロと失点数は同じですしね・・・。


最後に広島の話


でもって、ついでに広島の話をしとこうと思います。ここも守備時には5-4-1で守ります。なんで欠点は上記二つのチームと変わりません。


ただ、浦和と比べると、ずっとシャドーとボランチの間のギャップへの守備の意識は高いです。湘南とは、そもそもDFとGKの能力が違いすぎます。なんで、失点は非常に少ないです。ここ、もうポイチさんの守備構築能力としかいいようがないです。



ただし、やっぱりシャドーとボランチの間のギャップ使って崩す能力の高いチーム相手には、それなりに負けてまして、具体例をあげると、浦和、FC東京、大宮、C大阪あたりには、リーグ戦でも黒星を喫しています。特に、広島の天敵状態なのが、なんといっても横浜マリノスでして、リーグ戦でも天皇杯でも勝てませんでした。


マリノスが広島をどういう風に崩していたのかってのは、これ、5-4ブロック攻略のいい教材なので、動画張っときますが



齋藤学 ドリブル突破からスーパーゴール! 横浜F・マリノスvsサンフレッチェ広島 2013 ...


これですね。これのやり方は、広島相手に非常に有効なやり方です。動画の動きを説明すると、 マリノスのSB、奈良輪がボール持ち上がって、サイドに張ってた愛媛ッシにパス。で、そのまま追い越す。この動きをすると、広島はマークを受け渡すので、WBのミキッチがSBをみて、シャドーが愛媛ッシを見るという形になります。で、その次に、WBとCBの間のギャップに俊輔が動いて、広島のボランチを最終ラインに吸収させる。で、空いたバイタルに愛媛ッシがカットインしてシュート。


これねえ、J1第五節でも似たような形食らってるんで、紹介しときます。


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これですね。


マリノスなんですけど、5-4で守るチームが厄介なのが俊輔でして、俊輔をボランチに見させると、俊輔のポジショニングでボランチが動かされてしまい、空いたスペースを中に入ってくる兵藤と斎藤学に使われてしまうんです。特に厄介なのが、俊輔がボランチを動かして、空いたバイタルに愛媛ッシがカットインしてくる時で、これをやられると、ホントに5-4で守ってるチームはきっついです。



もっとも、これだけのレベルの選手を揃えているチームなんて、そうそうない訳ではあるんですけどね。


マリノスは5-4ブロックのチームとやると、SBやボランチ、トップ下の走り込みで、ダブルボランチの位置を動かしてギャップ作ろうとしてきます。も一つ例としてあげときますが、


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こーゆー感じで、高い位置に起点つくってフィニッシュにもってきます。


そんな訳でして、5-4でマリノスと試合する時は、こういう動きでバイタルにスペース作ってきますので注意してくださいという話なのでした。逆に5-4でブロック固めるチームに対しては、こういった動きが有効ですよ、というお話なのでした。


実は、最後に先日行われたインテルユヴェントスの話をしようかと思ったんですけど(5バック繋がりで)、本日はもう、この辺りにしときます。


それでは、皆様、ごきげんよう。

2014セリエA 第22節 ユヴェントス対インテルのレビュー(ついでにちょっと本田の話も)

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さて、みなさん、こんにちは。最近、5バックの話ばっかしてたので、今日は5バック大流行中のセリエAのレビューでもしてみたいと思います。


この試合、長友がインテルのキャプテンという、歴史的な試合だったんですが、スタメンはってーと


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こーなってました。インテル、何か知らない選手ばかりです。


内容はってーと、インテルのボロ負けでして、ユーヴェが3-1で快勝してます。しかも、内容的に、もうユーヴェの完勝といって良いモンでして、「すげー差が出来てるなあ」などと、試合見ながら思った次第です。




ユーヴェの守備、FWのアクティブな守備参加の話とインテルの機能不全


まず、この話から。



これは図でやりますが、

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基本的に、相手が5-3でブロックを組んで来る場合の崩し方は、こうなります。1度、3の所の両脇にボールを当てて、相手チームのボランチをサイドに引っ張り出し、アンカーの脇にスペースを作る。その後、そのスペースにFWが降りてきてボールを受ける。あのエリアでボールを受けると、アンカーが絶対に食いつくので、そしたら、ボールをボランチに落とす。これで、高い位置でボランチが前を向いてボールを持てるので、そこを起点にして崩しに入る、というパターンです。


これは5-3でブロックを組む場合の泣き所でして、8枚ブロックだと、この攻撃を防ぐ方法は事実上、存在しないと言っていいです。


ただ、この試合のユーヴェはFW二枚がきっちり戻ってきて、3の前のスペースを潰す、あるいはボランチのマークについていた為、インテルはサイドに出してから中にあてるってボール回しを、事実上、完全に封じられていました。(中に当てても、ボランチはFW二枚がきっちりマークしちゃってるので、ボランチにボールを落とせない。)


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図でやっとくと、こうです。ユーヴェはFW二枚が守備にもアクティブに参加し、プレスバック、ボランチへのマーク、ボールを持ち上がってきたCBへのチェックをきちんとやっていたので、守備に殆ど穴がありませんでした。




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まず、これ。


ついでにもう一つ。


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これね。


正直、ここまで糞真面目にFWに守備やられたら、どんなチームだろうと、そう簡単には点は取れません。ユーヴェは、その性質上、ピルロの両脇がウィークポイントなんですが、FW二枚がきっちり下がって来て守備やってたら、そう簡単にはあそこは使えません。



長友の突破もふたりがかりで止められてたし、これではインテルは攻め手がないって状態でした。

一方でインテルの守備とユーヴェの攻撃

一方で、なんですがインテルの方は、守備で5-3-1-1で固めます。


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こーです。


これ、ユーヴェと比べると、守備時にパラシオを前に残らせてプレスバックはやらせてません。だから、ユーヴェより一人少ない9人でブロック固める事になってます。ユーヴェは身も蓋もない10人守備ですが、インテルは前に一人残します。




基本的にはアルバレスピルロを見て、ピルロには捌かせないって布陣です。ただ、ユーヴェと同じく、3の両脇がガラ空きになります。なんで、あそこでユーヴェは起点を作れます。


あそこで起点を作ったら、どういう風に崩せばいいかってーと、


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こうなります。3の両脇にボールを当てて、インテルボランチを一人、サイドに釣り出す。でもって、FWにボールを当ててから、即、ボランチボランチの間のギャップに動き直して、リターンパスを受ければ、バイタルでボランチが前を向いてボールを持てます。


で、そんな感じで、3の両脇を使った攻撃を繰り返されたせいか、前半14分、アルバレスがギャップを埋める動きをします。

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こうね。で、そーなると、


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ユーヴェは、こーきます。


ユーヴェ相手には、どこもピルロに一人はFWをマークをつけてくるもんです。ただ、そういう場合、ユーヴェは、


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こういう流れで攻撃してきます。で、こういう流れで攻撃されると、バイタルのカバーにピルロをマークしてる選手が戻ってくるようになります。そしたら、ユーヴェは、ここぞとばかりにピルロを使ってくるんですね。つまり、こう。


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ここでピルロが前向ければ、その後はピルロがパス一発で違いを作ってくれるんで簡単です。ユーヴェはピルロをフリーにする方法をビルドアップの中に組み込んでおり、相手のフォメに合わせて、色々やってきます。



勿論、ここで、インテルのパラシオが、ピルロのマークについてくれれば、何の問題もないですけどね。ただ、パラシオはやってませんでした。ユーヴェがテベスジョレンテを守備に戻らせるのは、こーいうパターンで崩されるを警戒している為です。去年のバイヤン戦で、散々やられたんで、FW二枚戻すようにしたんでしょう。



ちなみに、この試合の3点目は、ユーヴェのスローインからなんですが、ものスッゴイ美しいスクリーンプレーが決まってるので、紹介しときます。


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こうですね、これ図でも説明しときますが、スローインからのスクリーンプレーで、


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こーなります。これはスローインからのスクリーンプレーでして、実は日本代表もコレをやってます。スローインの際に、マンツーマン気味で守ってくる相手には、これは非常に有効です。



この試合、インテルは守備面では、セットプレーから、流れの中からと、両方ユーヴェに点を取られており、攻撃面では完全に封じられと、良いところが何もありませんでした。


コンテのユーヴェは非常に組織的なサッカーをしており、攻守にわたって11人で行い、セットプレーも戦術レベルで洗練された、非常にコレクティブなチームを作ったという印象です。はっきりいって、これ、去年より上のチームになってますね。特にジョレンテが印象に残ってるんですが、攻守に渡って、非常に重要な役割を担ってます。


ついでに、こないだのミラントリノの試合の話をちょっと


最後に、ちょっと寄り道というか、ミラントリノの話をしときます。



こないだのミラントリノ戦なんですが、本田があんまりよくなかったので、本田がイタリアメディアに酷評されてました。ただ、内容的にみると、ミランのほうなんですけど、戦術面で煮詰まってないって印象です。コンテのユーヴェと比べての話なんですが、ボランチ、FW、WBの連携が上手く行ってません。


どういう事かってーとですね。

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これ、こないだのミラントリノのマッチアップです。ミランは4231、トリノは352です。でもって、トリノは5-3でブロック組むんですけど、その際に、ユーヴェと比べて、FWのプレスバック、ボランチへのマークは断然緩いんです。


だから、ミランのほうは、3の両脇に当ててから、ボランチに戻すことで、ミランボランチがフリーでボール持てる状況を作れてました。ただ、問題はその後で、


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ここなんですけど、ムンタリが動かないんですよ。このシーンだと、ムンタリがフリーランかけてれば、トリノのアンカーを最終ラインに吸収させる事ができるので、バイタルにカカーがカットインするスペースが作れる。なのに、ムンタリは動かない。「なんじゃこりゃ」と思ったシーンで、呆然としました。


で、その後の攻撃もずっこけたんですけど、


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どうなってるの?これ?と思ったシーンで、ここ、ロビーニョはカットインからミドル打つか、それが出来ないなら、ムンタリとワンツーでニアを抉るべきなのに、その動きが全くない!!!それどころかムンタリは、空いたニアのスペースでなく、マークついてる本田にパスとか、マジ、こいつ、何とかして!!と思ったシーンです。


ちなみに、正しいビルドアップってのはミランの先制点の時のやつで、


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これですね。こういう風にきちんとパス&ゴーをやれば、相手は3ボランチ、FWのプレスバックがほとんどないってチームなんだから、あそこに起点作って崩せるはずなんです。




トリノ戦なんですけど、本田が酷評されてましたが、まあ、ちょっとアレなプレーもしてました。どういうのかってーと、

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このシーンなんですけどね。単純な個人技だけでは、セリエAのDFは崩しにくいです。ユーヴェの話をしたんで比較としては良いプレーですけど、ユーヴェが非常に組織的なプレーをしているのに対して、ミランのほうはちょっと個人技に走りすぎです。そんなモンスター級のプレーヤーなんて、今のミランにはいないんだし、もっと連携を磨かないと・・・。


この場面でいうと、


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まあ、こういう動きなんですけどね。



その後、ミランで又、ずっこけるビルドアップがあったんですけど、


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こんな感じです。ピルロがいりゃあ、あそこで前むいてスルーパス確実に通してくれるんですけど、そこにいたのはムンタリでした。ムンタリは、これだからやめられません。ネタ的には最高に美味しい選手なんですが、本田がミランにいるので、あまり笑えませんでした。本田さえいなければ、最高に楽しめるのですが、本田がいるので、楽しめない状態です。



この試合のミランに関してなんですが、とにかく連携が適当すぎます。ユーヴェの試合を見た後だと、本当に連携がつたないです。パス&ゴーひとつとっても、ユーヴェとは雲泥の差があります。ユーヴェがセットプレー、ポゼッションともに連携が熟成しているのに対して、ミランは、もうさっぱりって状況でした。特に問題だったのが、ボランチ二人(ムンタリモントリーボ)と、WG二人(本田とロビーニョ)の連携に難があって、もっとお互いに信頼してパス出せよ、出したら動けよ、WGの為のフリーランしろよ、という感じで、見ていて切なかったです。もっともモントリーボはマシな方でしたけどね。




そんな訳で、本田については、とにかくボランチとの連携を深めていくことが、この先、大切だと思います。カカーとはそこそこあってきてますが、ボランチ二人との連携がちょっとまだ拙いです。



ま、今日はそのあたりで。


ではでは。

イングランドプレミアリーグ第24節 シティ対チェルシーのレビュー

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さて、皆さん、こんにちは。本日は、今週月曜に行われたシティ対チェルシーのレビューでもしたいと思います。ちょっと時期的にレビューやるには遅すぎた感じもしますが、最近、モウリーニョの話をちょこっとしてたので、モウリーニョのサッカーの話もかねて、やっときたいと思います。


ちなみに、スタメンのほうは



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こーなってました。シティのほうはデミチェリスボランチになってたのが特徴で、チェルシーのほうは新加入のマティッチがボランチに入ってます。


でもって、レビューになる前に、シティってチームの特徴から始めます。このチームは特徴ある攻めをやります。


マンチェスター・シティの攻撃面での特徴


で、まず、シティってチームの特徴なんですけど、チリ人のペジェグリーニが今、監督やってますが、赤い方のマンチェスターのチームと違い、両サイドにWGを張らせないサッカーやります。どういう事かというと、攻撃時に、


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こんな感じに変形します。2422みたいな感じになります。このポジションチェンジの時に、シティのキープレーヤーになるのがダビド・シルバでして、彼はレフティなんですが、サイドに張って縦に行ってクロスってプレーはしません。ポゼッション時には中に入ってきて、トップ下としてプレーします。でもって、シルバの開けたスペースには、ボールが左サイドにある場合、左SBが上がって来ますし、ボールが逆サイドにある場合、FWが一枚流れて来て使います。ここはシルバのポジション次第です。ダビド・シルバなんですが、彼はシティの攻撃時はほぼフリーマンでして、場合によっては、逆サイドまで流れてきます。


でもって、ダビド・シルバのシティでの役割なんですが、図で説明しますが、



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この白い円で囲ったエリアでボールを引き出して前を向き、そこから違いを作り出すって感じなります。ダビド・シルバがあそこでボールを受けて、前を向いた時にシティの攻撃はスイッチが入ります。ここでのポイントとして、シルバは、右サイドにまで頻繁に流れてくるって所になります。チェルシーはゾーンで守るので、シルバが右サイドに流れてきた場合、そこまではSBは追えません。なんで、このシルバを誰が見るのかってのが、このシティとやる場合、非常に大きな問題になります。これは、この試合でも、チェルシーに大問題を引き起こしており、これは試合のキャプでやりますが、



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こんな具合で、ギャップでボールを引き出すシルバがチェルシーの大問題になってました。


この試合、チェルシーは中央にウィリアン、ダビドルイス、マティッチの3人を置いて守ってましたが、シティは中央にシルバ、ナバス、ヤヤ・トゥレデミチェリスがいる状態なので、中盤センターでの守備に問題を抱えていました。



シティとやる場合に、相手チームが頭を悩ませるのがコレでして、チェルシーは、前半20分あたりまで、この中に入ってくるシルバを捕まえてきれておらず、前半17分には危うく失点ものシュートをシルバに打たれてました。


ただ、前半20分あたりからなんですが、ダビド・ルイスかマティッチが必ずシルバをマークするようになって、シルバを封じようとしてます。ただ、それやってると、シルバにボランチが引っ張られるので、そうくるなら、


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シティはこーきます。シルバにボランチがつくなら、シルバのポジショニングでボランチ引っ張って、ダブルボランチの間を広げて、真ん中に楔を打ち込んできます。



基本的にシティってのは、こういった形で攻めてきます。スペインとかで見るタイプのチームでして(ペジェグリーニはスペインで監督やってたので当然ですけどね)、プレミア的かってーと、ちょっとばっかり毛色が違います。WGのスタートポジションはワイドでなくて、中です。ナローワイドとか言われるタイプで、WGにトップ下タイプを起用するタイプのサッカーです。




んでもって、次にモウリーニョのシティ対策について


さて、こっからが、今回のエントリの肝です。シティの攻撃の話をしてきたのは、モウリーニョのシティ対策の話に繋がるからです。シティの攻め方を、ここまで説明してきましたが、これは、モウリーニョが、このシティの攻撃に対して、どう対応しようとしたのかって話に繋がる。



モウリーニョチェルシーはシティに押し込まれると、


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こんな感じで9枚でブロック作って守ってました。シルバが中に入ってくるので、ウィリアンが中盤センターでの守備に下がってくるのは必須でした。ただ、それでもシティの分厚い攻めに対抗できていたかってーと、そうでもありませんでしたが・・・・(シルバに頻繁にギャップを使われてしまっていた)



ただ、モウリーニョの方のシルバ対策ってのは、そこじゃねぇんです。モウリーニョのこの日のゲームプランなんですけど、これ、このゲームのヒートマップに良く出ているのですが、


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これです。



まず、チェルシー陣内中央に選手が集まってるのがわかると思いますけど、これは中に入ってくるシルバを潰そうとDFとボランチが頑張っていたからで、あそこを潰さないとシティ相手はダメです。バイタルでシルバにボール受けられて前向かれると、チェルシーのDFでも耐えきれません。


そしてもう一つ。チェルシーは右サイドを集中的に使って攻撃してました。もう徹底的に、容赦なく右狙いです。何で、右狙いなのかってーと、これは図でやりますが、



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このシティの左SBの裏は常に空いてるんです。シルバが中に入る以上、幅を作る為に左SBが上がらないといけないため、あそこはガラ空きになります。また、シルバは頻繁に左サイドから右サイドにまで出張してくるため、攻守の切り替えの時、戻るのが必然的に遅れます。そのため、


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ここが空くんです。なので、カウンターで攻めきれなくても、シルバが戻り切れてないのを利用して、白で囲ったスペースを利用して、攻撃を仕掛けることができるんです。



この日のモウリーニョのゲームプランは、ここ狙いでして、もう延々と、あそこを狙った速攻を繰り出してました。で、それが報われたのは、前半30分。


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こうなりました。これでチェルシーが先制に成功します。


この試合なんですが、


逆サイドにまで流れてくるシルバを使った数的優位アタックをメインにしたシティ
VS
戻りがどうしても遅くなるシルバとシティの左SBの裏を狙った速攻メインのチェルシー


って形で両チームの思惑ががっちりと噛み合ってまして、非常に面白い試合でした。



ちなみに、両チームの狙いをちょっとキャプで説明しときますが、後半開始直後も変わってません。

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シティのほうは逆サイドまで出張してくるダビド・ルイスを使って数的有利を作ろうとする。もし、ここでダビド・ルイスがバイタルを捨ててサイドに出てくるなら、中央二枚のFWに当ててきます。


一方で、チェルシーも分かりやすい攻めをやってまして、

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この日のチェルシーの速攻は一次速攻と二次速攻の二段階に分かれてます。一次速攻ってのは、言うまでもなく、シティの左SBの裏を一気に使ってする速攻。で、次が戻りが遅いシルバのポジを使った速攻です。こっちは図でやりますけど、


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こーですね。よく考えられたゲームプランだと思います。このあたりは流石のモウリーニョ



最後に

この試合なんですが、シティが先制してれば、さっさとシルバをトップ下に上げて、左WGに守備できる奴いれてモウリーニョの速攻狙いを封じ、カウンター狙いに切り替えることが出来たんですけど、チェルシーが先に先制してしまったので、それが出来なくなったってのがペジェグリーニとしては痛い所でした。




この試合のレビュー書こうと思ったのは、「両チームの狙いがはっきりしてて面白い試合だなあ」と思ったからでして、シティが数的有利アタックから先手を取ろうとするのに対して、チェルシーは後手で、シルバの戻りの遅さを利用して点取ろうという意図が最初から明白だったからです。ひじょ~にわかりやすい試合でした。


こーいう試合だと、先制点が非常に重要で、シティが先制できれば、ペジェグリーニは即座にモウリーニョの右サイド狙いを潰しにかかったでしょう。ただ、逆にチェルシーが先制したんで、ペジェグリーニは「右を狙われているのはわかっているが、シルバをトップ下にあげてしまうと数的有利アタックが出来なくなってモウリーニョの思う壺になる」って感じで、動きが取れなくなってました。



個人的に、モウリーニョの右サイド狙いが明確になった時点で、シティサイドが、何かプランBを見せてくれるんじゃないかと思ってたんですけど、まだシティにはそれが無いようでした。この辺りは、シティの今後の課題ですね。



今日はこの辺りで。


ではでは。

マンチェスター・ユナイテッドのサッカーの問題点の話

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さて、皆さん、こんにちは。最近、サッカー系のブログで、マンチェスターユナイテッドの話を見ないことがないという位、ネタにされているモイーズ監督と愉快な仲間達のサッカーですが、本日は、うちのブログでも、その流れにのっかって、ユナイテッドネタをしようと思います。


何がいけないって、「全部だーーーーーーーーーーー」と言いたい所なんですが、守備の話ばっかしても、つまらないので、今日は攻撃方法に焦点を当ててお話します。皆さん、攻撃の話の方が好きでしょうしね。





これは、最近、超話題になったフラム戦でのクロス集です。この試合、ユナイテッドは81本という記録的なクロス数を上げており、それでサッカー関係のブログの話題を独り占めにしてました。


で、なんですけど、これもう、他のブログでも散々話題になった奴ですけど、現在のマンチェスター・ユナイテッドの問題点について、一言でまとめてしまうと、「バイタルエリアを使った攻撃が出来ない」って事につきます。



フラム戦なんですけど、「一番、このシーンがこのチームの現状をよく表している」って思ったのが、前半24分のユナイテッドの攻撃シーンです。



一連の流れをキャプでやりますが、


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まず、ここ。これね。ドルトムントなんかがよくやってますが、ライン際にいるWGにあてて、内側をSBが回ってリターンをもらうって攻撃が、このシーンで出来たかもしれないんですけど、それをやらないんです。まあ、そういうのは、チームとしてはやってないんだから、いいだろっていうなら、別にいんですけど、


で、次。
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ここも謎なんですが、右WGのマタが中に入ってきてるわけです。でもって、ヤングが顔上げると同時に裏に走り出す。この時、普通、ファンペルシが降りて行く動きと、マタが裏に走る動きを組み合わせるモンなんですけど、その動きがファンペルシに見られないんです。「???」って感じで、謎でした。その上、マタが中に入ってきてるのに、サイドチェンジしても、逆サイドで数的有利は作れません。



でもって、次

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この前の二つのシーンで、ユナイテッドには仕掛けるタイミングがありました。ただ、サイドチェンジした結果、バイタルにスペース作れたので、ここは悪くありません。でもって、キャリックがバイタルに出来てるスペースに入ってきて、ラファエルからパスをうけ、ボールをルーニーにダイレクトでパス。ここまでは完璧でした。ところが、ルーニーが前方にパスがだせる体勢なのにも関わらず、斜めに裏に走る奴がいないんです。ここね、詳しくみるとルーニーは一回トラップしてからニアみてるんです。ルーニーだったら、ココ、裏に出せます。だから、走り込めばいいのにね。




で、次


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これは、マタ、気の毒に・・・と思ったシーンなんですけど、たった2秒たらずの流れですけど、とにかく遅いんですよ、ユナイテッドは。マタにボール入れたら、即座に動かないといけないのに、ヤングが動いてない。だから、マタはパスをだせずに潰されてしまう。




このシーンなんですけど、ユナイテッドの現状が凝縮されてまして、このチームね、バイタル使った攻撃が極端に下手なんです。バイタルでワンタッチのパス交換して裏を取るって攻撃が出来ない。というより、そもそも、やる気がないといったらいいか。



ヒートマップ張っときますが


フラム戦

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アーセナル

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相手チームのバイタル使った形跡がほとんど無いんですね。真ん中スカスカ。これね、バイタルで前むいてナンボのマタとか香川使う意味がありません。また、バイタルで前むいても、外の連中が斜めに走り込まないんじゃ、バイタル使う意味ないだろって話です。



でもって、このシーンで、マンチェスター・ユナイテッドがどういう攻撃したら良かったのさ?って話になるんですけど、これ、似たようなシーンで、ベニテスナポリ(4231)がどういう攻撃してたかってのを見てもらうと、違いがよーくわかると思うので、ナポリミランの試合のキャプで説明しますわ。




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こーなりました。これね、見たときは「うわあ、すげえ、攻撃・・・・」と唸ってしまいました。



これね、よりわかりやすく、図でもやっときますけど、


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これね、本当によく考えられている攻撃なんです。最初に降りてきたFWにCBがついてこないなら、FWに楔を打ち込まれるだけだし、CBが開けたスペースに走り込むボランチに、ミランボランチがついていかないと、そこにボールをつけられる。ボランチが開けたスペースに降りてきたWGにSBがついていかないとWGに前を向かれるだけ。どのシーンでも非常に悩ましいんですね。



こないだのミランナポリなんですけど、ナポリサイドが信じられないほど良いサッカーを見せてまして、正直、セードルフが気の毒になりました。ベニテスナポリは完成に近づいており、攻守に渡ってミランを圧倒してました。5-1くらいになっても全然おかしくなかった。セードルフは監督一年目なんですけど、ベニテスみたいに監督20年やっててCL取ってる監督との差は歴然としてました。一年目の監督がベニテスに勝つってのは、そりゃ無理な相談で、あの試合の事はさっさと忘れた方が良いと思います。



でね、マンUの話にもどりますが、とにかく攻めに工夫がないんです。ここ3試合ほど、パス&ゴーやってるの、マタしかいません。他の連中、パス出しても動かないし、バイタルでフリーの奴がいても、そっちに出さないでクロス上げてます。というか、マタの使い方を根本的に間違っていて、


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アーセナル戦でも、こんなシーンがありました。頭オカシイ。このシーンね、キャリックが画面に写ってないんですけど、右サイドにいるんですよ。だから、キャリックはフォローにこれる。スモーリングがマタに出してから、大外回って、一人DF引っ張って、それと連動してキャリックがマタのフォローに周り、マタのカットインから、キャリックとワンツーすればいいのに、いきなりスモーリングがクロス。


こんな事やってるうちは、マタらしいプレーは永遠にユナイテッドでは出ませんわ。攻撃の組み立てってもんがありません。サイドチェンジしてドリブルしてクロス、こんだけです。このチームがやってるのは。


基本的に、サッカーでは裏を取るためには、


・ドリブル突破
・コンビネーションによる突破
・裏を狙う動きと組み合わせたスルーパス


の三つがあるんですが、ユナイテッドはドリブル突破しかねーんです。コンビネーションはどれも下手だし、裏を狙う動きが妙に少ないし、ろくなパサーもいねーです。キャリックはフリーでもなんでか無視されてるし、斜めに走り込む奴がほとんどいないし。創造性のあるプレーが少ないって文句を言う前に、前の連中が地蔵なのと、コンビネーションの下手糞さを問題にしたほうがいいです。



そんな訳ですんで、こんなサッカーやってるうちは、マタの補強は、補強にならないとまとめておきます。パス出した後にマタ以外、誰も動かない、バイタルでボランチ、マタがフリーでも縦に行ってクロスなんてプレーばっかしてるうちは、マタがやる事なんてクロス以外にはありません。



それと、アーセナル戦でも、マタはしょっちゅう中に入っていたのですが、「左サイドで香川みたいなプレーしてると交代させられるんじゃね?」とか思ってたら、72分で交代させられてて乾いた笑いしかでませんでした。


左サイドから中に入ってくる香川が早めに交代させられているので、マタもそうなるんじゃねぇかなとは思っていたのですが、ホントに交代させるとは思いませんでした。60億で買ったんだし。



去年もそりゃ、クロス多かったですよ。でもね。去年は、例えばアストンビラ戦で、ファーガソンルーニー、香川、キャリックでセンター組んでました。理由は簡単で、アストンビラは前二人が守備やらないんで、中盤中央の守備者がボランチ二枚しかいない事が多い。だから、ルーニー、香川、キャリックの誰か一人はフリーになれる計算で、そこから展開していけば中盤を制圧できる。あの試合、マンUにしては珍しく、中盤で流れるようにパスが回ったんですけど、理由はそういう事です。ただ、今年に入ってモイーズが監督になってから、そういう類の工夫は全くみられなくなりました。


モイーズは、もう馬鹿みたいに毎試合、同じ事をやってるので、ホントにウンザリしてます。そりゃ手の内読まれて勝てなくなりますよ。



最後に、これ、CKの守備の話になるんですけど、ユナイテッドの大きな問題でもあるので、触れときます。


これ、アーセナル戦の24分のCKと、61分のCKで、どっちもアーセナルにスクリーンを狙われて、それでフリーでヘディングされてます。特に61分の奴がキレーに決められていて、


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ここ、キレーにスクリーンかけられてマークずらされてます。24分でもやられかけましたが、ユナイテッドの試合みてるど、CKでスクリーンかけられてマークずらされてるのをしょっちゅう見るんで、いい加減、何とかしろやと言いたいです。


勿論、CKをマンツーマンで守ると、スクリーンに脆くなるってのは、ある程度しょうがないのですが、マンツーマンやるなら、スクリーン対策はしとかないとダメなんでね。絶対に相手チームは狙ってくるので。ベンゲルがスクリーン狙ってきたのは当然なんです。


今日はこのあたりで。ではでは。


2014年セリエA第24節 ミラン対ボローニャのレビュー 「セードルフは何がしたかったのか?」

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さて、皆さん、こんにちは。本日は、先日行われたミランボローニャのレビューでもしようかと思います。ちなみに、内容は1-0でミランが勝ってます。バロテッリのスーパーゴールでの勝利でした。本田はスタメンで出場し、後半21分までプレーしてます。


あの試合は、「書く内容とかあんのかよ?」とか言われそうですが、セードルフミラン、ほんのちょっとですが、やりたい事は見えてきたので、それについて、まとめておきたいと思います。


ちなみに、両チームのスタメンなんですが、


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こうなってました。ミランが4231、ボローニャが352です。


でもって、このマッチアップだと、ミラン側は、どう攻めればいいかってーと、


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この赤で囲ったギャップを、いかに上手く使っていくかって所がポイントになります。アンカーの両脇、3ボランチの両脇のスペースです。でもって、マッチアップ的に、


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この赤で囲ったスペースでミランのSBは絶対にフリーでボールを受けられるので、ここからミランは攻撃を始めることになります。ミランボローニャでは、ミランは、このスペース使って攻撃をスタートさせてました。ここまでは当たり前の話といって良いレベルでして、さて、こっから、ミランはどうだったのか、という話になるわけです。


ミランボローニャの前半、連携が上手く行ってないミラン


この試合の前半の話から始めますが、前半、ミランは連携が上手くいってませんでした。ミランは連携が上手くいってないって話は、前回ミランの話をちょっとした時もしましたけど、この試合の前半、特にそう感じました。でもって、どういうシーンで、連携が上手くいってないと感じたかってーと、前半7分のシーンなんですけど、



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この流れですね。バロテッリって選手なんですけど、この試合、もの凄いロングシュート決めてまして、全てをチャラにしてますが、こーいうアレなプレーをする事があるんですよ。この場面、素直にモントリーボかターラブトにボール落として、そこから斜めにゴール前に走り込むカカ、本田、左SBに縦パス入れればいいだけなんですけど、無理矢理、自分でターンしようとする。この後、モントリーボが怒ってましたけど、当然だと思います。




この日のセードルフの狙いは、こーです。センターアタックの場合、これは図でやっときますが、



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こーいう狙いですね。これを狙ってるのはすぐわかりました。上手くいってませんでしたけど。サイドチェンジする所までは上手くいってましたが、その後が、ちょっと拙かったです。





で、もう一つ、ミランの連携がビミョ~と思ったのが、前半9分のシーンで、


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もうね、ここアホかと。ここもミランは右からサイドチェンジして左WGのターラブトにボールを渡せた。ここまではgood!って感じだったんですけど、その後のフォローが鈍すぎるんです。即、トップ下かボランチがあのエリアにフォローにこないといけないのに来ない。ターラブトは5秒ほど時間作ったんですけど、あのエリアにフォローに誰も来ませんでした。


ミランの連携が悪いって話を、以前、本田の話をした時にちょっとしましたが、この試合の前半でも、そういうシーンがしばしば見られました。フォローが遅いんですわ。



ここまでミランの左サイドの話ばっかしてきたんで、右サイドの話もしますけど、前半4分のシーン、右サイドでいい連携がありまして、


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こんな感じで裏取ってました。これはとてもいい感じの連携です。ただ、この後、右SBのデシーリオが二匹目のドジョウ狙って本田に縦パスいれて内を回ってワンツーしようとしてましたが、セリエAのDFが二回も同じ攻撃でやられる事はありません。二回目からはきっちり対応されてしまってました。




もひとつやっときますが、


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こんなのもありました。こっちも狙いとしては悪くないんですけどね。ただ、ターラブト、PA内に入っとけよ、というのはあります。ここでもそーですが。



ミランボローニャの後半、セードルフミランがちょっと前進


この試合で、大体、セードルフの狙いはわかったんで、今日はそんな話です。こっからメインディッシュになります。ちょっと、セードルフが叩かれすぎで、フォローしたい気持ちに襲われたので、彼の戦術を幾つか紹介しときますが、



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このシーンね。ここ、途中まではホントに良かったんですけど、本田が最後の所で、ちょっとボール持ちすぎてしまいました。最後、バロテッリとワンツーしてれば、バイタルでフリーで前向けたんですが。


これ、図でやっときますが、

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まあ、こういう連携なんですけどね。降りてきたCFに楔を当ててスペースに動き直してリターンを貰うって横のワンツーです。このシーンについては、本田のプレーに難がありました。バロテッリからリターンパスが来る事を信じてパス出すべきでした。(リターンが来るかどうかビミョ~な選手ではありますが)



真面目な話、後半になってから、ミランのほう、連携面で良くなりまして、バロがよく動くようになったんです。ただ、本田がちょっと・・・ってプレーを後半開始直後に二つほどやってしまってました。一つはすでに紹介した奴、もう一つは、


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ここなんですけど、ボローニャのアンカーがデヨングに食いついてるんです、ココ。だから、バイタルには誰もいない状況でした。だから、本田が中央方向へターンするか、バロテッリにフリックでボール流して、中央に動き直してリターンもらえればバイタルでフリーで前向けたんですが、SBに出しちゃったんですね。


この後、もう1度、ミランが右でビルドアップしてたんですけど、


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こっちは本田が下がる動きでスペース作って、そこに流れて来たバロテッリの個人技でのターンですけど、バロテッリはコレが出来るんですわね。このターンは「おお、上手い」と感心しちゃいました。



えっとですね、セードルフミランなんですが、就任当初に比べると、大分マシになってきてます。これマジで。


ってのも、最初、4312から4231にシステム変更した時は、選手がどう動いていいかわからない状態で、個人技以外に打開方法がなかったんですけど、少しずつ、連携が取れるようになってきてます。


といっても、まだ連携が拙いってシーンもあって、これもう一つやっときますが、


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このシーンなんですけど、カカが絶好の位置で前むけた訳です。この時、本田は斜めにゴールに向かって走ってWBを引っ張るか、本田がちょっと降りる動きを入れてWBを引っ張り、その後、カカと横のワンツーのパス交換をしてから、カカがSBにパスを出せば、ミランのSBが裏を取れていたと思うんですが、ここでは、そーいう連携に至りませんでした。


この後、本田は交代させられて、カカが右サイドになったんですが、その時、カカが結構、良い感じでビルドアップしてたんで、紹介しときますね。


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これね。こいつは前回、本田の話をちょっとした時、本田とモントリーボでやって欲しかったプレーです。もうひとつ、


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こーいうのです。これ、右サイドで本田が参考にすべきプレーで、「カカ、右サイドも全然イケるじゃんか」と思ったシーンでもありやす。




本田は右サイドで、どんなプレーを求められているのか?という話で〆ます


これ、最後の話になります。ちょっと戦術マニアックな話になりますが、ボローニャ戦みて、セードルフが右WGに何して欲しいかは、大体わかったんで、本田が右サイドでどーいうプレーを求められているかについて、まとめておきます。ちなみに、内容的には、セリエAで流行ってる352相手をした時に、求められる動きです。



とりあえず、この試合みた限りだと、6種類ほどありました。それぞれ、図で説明しときます。


1、本田とSBのワンツー


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2,本田とバロテッリのワンツー



3,本田のフリックからの展開




4,CFがサイドに流れる動き


5,本田のカットイン


6,本田のプル&アウェイ


大体、この六種類になります。連携面に限った話では、こういったプレーをやろうとする意図は見えました。とりあえず、本田については、今後も右WGで使われると思うので、これらのプレーの精度を上げていくことが求められます。




ちなみに、こういった連携が今のミランに最も合っているかどうかは、この後のミランを見てみないとわかりません。本田はトップ下のが向いてますが、カカがいる限りは、ミランの右WGでやるしかないので、とにかく連携面を深めて欲しい所です。単独で何か出来るかってーと、それはちょっと難しい感じですしね。


ま、今日はこのあたりで。ミランウォッチは続けるつもりなんで、何か、セードルフが新しい事始めたら書いていきます。


それでは皆さんごきげんよう。

グアルディオラのバイエルンのお話

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さて、皆さん、こんにちは。先日、CL決勝ラウンド一回戦が行われまして、バイエルンアーセナルの試合がありました。内容的には、途中でアーセナルのGKのスチェスニーが赤紙+PKで退場食らってしまい、そこからは一方的な展開になって、バイエルンが2-0で勝ってます。アウェーで2-0なんで、ほぼバイエルンの勝ち抜けは決定ですね、こりゃ。


でもって、なんでペップバイヤンの話を急にする気になったかというと、



戦術大国イタリアが脅威の分析「ペップ・バイエルンはたった1つの練習しかしていない」



こいつのせいです。



これは、先日発売された「欧州サッカー批評」の記事でして、


欧州サッカー批評(9) (双葉社スーパームック)

欧州サッカー批評(9) (双葉社スーパームック)



この中にバイヤンの分析が入ってたからです。内容的にはグアルディオラバイエルンの夏キャンプの内容をイタリアサッカー協会のスタッフがスカウティングして、内容をレポートにした奴を下敷きにした記事です。バイヤンの夏合宿は、非公開の練習もあったんですけど、山に登って上から偵察してたそうです。


でもって。


あのですね。バルサとかグアルディオラバイエルンの練習メニューって、内容を知ると、結構ガッカリしちゃう事もあるんです。


これ、「監督ザッケローニの本質」って本の巻末にザックのインタビュー載ってますが、ザックは343をチームでやる前に、ゼーマンの433、クライフの343の練習を見学しに行ってます。その部分を引用しますけど、

「ホテルを経営していて夏が一番忙しかったから、他のクラブのプレシーズンキャンプを見に行って勉強することもできなかった。初めて他のチームの練習を見に行ったのは、ボローニャをクビになった年だから、93年のことだ。一週間ゼーマン(当時フォッジャ)の練習を見に行った。3トップの攻撃のメカニズムに興味があったんだ。ただ、中盤が薄くなる4-3-3というシステムはあまりピンと来なかった。その時点ですでに、3トップで戦うために後ろを3バックにするというアイデアが頭の中にあったからね。それで、クラフの3-4-3を見る為にバルセロナまで行って、安いホテルに泊まってね。彼の3-4-3は中盤が菱形で、トップ下にバケーロ、底にグアルディオラを置いていた。3試合みたけど全部負けだったよ。練習の内容もあまり好きではなかったな。」


って述懐してます。



まあ、これについては、イタリア人監督だし、そんなモンだろうなって思うわけです。アンチェロッティなんかは、「手持ちの練習メニューは多ければ多いほどいい」なんて言ってますし、イタリアサッカー自体、早い段階からスポーツ科学の適用が進んでいた陸上競技のメソッドをサッカーに採り入れて、サッカー選手のアスリート化を進めていた場所でもありますしね。



バルサの事を知らない人は驚かれるかもしれませんが、バルサの練習メソッドは、ホントにシンプルです。バルセロナの事を扱った本は山ほどありますけど、その練習メソッドについては、本にできるような事がありません。何でかというと、ホントにただ一つのことしかしないからです。


最初に紹介した記事から引用しますが、

 実際、私が協会の名を受けて赴いたトレント(伊北部)での合宿でも、行われていたトレーニングは事実上“1つだけ”だったのですから。


 バルサや現在のバイエルンを知っている方々ならばともかく、そうではない一般のファンであれば半ば信じ難い話なのでしょうが、そのトレーニングは驚くほど“シンプル”です。


 誤解を恐れず言えば、それこそ見ている側が拍子抜けするほどの“軽さ”です。具体的なメニューと言えば最初から最後まで“ロンドス”だけなのですから。ただ、後述する通り、その実態はといえば決して軽くはないのですが。




戦術大国イタリアが脅威の分析「ペップ・バイエルンはたった1つの練習しかしていない」 より

これですね。欧州サッカー批評にもっと詳細なトレーニングメニューも載ってますが、グアルディオラの練習メソッドのメインメニューは、



1、フォーミングアップ 5分弱
2、ロンドス(4対2) 15分
3、ロンドス(4対2+3フリーマン) 20分
4、ロンドス(7対7+3フリーマン) 20分



以上、60分で終了です。ホントにこれだけ。ずーっとロンドス(鳥かご)やってるんです。夏キャンプの初日から、ずっとこれ。7/5~7/11までのトレーニングメニュー(非公開部分含む)のメニューの詳細レポートも欧州サッカー批評に載ってますが、それをチェックすると、大体、7割はロンドスです。残りの3割がミニゲーム、戦術練習、シュート練習、セットプレーの練習になります。シュート練習とセットプレーの練習に1週間で割く時間なんて、合計で40分くらいです。



夏キャンプなんて、普通は走り込みと戦術練習やるモンですけど、グアルディオラの場合、初日からひたすらロンドスやらせるんですね。



で、このやり方、バルサの奴と同じで、バルサの場合、トップチームからカンテラ(育成)まで全部一緒なんです。チャビのインタビューにありますけど、


──それが「チャビ」というプレーヤーの原点ということだね?


【チャビ】まあね。そして、それがバルサの原点でもある。サッカーについて言えば、マシアでは1日目からあることの重要性を教えられるんだ。何だと思う? ボールポゼッションだよ。ボールを相手に渡さないためにどうすればいいのか。基本は3つある。まず相手選手とボールの間に自分の体を入れること。次に、ボールを自分の置きたい場所にコントロールすること。そして、パスを出す時は最もいいポジションにいる選手を選択すること。この3つを1年間、とことん反復するんだ。2年目、また同じことを繰り返す。3年目、やっぱり同じことをやる。するとどうなるか? 何も考えずにボールを回せるようになるわけだ。パス回しはすべてがオートマチックに行われなくちゃいけない。こうやって、100パーセントの連動性が作られるんだよ。


──なるほど。バルサの“ティキ・タカ”サッカー(時計仕掛けのサッカー)はそうやって出来ているんだね。


【チャビ】そう。“ティキ・タカ”におけるキーワードは「責任」だ。ボールをキープするという責任からは誰も逃れられない。足元にあるボールは死ぬ気で敵から守る。自分の子供を守るようにね。なぜかと言うと、俺たちがやろうとしているサッカーじゃ、相手にボールを奪われる瞬間が最も危険だからなんだ。例えば、バルサミニゲームではゴールを置かない。だからシュートは要求されない。得点じゃなくて、どっちのチームがより長くキープ出来るかを競うわけ。俺たちがどれだけボールポゼッションを大事にしているか、これで想像が付くだろ?


──そのポゼッション戦術は完全にバルサ独自のものと言っていいんだろうね。


【チャビ】何とも言えないな。俺に言えることは一つ。バルサはこの方法をかつての監督、ヨハン・クライフの時代から続けてきたってこと。そして、今のところうまく機能しているってことだね。その証拠に、スペインでは子供たちの多くが自然とバルサのファンになる。みんなマシアに入ってサッカーを学びたいと思う。だから、バルサのセレクションには何百人もの子供が集まるんだぜ。カタルーニャ地方だけじゃない。スペインの他の地域、それからヨーロッパの他の国でも、才能に恵まれた子供はみんなバルサを目指す。ここなら自分の能力が磨かれるって信じているんだろうね。



俺たちのジェネレーションはもっとでかいことをやれる」 チャビ(バルセロナ/スペイン代表)(2/2)


こんな具合です。バルサカンテラは、さぞ特別なトレーニングしてるんじゃないかとか思う人がいるかもしれませんけど、してないんです。延々とロンドスばっかしてるんです。最先端の陸上競技のトレーニングメソッドを使ったアスリート向けトレーニングとかジムトレとかやって無いんです。育成年代からひたすらロンドス。チャビの言うとおり、育成年代からひたすらロンドスやってます。



ザックがクライフの練習みて、あんまり好きになれなかった理由が、これでわかると思います。クライフ自身「セットプレーの練習をする暇があったらパスの練習をしろ 」なんて言ってのけた人物ですが、ホントに練習でロンドスばっかやってる訳で、イタリア人監督の好みに合ってるとは思いません。この辺りは、クライフの右腕だったカルロス・レシャックも言ってますが、「イタリア式だとボールはほとんど邪魔者。 しかし、バルサでは、ボールは血であり、命の源」って喩えがわかりやすいかな。イタリア式とは相容れないような考え方ですからね。最近はイタリアも変わってきてるみたいですけどね。戦術練習やフィジカルトレーニングに結構な時間を割くイタリアとは、その辺り、全然違います。



そういう訳ですんで、ペップのバイヤンについては、練習メニューは、ほとんどロンドスだって事です。「そんな馬鹿な」って思う人もいるかもしれませんが、事実なんでしょうがありません。


ペップバイヤン、攻撃面の特徴

さて、こっからは割とマニアックな内容になりますが、ペップバイヤンの攻撃面の特徴になります。



ペップバイヤンのシュートまでのトレーニングパターンとして、上記の記事で紹介されているのは三つです。


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この三つですね。普通のワンツーと違ってるのは、裏に走るタイミングがツーで走るんじゃなくて、スリー、もしくはフォーのタイミングだって所です。普通のワンツーだと、相手DFはツーのタイミングで裏に抜けてくる選手についていくように訓練されているので、中々抜けられません。ですから、こうやってスリー、フォーのタイミングで裏に抜ける練習してるんですね。


これ、バルサやバイヤンの特徴でして、ワンツーを多用します。ただ、相手もそれがわかってるし、普通のワンツーだと読まれるから、スリー、フォーのタイミングで裏に走るって形を基本形として持っています。こういったコンビネーションプレーの多用が、バルサ、バイヤンの特徴になります。スリー、フォーのタイミングでラストパス出してきます。




ついでなんで、今回のアーセナル戦で、「ふむ・・・」と思ったプレーが幾つかあったので、試合のキャプ使ってやっときましょうか。



1、バックパスからの二列目、サイドの裏への飛び出し


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これ、ミュラーの得点シーンの流れです。バックパスをワンとすると、ツーのタイミングで動き出した選手はマークがついてます。これはDFがこのタイミングで裏に抜けてくる選手にはついていくって訓練されてるからで、ここで仕掛けると、大概マークに捕まります。なんで、スリーのタイミングで裏に抜ける選手に合わせてきます。バックパスから斜めに飛び出してくる動きまでが組織化されているので、対戦チームは注意が必要になります。


もひとつ、やっときますが


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こーきます。ツーのタイミングで飛び出すと、DFに捕まることが多いので、そっちは囮に使うことが多いんです。



2、スクリーンとワンツーの組み合わせ

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これは、ロッベンがPK取った時の流れです。ロッベンがカットインからクロースに当ててワンツーするだけなら、CBが止めることができたかもしれませんが、CFのマンジュキッチがCBにスクリーンかけていたので、ロッベンにフリーで抜け出されました。裏へのパスをいれる時、ワンツーでなく、スリーの動き(スクリーン)の後にいれてるのが特徴です。



3、クロースのミドルの時の流れ

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こっちはクロースのミドルの時のバイヤンの攻撃の流れです。最初、ロッベンがカットインからクロースに当てた時、「あ、ワンツーからスクリーン!」と思ったのですが、アーセナルの方も流石に2度はやられませんでした。ただ、サイドに開いてから、外を回られ、カットインされて、そこからダイアゴナルでボランチ引っ張られて、最後はクロースにズドン。ここもキレーに決まりました。まあ、10人じゃ、どうやったってバイヤンに勝てる訳ないので、しょうがないんですけどね。しかし、ここゲッツェが地味に良い仕事してるんですよね。必要な時に必要な場所にいるだけなんですけど。



こないだの試合、アーセナルが10人になってからは、ペップバイヤンのパス練習と攻撃戦術練習みたくなってましたが、まあ、あれはあれで、色々と見る事ができたので、それなりに学ぶことも多かったです。



最後になりますが、グアルディオラのバイヤンとか、バルサってチームは、基本的にスーパードリブラーの突破とコンビネーション以外に攻撃手段をもってないって位、尖ったチームです。ただ、コンビネーションの方は、普通のチームのワンツーと違い、スリー、フォーのタイミングでいれてくる為、DFが対応しずらいってのがあります。バルサとかバイヤンの試合見る時は、そういった所に注目してみると、色々と面白いと思います。


例としては、


1 サイドに開く→中に戻す→斜めに走り込んでDFを引きつけてギャップ作る→ギャップに走り込む選手にラストパス
2 サイドに開く→中に戻す→斜めに走る→スクリーンかける→ラストパス


みたいな事やってます。



今日はそのあたりで。ではでは。

サッカーにおけるスクリーンプレーの話

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ちょっとコメント欄で質問頂いたので、サッカーにおけるスクリーンプレーの話をします。僕はスクリーンと呼んでますが、サッカーにおいては、フットサルみたいにブロックプレーと呼ぶ人のが多いかもしれません。


サッカーでは、昔は「オブストラクション」、今は「インピード」と呼ばれますが、「相手競技者の進行を妨げる」行為に取られる反則があります。フットサルでも、「相手競技者の進行を妨げる」は反則です。



なんで、サッカーやフットサルにおけるスクリーン・プレーってのは、大体の場合、


「パスを出して次のスペースに動く過程で相手DFの前に立ち止まる」
「パスを受ける為に次のスペースに動く過程で相手DFの進路で立ち止まる」


って形で行われる事が多いです。これも露骨にやりすぎると反則取られますが。




フットサルでは、ブロッケイオ、エイトの動きがこれに当たります。


フットサルの基本の動き10 その7 ブロッケイオ(ブロック)


12 フットサルの基本の動き10 その8 オイト(エイト)のパス回し



フットサルの場合の具体的な動きは、上記の記事からどうぞ。



で、サッカーの場合なんですが、これ、「サッカー小僧」の2013年008号に、木崎伸也さんによる「ザック流スローイントレーニング初公開」って記事がありまして、ザッケローニジャパンスローインの連携戦術の図解が載ってます。その中に、スローインからのスクリーンのやり方が載ってますので、それを紹介しときますが、


一つ目

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駒野がスローインすると工藤が高萩の横を回って、同時に高萩が工藤のマーカーをブロックして、工藤をフリーにする動き。


二つ目

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駒野がスローインすると同時に、工藤がゴールラインに向かって動き、突如として進路をゴール方向に変える(Lの動き)。この時、豊田が工藤のマーカーをブロックすれば、工藤がフリーでボールを受けられます。たしか、これ、代表の試合で、1度、綺麗に決まった奴があったはずです。



こーいう奴です。サッカーの場合、セットプレーなんかでは、こういったプレーがたまーに見られます。



流れの中で、最近見たブロック・プレーとしては、ナポリミランの試合であったんですけど、


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コレですね。この動き、まんまフットサルのブロッケイオです。この場面だと、ナポリハムシクは、イグアインにスイッチした後、SBの裏に抜けようとする動きをしつつ、ミランのSBにブロックかましてます。この場面、マッチアップ的にはイグアインのマーカーはミランのSBなんですけど、ハムシクにブロックされたせいでマークがズレました。



これ、バスケみたいにやると露骨すぎて反則取られる為、「(パスを出してorパスを受けるために)次のスペースに動く過程に相手DFがいた」っていう演技も必要だったりします。


短いエントリですが、説明はこのあたりで。フットサルのが、こういったプレーを積極的に使います。サッカーでは、それほど使われませんね。CKやスローインの時位です。


ではでは。

書評「知られざるペップ・グアルディオラ」

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さて、皆さん、こんにちは。本日は、書評の方をやりたいと思います。今回扱う本ですが、先日発売された、


知られざるペップ・グアルディオラ サッカーを進化させた若き名将の肖像

知られざるペップ・グアルディオラ サッカーを進化させた若き名将の肖像


こっちの本になります。



本の内容なんですが、現・バイエルン監督のグアルディオラの半生を追った本でして、グアルディオラの生まれからバイエルンと契約するまでの彼の軌跡を追った本となっています。

【目次】

サー・アレックス・ファーガソンによるまえがき

[序章]ローマとニヨンでのハイライト/ローマでの欧州制覇/サー・アレックス・ファーガソンへの返答

[1章]なぜバルサを去らなければならなかったのか?/いくつかの理由 他

[2章]村の広場からカンプ・ノウの監督室へ/北スタンド7列目からバルサの象徴へ/バルセロナから外の世界へ 他

[3章]バルセロナの監督として/伝説の始まり方/2つのきっかけ/選手たちとの愛憎劇/赤い悪魔との2度の欧州頂上決戦/モウリーニョとの関係――抱擁から確執へ 他

[4章]なぜバイエルンを選択したのか?/充電期間と、様々な噂/故郷を遠く離れ、ミュンヘン

[補章]ペップとバルサ原風景と功績

バルサ関連の書籍は沢山出ているので、内容的には、結構知っている事も多かったのです。特に、バルサのトレーニング内容とか、その歴史なんかは、ネットで読める記事でも十分補える時代ですからね。



でもって、この本の中で、グアルディオラという選手・監督がどうやって形作られたかってのは、本の中で、ヨハン・クライフが簡単にまとめてくれているので、そっちを引用しときます。

クライフは言う。「グアルディオラは賢くならなければいけなかった。あの頃の彼には、それ以外に選択肢が残されていなかった。彼は少し私に似ていたかもしれない。相手の選手と身体がぶつかり合うのを避けるためにはテクニックを磨き、ボールを素早く動かさなければならない。周囲を見極める力も必要になる。ドミノ効果だよ。そういう努力をしているうちに、細部が鮮明に見えてくるようになるんだ。これは選手にも、そして監督にも当てはまる。グアルディオラは細身の体格のおかげで、こういう考え方を学ぶことができた。同じことを経験した監督に出会えたことも、運がよかったかもしれない。」

グアルディオラは選手として、又監督として、ヨハン・クライフとカルロス・レシャックの二人に強く影響を受けたと言ってますし、監督になってからは、特にフアン・マヌエル・リージョから多くを学んでいます。リージョは監督として、タイトルを沢山取ってはいませんが、若い頃から監督をやっており、グアルディオラは、監督になってから、わからない事(特に守備面)がある度に彼に電話しています。もっとも、このあたりは、すでに知っていたので割愛。



この本で、僕がほとんど知らなかった為、「あー、そういう経緯だったのか」と思ったのは、何と言っても、ペップがバルセロナのBチームを率いる事になった経緯と、その間にどんな事してたかって事です。こっちは、ほとんどメディアが注目してこなかったので、内実を全然知らなかったからです。


バルサBチーム時代のペップ


これ、僕は全然知らなかったので、「へー」的エピソード満載でした。


「Bチームを頼む。テルセーラ・ディビシオン(スペインの4部相当)の」
「何だって?おかしいんじゃないか?あそこは勝ち目がない。トップチームで優勝するほうが、Bチームを昇格させるよりも簡単だよ!」


これは、本に載っているペップがバルサBに就任する前に行われたやりとりの一部です。2007年当時、バルサBは、リーグ戦で苦戦しており、4部に降格したばかりでした。ペップに対して、バルセロナのディレクターだったベギリスタインは、スポーツディレクターの職を提供して戻ってきてもらおうとしたんですが、ペップはこれを辞退し、変わりにBチームの監督職を求めます。これが、監督ペップ・グアルディオラのキャリアの始まりです。



現役引退後、グアルディオラは監督の勉強を続けており、リージョや、時にビエルサから監督としての話を聞いてまわっていました。そして、ついに、バルサBで監督職につくことになるわけです。



ペップはバルサBと、当時四部にあったバルサCのチームを一つに統合、その過程で選手の首切りという厄介な仕事もこなしつつ、チームを作っていきます。


しかし、監督として初めて挑んだバニョレスとの親善試合で負けてしまいます。


そこで、クライフにアドバイスを貰いに行くわけです。ここで、クライフのアドバイスが実に面白くて、


「チームの中に二人、僕がコントロールできる自信がない選手がいるんです。僕の言うことを聞かないし、そのせいで他の選手も同じような態度を取るようになってしまう。問題は、この二人がチームの中でリーダー的な存在であり、実力的にもトップクラスだということです。彼らがいなければ、きっと試合で負けてしまいます。」


クライフの返事は簡潔だった。


「二人を外せばよい。一試合か二試合は負けるかもしれないが、いずれチームは勝ち始める。その頃には、二人のろくでなしをチームから追い出せるさ」

って具合です。まあ、容赦ありません。でもって、ペップはアドバイスに従って、二人を外し、監督としての威厳をみせつけます。その後、カディスからチコを獲得してから、チームの調子は上向き、ペドロの成長、シーズン後半に加わったブスケッツと共に、バルサBを昇格に導くわけですね。



で、バルサBで監督修行を積んでたペップなんですが、彼がバルサのトップチームでもやれるという確信を抱いたのが、当時、ライカールト時代末期のトップチームと行った非公開練習だったそうです。バルサBチームは、トップチームを翻弄。これによって、ペップは自分でもやれるという確信を抱きます。もっとも、当時のバルサのトップチームは、ロナウジーニョナイトライフに溺れ、デコは精細を欠き、ロッカールームが完全に分裂寸前の状況だったのですけども。



この活躍が、バルサのフロントの目にとまり、ペップはバルサの監督へと導かれていきます。


バルサ監督として

さて、バルサ監督になったペップなんですが、ここでいきなりオオナタを振るいます。ロナウジーニョとデコを放出。エトーも放出候補になりますが、ここは翌年まで持ち越されました。このあたりは、Bチームの時と一緒なんですよね。最初に前監督時代のエースから切る、という。このあたりは、バイヤンの監督になってからも変わってません。いきなりマリオ・ゴメス切りましたから。(追記:コメント欄で指摘頂きましたが、マリオ・ゴメスの移籍にはそれほどペップの意見は入っていないようです)


これ、もうなんつーか、ペップが監督に就任する時の儀式となるかもしれません。移籍先のチームのエースをまずいきなり切るって形で。監督として威厳をみせつけて、誰がボスなのかわかりやすく知らしめるには、チームのエースを最初に切るってのは確かに、わかりやすいやり方ではあります。



これね、残酷なやり方に思えるかもしれないですけど、ビエルサもペップに「選手には断固たる態度で臨まねばならない」ってアドバイスしてます。また、スペインのサッカーには「(監督に)ベッドを用意する」って隠語があります。これは「わざと負けて解任に追い込む」って意味でして、選手をコントロール出来ない監督を待つ運命はコレです。


実は、選手時代、ペップも、自身がある意味でこれをやらかしていて、ボビー・ロブソン時代のバルセロナの時、グアルディオラは、ロブソンがあまりにアレなんで、自分達でチームをマネジメントしていく事になります。(ロブソンと言えば、「戦術がない」と批判された時に、「私の戦術はロナウドだ」と言い返したのであまりに有名)


監督が選手をコントロール出来ないと、どうなるかってのは、ペップ自身が一番よくわかっている事なわけです。


これ、ペップは、バルサ監督になった時にもクライフにアドバイス貰っているので、引用しますが、

「目標となるのは、サッカーの”ABC”をそれぞれの選手に伝えていくことだ。インサイドの選手なら、インサイドの選手がやるべきことと、やらなくて良いことを伝える。それだけで良い。そしてインサイドの選手がやるべきことを理解したら、次にはバリエーションを考えさせる。それが上手くいかなかったら、また”ABC”に戻ってやり直す。最も重要なのはルールを与えることだ。選手は自分達が知っている事しか出来ない。だから、彼らのクォリティを高めることが大事になる。サッカー選手は、自分がやっていることに信念を持っていなければならない。仮に選手が自信過剰になってドリブルを仕掛け、ボールを取られてしまったとしよう。それでも、失敗を恐れすぎてミスを犯すよりマシだ。監督と選手は同じ考えを共有する必要がある。ただし監督は、威厳も保っていかなければならない。他のチームの監督のように選手と衝突したくなければ、彼らをコントロールする必要がある。バルセロナを監督として率いるためには、ピッチ上で選手が犯したミスを正すよりも、スター軍団をうまくコントロールする方法を知るほうが大切だ。チーム全体に自分の影響を及ぼし、選手を引きつけ、納得させる。選手達は監督である君に対して、アイドルのようなイメージを持っている。それを上手く利用することが必要となる。」


ってものです。



で、これは覚えている人も多いかもしれませんが、ペップは2008ー2009年の開幕戦、昇格組のヌマンシアにいきなり0-1で負けてます。次戦のラシン戦は引き分け。ここでブスケッツが初スタメン。で、結果が出たのが3戦目のスポルティング戦で、ここで6-1で快勝し、こっからは伝説が始まるわけですわね。



バルサのここからの軌跡は、みんな知っていると思うので割愛しますが、ペップが明らかに一番苦労していたのは、ロッカールームのコントロールでして、「スター軍団をうまくコントロールする方法」ってのが一番難しい仕事の一つです。これは、ビッグクラブの監督に必須の能力といってよく、これが出来ないと「ベッドを用意される」事になります。


ビッグクラブで「ベッドを用意された」監督としては、最近だと、いっちゃん有名なのがフェリックス・マガトで、


ヘーネスは「選手があれ程走らないのは、練習で疲れているか、それとも監督に敵対心を抱いているかのどっちか」と、ヴォルフスブルクの監督と選手の関係を疑問視した。

マガトはかつてバイエルンの監督として2シーズン連続の2冠を果たしたが、2007年に解任された。その頃のマガトについて「2タイトルを獲りながら選手の8割を敵に回すとは、何かがおかしい。恐らくヴォルフスブルクでも同じ問題が起きている」と語った。


ヘーネスがマガト監督を批判

こんな記事もありましたよね?マガトは、監督としてみると、タイトル幾つも取ってる訳で、優秀な部類なんですけど、如何せん、選手に反乱起こされてサボタージュ食らうか、ロッカールームで造反が起こりフロントが介入せざるを得ず、解任て形で地位を追われてるんです。


最近だと、モウリーニョとレアルの選手の不和の話は有名ですけど、


モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」 明かされなかったロッカールームの証言

モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」 明かされなかったロッカールームの証言



こっちの本、先日買って読んだんですが、内容的には、モウリーニョとレアルの選手の確執、レアルの選手がどうしてモウリーニョに反旗を翻すことになったのかってがまとめられた本で、凄く黒い内容です。結果的にはモウリーニョは、レアルの選手に追い出されたようなモンです。(こっちの書評は今度やりますね)これ、読んでみて、イグアインエジルが売られて、カシージャスが干されてる理由がやっとわかりました。



実は、ペップ自身も監督として、イブラヒモビッチエトーボージャンヤヤ・トゥレなんかをコントロールしきれてませんでした。それぞれの選手と反目した理由がそれぞれあるわけなんですが、知りたい人は本書を読んでみてください。



スター軍団のコントロールってのは本当に難しい仕事で、これを長期間やり続ける事に成功した監督なんて、ユナイテッド前監督のファーガソン以外に知りません。そのファーガソンですらコントロールが効かなくなった選手は売ってしまってますし・・・・



ペップ時代のバルサは、その最後の一年になると、ピケやメッシのコントロールに苦労するようになってきてまして、特にメッシとの関係が難しくなっていました。当たり前ですが、10代の「神童」メッシならともかく、バロンドールを3回とった「伝説の」選手をコントロールするなんて、ほとんど不可能です。最近はアンタッチャブルになってるし・・・



ペップは選手に対して、ロッカールーム、最後のスピーチ(本書の第一章に載っている)で、「このまま監督を続けていくのは危険だった。君たちとお互いに傷つけ合ってしまうことになるからね。」って述べているんですけど、これねえ、思う事が色々あるわけです。



イングランドの名監督にブライアン・クラフがいるわけですが、彼は、これから契約しようとする選手に必ずこういっていたそうです。



きみより上手い選手を見つけたら、我々は迷うことなく君を替える。われわれはそのために給料をもらっている。最高のチームを作り、出来る限り勝たなくてはならない。きみよりいい選手がいるのに、その選手を獲得しなかったら、われわれはペテン師になってしまう。しかし、われわれはペテン師ではない。



と。


サッカー選手ってのは、どんな選手であれ(メッシでさえも)、いずれ、クラブから「お前はもういらない」と言われる日がやってきます。クラフやマネーボールビリー・ビーン並に冷酷非情にビジネスライクに選手を売り買いできる監督なら、それも出来るんですけど、グアルディオラは、ちょっと繊細すぎる所があるんで、それがどうにも出来ないっぽい。買うほうは出来ても、売る方は・・・って感じです。実際、選手売るの下手だったし。特にカンテラーノに対しては。



まあ、これ以上、詳しく書くと、本書を買う意味なくなるので、このあたりにしときます。


興味をもった方は、是非とも本書を手にとってみてください。上記のような興味深いバルサのエピソードがちりばめられています。章としては、2章と3章がいい感じでした。



ではでは。

書評『モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」 明かされなかったロッカールームの証言』

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さて皆様、こんにちは。本日は、先日やると言ったモウリーニョ本の書評でもやりたいと思います。どういう本かってーと、


モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」 明かされなかったロッカールームの証言

モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」 明かされなかったロッカールームの証言



こっちでございます。


で、なんですけど、この本、訳者が前書きで述べていますが、スペインでも評価が二分になってる本です。評価は両極端になってる本です。実際に読んでみて、「モウリーニョファンが読んだら激怒しそうな内容だなあ」ってのが正直な所です。なんで、モウファンは読まない方がいいですね、この本は。


この本の面白い所は、一般的なメディアで伝えられるモウリーニョ像、選手像と証言を元に構成したソレが全く異なっているって所です。理由は、本書にもありますが、モウリーニョがレアル時代、メディアを利用してイメージ操作、情報リークなんかをしていたからで、メディアに踊る内容ってのは、モウリーニョサイドが周到に用意した加工済みのものだったからだそーです。


ま、それはそれとして、この本の目次貼っときますが、

プロローグ
第1章 号泣 潰えたファーガソンの後継者という夢
第2章 噴火 モウリーニョが会長に愛された理由
第3章 市場 影のボス、代理人メンデスとの二人三脚
第4章 喧嘩 やられたらやり返せ! 場外乱闘の日常
第5章 屈辱 5-0で迷走した戦術、歪んだ人間関係
第6章 恐怖 広がる不信、分裂する選手。最初の反乱
第7章 “負ける準備をしておけ"対バルセロナ。信じがたい命令の真意
第8章 反逆 目潰し事件と審判批判。カシージャス決起
第9章 勝利 リーガ優勝。罵倒で力を引き出す人心掌握術
第10章 悲嘆 Rマドリー脱出計画開始。ロナウドとの決別
第11章 非現実 「友好的な別れ」の嘘。会長の密約と裏切り
第12章 ブルー 13-14シーズンにくすぶる戦後処理
巻末付録
モウリーニョ年表 2010年~2013年

こうなってます。僕が、この本に興味を惹かれたのは、「第1章 号泣 潰えたファーガソンの後継者という夢」って所です。今シーズンのプレミアリーグチェルシー戦で、マンUのサポーターが、モウリーニョに対して「お前はこの仕事が欲しかったんだろ♪」なんて歌ってたそうです。また、それ以前にも、「モウリーニョファーガソンの後継者になれなくて泣いた」なんて話がメディアから出たりして、「どうなってるんだ?」と思ってた訳です。


何でモウリーニョが泣いたのか、その情報がどこから出たのかってのが不思議だったんですが、この本の第一章読んで、「ああ、ココが情報源だったのね」という感じでした。情報元は、モウリーニョの所属する代理人ホルヘ・メンデスの会社、ジェスティフテの社員のモンで、アレックス・ファーガソンが後継者にデビット・モイーズを選んだという情報が世界に伝わるや否や、モウリーニョは社員達に電話をかけまくり、その時、社員が激しい嗚咽を聞いたって所です。



まあ、僕が最初に知りたかったのは、コレだけだった訳ですけど、読み進めてみると、モウリーニョとレアルの選手の確執の流れが簡単に把握できる本でして、「ああ、あれはそういう流れだったのね」と色々と当時のレアルの事を思い出しながら読める本でした。




レアル時代のモウリーニョと、彼の上司のメンデスの話

ちょっと、この話をしときましょう。モウリーニョと、彼の代理人、ホルヘ・メンデスと、彼の会社ジェスティフテ社絡みの話からになります。


メンデスの契約選手ファビオ・コエントランRマドリード移籍を機にメンデスの特集を組んだスペインのスポーツ紙『スポルト』によると、彼がこれまでにモウリーニョのチームに移籍させた選手の移籍金総額はなんと2億ユーロ(約232億円)を優に超えるという。


ちなみに、Rマドリードではモウリーニョ就任後すぐにR.カルヴァーリョディ・マリアが加わった。


参考までに、英紙『ガーディアン』は2008-09シーズンのプレミアリーグでは移籍金総額の11.13%が代理人の懐に入っていたと報じている。
この数字をメンデスに当てはめると、モウリーニョチェルシーに移籍した2004年からの7年間、モウリーニョに関係する移籍だけで約26億円を稼いだことになるのだ。


代理人として有望な選手を見つけ出して契約するのは当然だが、選手のピークは短い。それよりも有能な監督の信頼を得ることが、代理人として成功への第一歩なのかもしれない。



モウリーニョの信頼を得て荒稼ぎ! 敏腕代理人、ホルヘ・メンデス

メンデスは、モウリーニョの代理人であり、それと同時に、彼のチームに自分の会社が契約している選手を送り込んでくるのでも有名です。モウリーニョが2010年にレアルと契約した時には、ジェスティフテ社は、レアルに4人の選手を持っていました。つまり、すでにレアルに在籍していたペペ、ロナウド、それに加えて2010年にカルバーリョ、ディマリアが入ってきます。


このメンデス絡みの選手達は、やがて、レアルのロッカールームの火種になることになります。特に大きな火だねになったのが、2011年に3000万ユーロでレアルに加入することになったコエントランでした。


ちなみにですが、アブラヒモビッチは、モウリーニョチェルシーに呼び戻す際、メンデスを警戒してか、「選手獲得の権限はクラブのみに属する」という文章を契約書に盛り込んでます。レアルでの騒動を知っていたら、これは当然の事だったんでしょう。



モウリーニョは、いつ、どこで何を誤ったのか?


さて、メインディッシュになるんですが、モウリーニョがレアルの選手達と衝突してたのは、サッカーファンであれば、メディアを通じて知ってると思います。モウリーニョ時代末期には、メディアで散々、カシージャスモウリーニョの衝突の話が出ていましたからね。

 モウリーニョ監督が“白い巨人”の中で孤立した最大の要因は選手との不和だ。ポルトチェルシーインテル・ミラノでは、クラブ首脳や報道陣との摩擦があっても、選手とは良好な関係を築き好成績につなげてきた。しかしレアルでは何度も選手との不和が浮上。決定的だったのは生え抜きでチームの象徴でもある主将のカシージャスとの対立だった。


 3日の会見でも「問題が起こるのは、1人が他の選手より上に立っていると思っていることだ」と名前こそ挙げなかったがカシージャスを痛烈に批判。その態度は主将に絶大な信頼を寄せるイレブンの反発を招いた。指揮官と同じポルトガル出身で“モウリーニョ派”とされていたDFペペでさえもバリャドリード戦後に「監督はイケル(カシージャス)にもう少し敬意を表すべき。選手とファンはイケルと一緒にいる」と批判した。


なぜモウリーニョは“失敗”したのか…背景に象徴との確執

こんなまとめ記事も、スポニチから出るという異例な事態でしたが。



モウリーニョが、レアルの選手と対立する事になった発端ともいえるのが、実は、メンデス絡みだったりします。これは、上記の本から引用しますが、


(2010年)一月、二月、三月と緊迫した日々が続き、ロッカールーム内からは贔屓だとか独裁的だとかチームの分裂だとかの内部情報が漏れ続けた。メンデスとの関係の濃さによって扱いが違うと言われた。他の代理人が、監督の決断にメンデスが影響しているとクラブに訴えた時、彼らの答えは同じだった。モウリーニョがメディアや審判と対立するのは想定内だったが、”あっち”は予定外だった、と。”あっち”とは、少なくとも表面的には自身が所属するメンデスのグループの利益になるようなモウリーニョの行動の総称だった。



モウリーニョ vs レアル・マドリー「三年戦争」 明かされなかったロッカールームの証言  P117より

こいつですね。


実はですね、これねえ。モウリーニョがゼネラル・ディレクター(GD)のホルヘ・バルダーノを追い落とした時に、こんな記事がナンバーで書かれているんですよ。




“レアルNo.2”バルダーノの追放完了! クラブを完全支配したモウリーニョ。



こっから引用しますが、


 例えば、バルダーノがペレス会長と共にレアルに復帰した2009年夏、ロッベンスナイデルは、ペジェグリーニ監督と本人たちが残留を希望したにもかかわらず、強行的に放出された。


 その際、スナイデルは「レアル上層部にはマフィアがいる」と捨て台詞を吐いた。ペジェグリーニファンデ・ラモスらの前任であるシュスターも、このようなコメントを残している。


「監督が必要とし、本人も残りたいと言っている選手を追い出す現場で、監督が仕事をできるわけがない。レアルのフロントで決定権を持つ人物は、自分の利益を優先する補強をしようとしている」

コレですね。元々、レアルでは「バルダーノが選手の獲得・放出にかかわる際には、Inmarkグループの利益が優先されているのではないか」ってのがささやかれていた訳です。それからクライフのコレ。


 このようにクラブ幹部が関係する会社が、クラブの事業に携わることに警鐘を鳴らしているのが、ヨハン・クライフだ。クライフはこう語っている。


大なり小なり、注目を集めようとすれば、クラブの名前を使ったり、イベントに選手を連れ出すことになる。すると、どの選手がどの幹部と仲良くしているかでグループが分かれるようになり、その結果、ロッカールームに派閥が生まれる。サッカービジネスがロッカールームに悪影響を及ぼす一例だ


 かつてモウリーニョチェルシーで、マンチェスターUのファーガソンアーセナルベンゲルのように、長い時間をかけてユースも含むクラブの強化をしようとした。しかし、その権限が与えられず、彼はチェルシーを去った。


 レアルでも同じことを望んだ彼にとって、ビジネスを優先する可能性のある人物を会長に次ぐポストに置いておくわけにはいかない。だからこそ、モウリーニョバルダーノと自分のどちらを取るのか、ペレスに「二択」を迫った。

皮肉な話ですけど、モウリーニョはレアルのユースを含めて強化をしたか?というと、今になってはビミョ~な所です。その代わりに、メンデス絡みの選手を大量にレアルに連れてきた事で、ロッカールームに派閥が生まれ、それがレアルマドリーを蝕んでいくことになります。「メンデスとの関係の濃さによって扱いが違う」っていう選手からの苦情がそれを現してしますが、こいつは最初から最後まで、モウリーニョのレアルにおいて、ロッカールームが団結できなかった原因になります。



最初のモウリーニョへの反乱、ラシン戦での秘密集会


で、この話になります。2011年、3月のアウェー、ラシン戦の話です。このエピソードを紹介するのは、実は、僕がこの試合をリアルタイムで見ていたからです。「?????」という試合でした。理由は、レアルが、前半、とんでもなく良い内容のサッカーしていたからです。それも、エースのクリロナがいなかったにも関わらず。

「人望のない監督がサブの選手を長く試合に出すと、そういう選手が良い働きをするんだ」 ペップ・グアルディオラ


これは、前回紹介したグアルディオラ本からの引用ですけど、まんまコレ。



実は、本書でも、このラシン戦は大きく取り上げられています。それで印象に残ってます。本書によれば、ラシン戦の前日、ホテルにおいて、メンデスに近いペペ、ディマリア、カルバーリョを除いたメンバーで秘密集会が行われました。その際に、こんなやりとりがあったようです。

「明日やるべきことははっきりしている。最初から全力でいくこと。でなければ『強欲(ロナウドのチーム内での渾名)』抜きでは勝てないとモウリーニョは言うだろうから」とある選手が言った。

「『強欲』抜きでいい試合をして勝ったら、”パパ”は何て言うんだろう?」


この時期、すでにチーム内では、自分への忠誠心と代理人との関係によって選手を分類し、審判と日程に対する文句を口裏合わせて強要してくるモウリーニョへの反発が高まっていました。集会では「ベッドを用意する(わざと負けて解任に追い込むの隠語)」も提案されたようですが、レアルではそれは不可能だと、キャプテン達はそれを却下します。


本書によると、カンのいいモウリーニョは、この試合で、選手からの信頼を失いかけている事を察したそうです。




「負ける準備をしておけ」

これ、本書の第七章になるんですが、本書で、一番面白い所です。帯にもなってますが、あの負けず嫌いのモウリーニョが、なんで「負ける準備をしておけ」なんて命令をしたのか?



ちょっとこの発言の前後をまとめます。まず、モウリーニョのレアルは最初のクラシコバルサに5-0でフルボッコにされました。その後、コパ・デル・レイの決勝では1-0でレアルが勝利。


問題が起きたのは、2011年、4/27のCL準決勝ファーストレグです。この試合は覚えている方も多いかと思いますが、ペペがダニ・アウヴェスに危険なタックルを行ったと判定されて、一発レッドで退場。その後、メッシが二発決めてベルナベウでバルサが勝利してます。


この時の判定が問題でして、判定を巡り、試合後、レアル・マドリーの選手とバルサの選手の間で乱闘が発生してます。これも報道されましたね。



この後の流れが問題なんですが、これは全部、本書から引用すると長すぎるので、要点だけまとめます。


っていう凄い流れになりました。


この時期、すでにモウリーニョは、チーム内に不満分子が生まれている事を察しており、メンデスが代理人をつとめる選手と、それ以外の選手の間に贔屓的な待遇を巡って摩擦があることは承知していたようです。「我々にロナウドのクビを差し出した。新しい友達を作りたがっている!」ってのは、スペイン人選手の信頼を回復するためにロナウドをロッカールームで侮辱したって事です。メンデスの選手の中で、一番の稼ぎ頭であるロナウドを侮辱することで、贔屓はしてないというアレを示したかったんでしょうが、すでにレアルマドリーの選手達は、そういったお芝居にはだまされなくなっていました。



はっきりいって、これは逆効果でした。ロナウドモウリーニョに対する反抗心を芽生えさせただけでなく、これが「お芝居」だと、レアルの選手達に見抜かれていたからです。


最初の反乱、そして3000万ユーロの男、コエントラン


本書を読む限り、モウリーニョの最大の失敗となったのが、コエントランでした。コエントランを2012年に3000万ユーロで買ったということは、メンデスにその10%程度が転がりこんでいることになります。


コエントランは、本書でも問題になっているのですが、特に問題なのが、左SBのマルセロより、誰の目からみても下のレベルの選手なのにも関わらず、モウリーニョに使われ続けた事がレアルの選手達の反感を買いました。さらに、彼のせいで負けた試合が多数ある事も怒りを買いました。


そして最初の反乱が起こります。2012シーズン、レバンテ戦において、ケディラが退場処分になった時に、モウリーニョケディラを会見で批判した時です。モウリーニョは、それまで、「自分がチームの盾になってメディアから選手を守る」と言ってきた訳なんですけど、名指しでケディラを批判した事で、S・ラモスは、モウリーニョに説明を要求。しかし、次のラシン戦でラモスは先発から外されます。


そして、ラシン戦後、最初の反乱が勃発。カシージャス、ラモス、アルベロアイグアインは、モウリーニョに対して、

  • メンデスと繋がっている選手への贔屓的待遇をやめる事
  • 公でケディラにしたような批判はやめる事
  • 選手と監督で口裏を合わせて審判を批判することはやめる事
  • 逆転するために戦うな、という要求は今後絶対しない事


モウリーニョに要求します。ここはモウリーニョが折れ、バーベキューやって仲直りって形になったんですが、その後も、モウリーニョは必要だと感じた時には、審判を批判するように選手に頼み、それが聞き入られないと知ると、今後はジダンにそれを頼みます。ジダンはそれを拒否し、ジダンモウリーニョの関係は破綻しました。ジダンモウリーニョの元から去ることになります。



2012年、レアルはリーガで優勝を果たすわけですが、すでにロッカールームの団結とモウリーニョへの信頼は完全に失われていました。CLではバイエルンに負け、ここでのコエントランの起用がまたもロッカールームで問題にされ、選手がモウリーニョに食ってかかるという事態に発展してます。


最後に、モウリーニョはどこで間違ったのか?


これ以上書くと、本書の書評じゃなくなるので、このあたりにしときますが、レアルの選手がモウリーニョの何が気に入らなかったかといえば、これは、本書のP312にある、セルヒオ・ラモスの言葉にまとめられます。


(2013年)2月2日、リーガ第22節グラナダ戦に敗れたこと(1-0)は、この平穏な時期の唯一の汚点だった。「勝ち点100のレアルマドリーが帰ってきた!」と快さいし、物事が好転し始めたと考えていた怪鳥のアドバイザーたちにとっては災難だった。



フロレンティーノは試合後グラナダでS・ラモスに合った。会長が敗戦の理由を尋ねると、いつもの率直さで彼は答えた。2012年にリーガ優勝できたのは幸運だった、と。ロッカールームでは、モウリーニョの自信がある時は”彼の仲間”を助け、他の者を阻害する様子を見てきた、とも言った。さらに、最もチームにダメージを与えたのは選手達にプロ意識が欠けていると何度も告発した事で、ああいう男のために全力を尽くすのは自然の摂理に反する、と締めくくった。側近達の話によると会長はS・ラモスの言葉をひどく嫌ったという。

これは、モウリーニョのリークの後の発言です。有名な「3匹の黒い羊」事件ですね。


モウリーニョにしろ、フロレンティーノにしろ、2013シーズンのある時期、レアルの選手がモウリーニョを解任するために、わざと負けているってのを確信していたようです。



結局の所、本書を読んだ限り、クライフは正しいって事です。つまり、最初の、

「大なり小なり、注目を集めようとすれば、クラブの名前を使ったり、イベントに選手を連れ出すことになる。すると、どの選手がどの幹部と仲良くしているかでグループが分かれるようになり、その結果、ロッカールームに派閥が生まれる。サッカービジネスがロッカールームに悪影響を及ぼす一例だ」


の代理人と監督バージョンが、レアルで起こったという話です。



本書読んで思ったのは、現場の監督に選手獲得の権限は渡せないって所です。


こいつはロッカールームに派閥を生み、それはひいてはロッカールームの内紛の原因になるからです。時々、プロの監督が、選手獲得の人事に混ぜてもらえなくて、ブーたれるのを見かける事がありますが、フロントが選手獲得の人事に、必要以上に現場を巻き込まないのは、それなりに合理性があるんだなあ、と思った次第です。


繰り返しになりますが、この本、かなり黒い内容で、モウリーニョファンにはお勧めできる本じゃありません。レアルの選手側視点で書かれた本なんで、そういう本だと割切って読むのがいいかと思います。



今日はこのあたりで。それでは。

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